諸賢にお見せするレベルではないかも知れませんが、
せっかくなので公開することにしました。
経済法第1問
C社及びD社の行為は、不当な取引制限(2条6項)に当たり、3条後段に違反しないか。
1 「事業者」とは、競争関係にある事業者をいう。
両社は、日本で電子機器に使用される部品の製造販売に従事する事業者であり、競争関係にある事業者であり、「事業者」に当たる。
2(1) 「共同して」とは、意思連絡をいう。
本件では、両社において乙の価格を決定する権限を有するrとsが、本期における乙の納入に関してA社と商談する前に、A社に提示する乙の価格について意見を交換し、かつ、A社との商談の内容について情報を交換する仕組みを構築することで一致している。
また、rとsの部下であるtとuが、平成27年2月15日に、乙の受注数量が200万個以上、乙の単価が2950円を下回らない範囲であれば許容範囲であることで合意した。この内容は、rとsも把握している。
そして、C社とD社は、A社と交渉した結果、乙の受注数量はC社が270万個、D社が200万個、乙の単価はC社が2960円、D社が2970円で妥結した。この交渉過程はrとsにも伝わっていた。
以上のように、両社間で、乙の数量及び価格について事前の情報交換がある。また、A社と妥結した結果が、情報交換した数量及び価格の範囲内で不自然に両社間で一致している。よって、両社間で意思連絡が認められ、「共同して」に当たる。
(2) 「相互にその事業活動を拘束し」とは、①拘束目的の共通性②拘束の相互性をいう。
本件では、両社の上記行為は、A社による乙の価格引下げ要求に対応するためになされており、拘束目的の共通性が認められる(①)。
また、両社は、乙の販売数量と価格の決定という事業活動を相互に拘束しており、②も充たす。
よって、「相互に・・・拘束し」に当たる。
3 「一定の取引分野」とは、市場をいう。市場の画定は、当該行為が対象とする取引の範囲について、商品及び地理的範囲の観点から、主として需要代替性、必要に応じて供給代替性を考慮して判断する。
本件では、C社及びD社の上記行為の対象は、A社が製造する甲向けの乙の販売取引である。
そして、A社が製造する甲に用いられる乙は、固有の仕様と性能を求められるので、他の部品で代替できないと考えられる。よって、需要代替性を欠き、商品市場は、A社が製造する甲向けの乙に画定される。
また、日本企業であるC社及びD社以外に、世界で乙の製造販売に従事する事業者として、中国に拠点を置くE社が存在し、E社は、A社が製造する甲向けの乙を開発できる。よって、供給代替性が認められ、地理的市場は世界市場に画定される。
したがって、市場は、世界におけるA社が製造する甲向けの乙の販売市場に画定される。
4 「競争を実質的に制限する」とは、市場支配力を形成、維持、強化することをいう。
本件では、E社のA社に対する乙の納入開始は、平成27年12月期に予定されている。よって、本期においては、C社及びD社は、上記市場において100%のシェアを有する。
しかし、本期からわずか半年後にはE社が参入してくる。そして、E社は、従来品と性能は同じだがより安価な乙をA社が製造する甲向けに開発できるので、価格競争力を有し、競争圧力が大きい。
また、A社はB社と激しくシェアを争っており、各社のシェアの年による変動は大きく、需要者の活動する市場は競争の活発な市場である。よって、需要者からの圧力も大きい。
そうすると、C社及びD社は、活発な競争が行われていれば付けることができない価格や数量で乙を販売する力を形成維持強化したとはいえない。よって、両社は市場支配力を形成、維持、強化するとはいえず、「競争を・・・制限する」に当たらない。
5 したがって、C社及びD社の行為は、不当な取引制限に当たらず、3条後段に違反しない。
(1553字)
経済法第2問
第1 設問1
A社の行為は、拘束条件付取引(一般指定12項)に当たり、19条に違反しないか。
1(1) 「相手方」は、大規模小売業者である。「その取引の相手方」は、一般消費者である。
(2) 「拘束」とは、人為的手段により、行為の実効性が確保されていることをいう。
本件では、A社は、広告にA社製の甲の小売価格の表示を行わないように、納品書の記載及び営業担当者の説明により要請している。そして、営業担当者は、表示を継続する場合には出荷を停止する旨を説明している。
A社製の甲は一般消費者に高い評価を得ており、甲を販売する小売業者にとって、A社製の甲を取り扱うことは、その営業上不可欠となっている。そうすると、小売業者は、A社製の甲の仕入を確保するため、A社の上記要請を受け入れざるを得ない。
よって、出荷停止という人為的手段により、上記要請の実効性が確保されており、「拘束」に当たる。
2 市場画定
市場とは、競争が行われる場をいう。その範囲の画定は、当該行為が対象とする取引について、商品及び地理的範囲の観点から、主として需要代替性、必要に応じて供給代替性を考慮して判断する。
A社の上記行為の対象は、小売業者の一般消費者に対するA社製の甲の販売取引である。
上述のように、A社製の甲は一般消費者に高い評価を得ているとはいえ、他社製の甲が需要代替性を欠くとまではいえない。よって、商品市場は甲に画定される。
地理的市場は特段の事情がなく日本に画定される。
よって、市場は、日本における小売業者の一般消費者に対する甲の販売市場に画定される。
3 「不当に」とは、公正競争阻害性のうちの自由競争減殺をいう。自由競争減殺とは、競争を回避又は排除することにより、競争の実質的制限に至らない程度の競争制限効果が生じることをいう。
本件では、上記市場における販売金額のシェアで、A社は55%を占め、他社との格差が大きい。よって、他社は低価格競争による顧客奪取の誘因に欠け、有力な牽制力を有しない。また、甲の輸入品はほとんど流通しておらず、輸入圧力は低い。そして、過去において各社の順やシェアに大きな変動はなく、同市場は競争が不活発な市場である。
また、大規模小売事業者は、おおむね、A社製の甲の小売価格を広告において表示しなくなっている。同小売業者は、甲の小売価格を低めに設定して広告していたのであり、この活動がなくなることにより、小売業者の一般消費者に対するA社製の甲の販売価格が維持されるおそれが生じる。
よって、競争回避という自由競争減殺効果が認められ、「不当に」に当たる。
4 当該行為の目的が正当であり、手段が相当であれば、行為の違法性が阻却される。
本件では、自社製の甲を取り扱う小売業者を全国的な範囲で相当数確保し、維持するという目的は、経営上合理的であり、正当性が認められる。
しかし、同目的を達成するためには、小規模小売業者に対して販売活動を援助するという、より競争制限的でない他の手段がある。よって、手段の相当性を欠き、違法性は阻却されない。
5 したがって、A社の行為は、拘束条件付取引に当たり、19条に違反する。
第2 設問2
A社の行為は、拘束条件付取引に当たり、19条に違反しないか。
1(1) 「相手方」は、小売業者である。「その取引の相手方」は、一般消費者である。
(2) 「拘束」
新製品甲は、他社製の甲に比べて高い顧客満足度を見込む甲の新製品であり、現行の甲と同様に、小売業者は、新製品甲の仕入を確保するために、本決定に従わざるを得ない。よって、人為的手段により行為の実効性が確保されており、「拘束」に当たる。
2 市場は、設問1と同様に、小売業者の一般消費者に対する甲の販売市場に画定される。
3 「不当に」
設問1で述べたように、同市場はブランド間価格競争が不活発である。よって、ブランド内価格維持効果が認められれば「不当に」に当たる。
A社の上記行為は、販売方法の制限であり非価格制限である。しかし、A社の上記行為により、新製品甲の販売コストが上昇し、ブランド内価格維持効果が認められる。よって、「不当に」に当たる。
4 違法性阻却
A社製の甲の一般消費者に対する訴求力を向上させるという目的は正当である。また、同目的と顧客に説明するという手段は密接に関連し、手段も相当である。よって、違法性が阻却される。
5 したがって、A社の行為は、拘束条件付取引に当たらず、19条に違反しない。
(1812字)
公法系第1問
第1 設問1
性犯罪者継続監視法14条、21条1項、22条、23条1項、24条1項は、Aの、自己の行動を監視されない権利を侵害するものとして、13条後段に違反する。
1 同法上記各条により、Aは、自己の現在地を把握されることになる。よって、同各条は、Aの同権利を制約する。
自己情報が行政権により集中的に管理される現代社会において人格的生存を確保するため、自己情報コントロール権が13条後段により保障される。そして、自己の現在地は自己情報に当たる。よって、Aの上記権利は自己情報コントロール権として13条後段により保障される。
したがって、同各条は、13条後段により保障されるAの同権利を制約する。
2 同法による継続監視は、GPSを監視対象者の体内に埋設する手段を伴うものである(同法21条1項)。同手段は、監視対象者に、屈辱感等の精神的苦痛を与えるものであり、人格権侵害を伴う点で規制態様が強度である。
また、警告と禁止命令は、一般的危険区域の指定(3条)を前提とする。そして、同条各号が定める区域は、学校や公園というどこにでもある施設とその周辺道路であり、広範である。よって、強度の規制である。
そこで、規制目的がやむにやまれぬものであり、手段に合理性・必要性が認められてはじめて合憲になる。
3 規制目的は、性犯罪者の再犯を防止する点にある。同目的は、性犯罪者の社会復帰を促進し、地域社会の安全の確保に資するので、やむにやまれぬものといえる。
しかし、政府の統計によれば、強姦や強制わいせつの再犯率は他の犯罪類型に比べて特に高いものではない。それにもかかわらず、上述したような強度の規制を課すことは、比例原則に反し、手段の相当性を欠く。
4 よって、同法上記各条は、13条後段に違反する。
第2 設問2
1 検察官の反論
心理的、生理的、病理的要因等により特定の性的衝動に対する抑制が適正に機能しにくい者が存在し、そのような者が再び同様の性犯罪に及ぶリスクの高さは、専門家によって判定できる。そこで、リスクが特に高いと判定された者を継続監視の対象として再犯を防止する必要性が高い。
他方、GPS埋設の外科的手術には、いかなる健康上・生活上の不利益も生じず、手術痕も外部から認識できない程度に治癒し、GPSを取り外す際も同様である。
そうすると、規制の必要性がGPS埋設による不利益を上回り、比例原則に合致し、手段は相当であり、合憲である。
2 私見
(1) 性犯罪者継続監視法14条、21条1項、22条、23条1項、24条1項は、13条後段により保障される、Aの自己の行動を監視されない権利を制約する。
(2) 同制約は、規制目的がやむにやまれぬものであり、手段に合理性・必要性が認められてはじめて合憲になる。
(3) 規制目的は、性犯罪者の再犯を防止する点にあり、やむにやまれぬものといえる。
そこで、まず、警告(23条1項)及び禁止命令(24条1項)という手段について検討する。
警告及び禁止命令の前提となる一般的危険区域の指定は、同法3条各号の区域すべてではなく、性犯罪が発生する危険性が一般的に高いと認める区域に限定されている。そして、警告及び禁止命令の対象となる特定危険区域は、一般的危険区域のうちからさらに限定して指定される(23条1項)。
また、警告や禁止命令には、公安委員会への報告(23条2項)や、聴聞の手続(24条2項)が要求され、手続保障もされている。
よって、警告及び禁止命令という手段の合理性・必要性が認められる。
次に、GPS埋設を伴う継続監視という手段について検討する。
継続監視の方式としては、取り外すことができない小型のブレスレット型GPSの装着を義務付けるという、より制限的でない他の方式がある。ブレスレットを、服を着て隠すことが可能であるから、監視対象者に対する社会的差別を引き起こすおそれはない。よって、GPS埋設を伴うという手段は、手段の合理性・必要性を欠き、13条後段に違反する。
(1630字)
公法系第2問
第1 設問1
「法律上の利益を有する者」(行訴法9条1項)とは、当該処分を定める行政法規が個々人の個別的利益として保護する利益を、当該処分により侵害され、又は必然的に侵害されるおそれがある者をいう。Xらは処分の相手方以外の者であるから、同条2項の事情を考慮して判断する。
建基法48条1項但書による例外許可をする場合に、同条14項が、利害関係人の意見の聴取を行うことを規定した趣旨は、第一種低層住居専用地域内に本来建築できない建築物が、例外許可により建築できることになることから、近隣住民の良好な住居の環境を保護する趣旨である。そこで、同条1項但書は、例外許可により、良好な住居の環境に係る著しい被害を被るおそれがある者に対し、そのような被害を受けない利益を個々人の個別的利益として保護する趣旨を含む。
X1らは、本件自動車車庫から6メートルという至近距離の位置の建物に居住している住民である。本件スーパー銭湯は、年中無休、午前10時から午後12時までの営業で、来場する自動車が多く、特に、土日休日は1日550台に及ぶ。よって、X1らは、自動車の騒音、ライトグレア及び排気ガスにより上記著しい被害を被るおそれがある者に当たり、原告適格が認められる。
他方、X2らは、本件敷地から45メートル離れた位置の建物に居住する住民である。そうすると、自動車の騒音や排気ガスによる居住環境の悪化は、本件例外許可自体によるものとはいえない。よって、X2らは上記著しい被害を被るおそれがある者に当たらず、原告適格が認められない。
第2 設問2
1 建基法82条が除斥事由を規定した趣旨は、委員相互の討論により議決の公正を図るという審査会制度の趣旨が、利害関係ある委員の関与により害されることを防ぐ点にある。
Y1市建築審査会の本件同意に係る議決には、Aの代表取締役の実弟Bが委員として加わっており、審議においてAに有利な発言をして他の委員に影響を与えたおそれがある。よって、Bの関与という同条違反の瑕疵は重大な瑕疵といえ、本件例外許可は違法となる。
2 本件要綱は、建基法の委任を受けておらず、行政規則である。よって、本件要綱に従ったか否かは、本件例外許可の適法性に影響しないはずである。
もっとも、同法48条1項但書が「良好な住居の環境を害するおそれがないと認め」という抽象的文言を用いた趣旨は、行政庁の専門技術的見地からの要件裁量を認める点にある。そして、本件要綱は、同裁量を前提とした裁量基準に当たる。そこで、本件要綱が不合理であれば、本件要綱に従ってされた本件例外許可も裁量権逸脱濫用となる。
第一種低層住居専用地域は良好な住居の環境頬後に対する要請がもっとも強い地域である。そうすると、本件要綱が、許可基準として、自動車車庫が騒音、ライトグレア、排気ガスによる害を低減させる措置をとることを定めていることは合理的である。よって、本件要綱は合理的である。
本件要綱が合理的であるとしても、Y1市長が、個別に考慮すべき事情を考慮せずに本件例外許可をすれば、考慮不尽として裁量権逸脱濫用となる。
本件自動車車庫は、自動車の騒音、ライトグレア及び排気ガスを防ぐ構造になっておらず、近隣住民の被る夜間の自動車の騒音、ライトグレア及び排気ガスによる被害は重大なものになる。Y1市長はかかる個別事情の考慮が不十分であり、考慮不尽として裁量権逸脱濫用に当たり、本件例外許可は違法である。
第3 設問3
Xらが、本件訴訟2の中で、本件例外許可の違法を主張することは原則としてできない。なぜなら、行訴法14条1項が出訴期間を設けて法律関係の早期確定を図った趣旨を失わせてしまうからである。
もっとも、①先行処分と後行処分とが同一の効果を目的とし、②先行処分の違法を後行処分の取消訴訟で主張することが権利救済の実効性に資する場合は、違法性の承継が認められる。
本件では、本件例外許可と本件確認は、建築確認を得るという同一の効果を目的としている(①)。また、例外許可については、申請者以外の者に通知することは予定されていない。そうすると、申請者以外の者が例外許可がされたことに気づかないことが考えられる。そこで、本件例外許可の違法を本件訴訟2で主張することが権利救済の実効性に資する(②)。よって、Xらは、本件訴訟2において、本件例外許可の違法事由を主張できる。
第4 設問4
本件確認は違法である。
飲食コーナーや厨房がある本件スーパー銭湯は、住民の生活に公益上必要なものとはいえないからである。
(1859字)