過去問ひとり答練 ~H18刑② '16/10/23改訂 | ついたてのブログ

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弁護士一年目です。ついたての陰から近況をつづります。

伝聞か非伝聞かのところをコンパクトに論じるにはどうすればよいか、
については、いまだ試行錯誤中ですが、以下のように論じればいいのではないかと考えるに至っています。

1 本件書面は甲の公判廷外供述を内容とする証拠であるから、伝聞証拠に当たり320条1項により証拠能力が否定されないか。
2 伝聞証拠とは、公判廷外供述を内容とする証拠であって、同供述内容の真実性を証明するためのものをいう。

3(1) 本件書面は、○○という事実(←直接的要証事実)を証明するためのものである。

(2) そして、○○という事実から、単独で、又は、他の証拠から証明される△△という事実と合わさって、××という事実(←究極的要証事実)を推認できる。

(3) 本件書面は供述内容の真実性を証明するためのものであり(or ではなく)、伝聞証拠に当たる(or 当たらない)。


第1 設問1
1 事例2の一連の質問行為は、職務質問(警職法2条1項)として適法か。
同行為は、強盗致傷事件発生から30分後に、犯行現場から5キロメートル離れた場所で行われている。犯人は車で逃走したので、この場所は犯人が存在する可能性がある場所である。また、甲が乗っていた車は上が白・下がシルバーのツートンカラーでナンバーの末尾が0703であり、甲は上着の両袖側面に3本の白線の入った紺色のジャージ上下を着ており、これらの特徴は本署からの連絡内容と一致している。よって、甲は強盗致傷罪を犯したと「疑うに足りる相当な理由のある者」に当たる。
したがって、上記行為は職務質問として適法である。
2 Yがバッグの外側から触れた行為は所持品検査に当たる。所持品検査は法の根拠がないが、警職法2条1項による職務質問の付随行為として許容される。そうすると、所持人の承諾を得て行うのが原則であるが、捜索に至らない程度の行為は強制にわたらない限り、所持品検査の必要性、緊急性を考慮し具体的状況のもとで相当な限度で許容される。
本件では、Yがバッグを触らせてほしいと言ったのに対し甲は何も答えておらず、所持人甲の承諾を得ていない。そして、バッグの外側から触る程度の行為は捜索に至らず強制にもわたらない。そして、上述のように、甲は強盗致傷罪という重大犯罪の嫌疑を受けており所持品検査の必要性がある。また、甲はバッグを抱えて降車して逃走 しようとしており所持品検査の緊急性がある。他方、バッグの外側から触れる程度の行為はバッグの中に入っている物の形状が分かるにすぎないからプライバシー侵害の程度は小さく、法益の均衡があり相当な限度といえる。よって、同所持品検査は同職務質問に付随するものとして適法である。
3 Xが甲の左腕を右手でつかんだ行為は「停止させて」(警職法2条1項)に当たるか。
強制手段に至らない程度の有形力の行使は、強制にわたらない限り、職務質問及びこれを行うための停止行為の必要性、緊急性を考慮し、具体的状況のもとで相当な限度で「停止させて」に当たると解する。
本件では、後述する甲の態度及び制約される利益からすれば、同行為は、逮捕に至っておらず、強制にもわたっていない。そして、同所持品検査によりバッグの中に札束と考えても矛盾しない形状のものが多数入っている感触をYが得ており甲の強盗致傷罪の嫌疑が強まっており 職務質問の必要性がある。また、甲はXYの間をすり抜けるように逃げようとしており職務質問の緊急性がある。他方、甲の腕をつかむ行為は甲の行動を一時停止させるにすぎず、行動の自由を制限する程度は小さく、法益の均衡があり、相当な限度の有形力の行使といえる。よって、同行為は「停止させて」に当たり適法である。
4 警察官5名で甲を逮捕した行為は現行犯逮捕(212条1項)として適法か。
現行犯逮捕の要件は、①犯罪の時間的接着性②犯罪及び犯人の明白性である。
本件では、犯行の現場で犯行直後に逮捕しており、①を充たす。そして、Xが甲の左腕をつかむ行為は上述のように適法な職務行為である。この職務行為に対して甲がXの顔面を右手のこぶしで一発強く殴っており、甲が公務執行妨害罪の犯人であることは明白である。よって②も充たす。したがって、同逮捕は現行犯逮捕として適法である。
5 Xがバッグ及び自動車内を捜索した行為は逮捕に伴う捜索(220条1項2号)として適法か。
(1) 上述のように甲は逮捕されており、「逮捕する場合」に当たる。
(2) 同号の趣旨は、逮捕現場には証拠存在の蓋然性が一般的に高いため、裁判官による事前の司法審査を行う必要性がない点にある。そこで、「逮捕の現場」とは、証拠存在の蓋然性の高い領域をいう。

本件では、甲がXを殴る行為は計画的でない偶発的なものであるから、公務執行妨害罪の証拠が同バッグ内及び同自動車内に存在する蓋然性が高いとはいえない。よって、同バッグ及び同自動車内は「逮捕の現場」に当たらない。

(3) したがって、上記行為は違法である。
6 Xが札束等を差し押さえた行為は逮捕に伴う差押え(220条1項2号)として適法か。
(1) 上述のように「逮捕する場合」には当たるが、「逮捕の現場」には当たらない。
(2) 差し押さえるべき物は「証拠物と思料する物」(222条1項本文、99条1項)である。
本件では、本件公務執行妨害罪の証拠は上記犯行目撃証言で足り、札束等は同罪の「証拠物と思料する物」とはいえない。よって、同差押えは違法である。
第2 設問2
1 本件メモの手書き文字は甲の筆跡による。よって、本件メモは甲の公判廷外供述を内容とする証拠である。そこで、本件メモは伝聞証拠に当たり320条1項により証拠能力が否定されないか。
伝聞法則の趣旨は、公判廷外供述は知覚・記憶・表現の過程の誤りを反対尋問等により吟味できない点にある。そこで、伝聞証拠とは、公判廷外の供述を内容とする証拠であって、同供述内容の真実性を証明するためのものをいう。

本件メモは、甲がメモ作成時に犯意を有していたという精神状態を証明するための証拠である。

そして、甲が乙の指示した内容を乙の目前で書き留めたという本件メモの作成経緯についての甲の公判廷供述により、乙もメモと同一内容の犯意を有していたことを証明できる。よって本件メモと甲の同公判廷供述により共謀を推認できる。

供述時の精神状態の供述は、供述内容の真実性を証明するための証拠であるが、知覚・記憶の過程がないこと及び表現の真摯性については書面の内容や作成状況等から吟味できることより、非伝聞である。よって、本件メモは、非伝聞である。

2 本件メモは、上記違法な差押えにより収集された証拠であり、違法収集証拠に当たる。
①証拠収集手続に令状主義の精神を没却するような重大な違法があり、②当該証拠を採用することが将来の違法捜査抑制の見地から相当でないと認められる場合には違法収集証拠の証拠能力が認められない。
本件では、公務執行妨害罪で甲が逮捕される前の時点で、バッグ、服装、乗っていた車の特徴、身長、体格が本署からの連絡内容と一致することが判明している。ま た、バッグの中に札束と矛盾しない形状の物があることも判明している。そこで、甲は上記時点において本件強盗致傷事件の犯人であることを疑うに足りる「十分な理由」(210条1項)が認められ、同罪で緊急逮捕(210条1項)することができたといえる。そうすると、緊急逮捕に伴う差押え(220条1項2号)として、本件メモを証拠物として差し押さえることができた。よって、本件メモの差押えは法規違反の程度は大きくなく、重大な違法とはいえず、①を充たさない。したがって、本件メモは違法収集証拠に当たらない。
3 以上より、本件メモの証拠能力は認められる。

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