過去問ひとり答練 ~司試平成23年経済法第1問・第2問  | ついたてのブログ

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第1問 ※改訂しました(2020/09/01)

第1 C社を設立する行為は15条の2第1項第1号に反しないか。

1 「一定の取引分野」とは、市場をいい、当該行為が対象とする取引及びこれにより影響を受ける取引の範囲をいう。この範囲の画定は、商品及び地理的範囲について、主として需要の代替性、必要に応じて供給の代替性を考慮して行う。

(1) 上記行為は、甲の製造販売事業を対象とする。そして、甲は4種類のグレードに分かれ、それぞれ用途が異なっており、グレード間の需要の代替性を欠く。しかし、甲の製造販売業者は異なるグレードに転換して製造販売することが容易であるので、グレード間の供給の代替性が認められる。よって、商品市場は、グレード毎に画定されず、甲に画定される。また、甲のユーザーは全国的に所在し、甲の製造販売業者はこれに対応して甲を供給しており、地理的市場は日本に画定される。よって、市場は日本における甲の製造販売市場に画定される。

(2) C社にはAB各社から乙の開発及び営業に長年従事してきた従業員について数名ずつ従業員として出向させることが予定されている。よって、乙の製造販売についての情報がこれらの従業員を通してAB両社間で共有されるおそれがある。そうすると、C社設立行為により乙の製造販売市場も影響を受ける。そして、丙が乙に競合する程度は現在のところ小さいから丙に需要の代替性はなく、商品市場は乙に画定される。また、地理的市場は特段の事情がなく日本に画定される。よって、市場は日本における乙の製造販売市場にも画定される。

2 「競争を実質的に制限することとなる」とは、市場支配力を形成維持強化する蓋然性があることをいう。

(1) 乙の製造販売市場について

上述のように、AB両社間で上記情報共有が生じる。その結果、AB両社は互いの行動を高い確度で予測できる。よって、AB両社にとって協調的行動を採ることが利益となる。

AB両社のシェアが計65%と大きく、STUV社とは格差があるうえ、STUV社は製造設備に余裕がなく供給余力が小さい。よって、STUV社は低価格競争による顧客奪取の誘因に乏しく、有力な牽制力とならない。乙のユーザーは輸送時間が掛かる海外メーカーよりも国内メーカーから購入しており、今後もこの傾向に大きな変化はなく、輸入圧力が小さい。乙の製造販売には巨額の投資が必要であり、参入圧力が小さい。上記のように需要の代替性がなく、隣接市場からの圧力が小さい。乙の製造販売業者とそのユーザーとの取引は比較的固定的な関係にあり、需要者からの圧力が小さい。

よって、AB両社は、両社間の協調的行動により市場支配力を形成維持強化する蓋然性がある。

(2) 甲の製造販売市場について

ア C社のシェアは第1位の40%となり、LMNO社とのシェア格差が拡大する。しかし、LMNO社は製造設備に余裕があり、供給余力が大きい。そうすると、仮にC社が甲の生産を縮小して価格を引き上げたとしても、LMNO社が増産してこれを牽制できる。また、輸入が安定的に増加しており、甲の輸入についての法規制もないので今後も増加すると考えられ、輸入圧力が大きい。ユーザーは購入先を変更することが珍しくなく、需要者からの圧力が大きい。よって、C社が単独で市場支配力を形成維持強化する蓋然性はない。

イ 上述のように供給余力があっても、甲の需要が減退傾向にあるので、LMNO社は、C社と協調することが利益となり得る。しかし、仮に国内事業者間で協調的行動が成立したとしても、国内価格引上げに対応して輸入の増加が予想される。よって、協調的行動により市場支配力が形成維持強化される蓋然性もない。

(3) よって、乙の製造販売市場について、「競争を実質的に制限することとなる」に当たる。

3 したがって、上記行為は15条の2第1項第1号に反する。

第2 乙の製造販売市場においてAB両社が市場支配力を形成維持強化する蓋然性が生じる原因は、C社に出向する上記従業員を通じてAB両社間に情報共有が生じる点にある。

そこで、ABいずれかの乙製造販売事業をSTUV社のいずれかに譲渡するという対策を採ることが考えられる。しかし、乙の需要も減退気味であり、STUV社はいずれも乙の製造設備を縮小させてきている。そうすると、上記事業の買い手が現れない可能性がある。

そこで、上記従業員の出向を解消するという対策を採るべきである。

(1791字)

 

※第1.2(1):HHIは4515、増分は2101であり、セーフハーバーに当たらない。

※第1.2(2)ア:HHIは2418、増分は800であり、セーフハーバーに当たらない。

※第1.2(2)イ:C社設立により、AB両社とC社との間で排他的供給が行われるようになる市場閉鎖効果を検討することも考えられるが、垂直効果を分析するのに必要な情報が与えられていない(「論点解析」P.138)←「論点解析」P.144最終段落~P.145参照


第2問 ※補訂しました(2020/09/04)

第1 本件20社の行為は、共同・間接の取引拒絶(2条9項1号ロ)に当たり、19条に違反しないか。

1(1)ア 「共同して」とは、意思連絡をいう。

イ 本件20社は、話合いの結果上記行為をすることで一致しており、明示の意思連絡がある。よって、「共同して」に当たる。

(2) 本件20社は、甲市のタクシー事業者であり、競争関係にある。よって、上記行為は「競争者と」共同したといえる。

(3) 「他の事業者」であるA社に対し、「ある事業者」である低額運賃タクシー事業者との間で共通乗車券事業に係る契約を締結しないよう要請しており、同事業に係る役務の「供給を拒絶させ」に当たる。

2(1) 市場とは、当該行為が対象とする取引及びこれにより影響を受ける取引の範囲をいう。この範囲の画定は、商品及び地理的範囲について、主として需要の代替性を考慮して行う。

(2) 本件20社の行為の対象は共通乗車券事業に係る契約を締結する取引である。そして、共通乗車券事業に係る契約を締結できないことによって、拒絶されたタクシー事業者が共通乗車券を利用する顧客を獲得できないという影響がある。

共通乗車券を利用する者は、あらかじめ共通乗車券の使用に関する契約を締結した官公庁・企業等であり、経費節約の動機を持つ。そうすると、共通乗車券を使用するタクシーの運賃が上昇すれば、現金やクレジットカードで運賃を支払って低額運賃タクシーを利用すると考えられる。よって、現金等を支払手段とするタクシー事業に需要代替性がある。したがって、商品市場は、共通乗車券を利用するタクシー事業には画定されず、現金等を支払手段とするタクシー事業を包含するタクシー事業に画定される。また、甲市はタクシー事業について独立した市場を形成しており、地理的市場は甲市に画定される。よって、市場は甲市におけるタクシー事業に画定される。

3(1)ア 「正当な理由がないのに」とは、公正競争阻害性のうちの自由競争減殺、すなわち、競争の実質的制限に至らない程度の競争制限効果をもたらすことをいう。

イ 低額運賃タクシー事業者は、共通乗車券事業に係る役務の提供を受けられないことにより、共通乗車券の利用率25%の顧客を獲得できない。共通乗車券を利用する顧客は、官公庁・企業等といった、利用頻度が高く金額が大きい顧客であり、これらの顧客を失うことは事業活動の継続に困難を生じさせる。よって、本件20社の行為は、競争者排除という自由競争減殺が認められる。

もっとも、低額運賃タクシー事業者は、上記25%を除いた75%の市場において、低運賃をアピールして顧客を維持できるはずである。そうすると、本件20社は、上記市場におけるタクシー台数の80%を占めるとはいえ、運賃を左右する力までは形成できない。よって、本件20社の行為は、競争の実質的制限に至らない程度の競争制限効果をもたらすといえる。

(2)ア 目的が正当であり、手段が相当であれば、「正当な理由」が認められる。

イ タクシー事業の安全性を確保するという目的は、乗客の生命身体の安全に資する。そうすると、同目的は、一般消費者の利益確保を目指す1条に照らし正当な目的といえる。

しかし、本件20社の主張によると、交通事故の原因は乗務員の過重労働にあり、乗務員の過重労働の原因は収入が歩合制であることにある。そうすると、交通事故を防止しタクシー事業の安全性を確保するためには、乗務員の給与を固定給にするという他の手段がある。よって、手段の相当性を欠く。

(3) したがって、「正当な理由がないのに」に当たる。

4 以上より、本件20社の行為は2条9項1号ロに当たり、19条に違反する。

第2 A社の行為は、2条9項6号イ・一般指定2項に当たり、19条に違反しないか。

A社が上記要請に従ったのは、本件20社が共通乗車券事業の主要な利用者であり、かつ、A社の株主の多数を占めることから、上記要請に従わないと本件20社の協力を失いA社の経営上多大の支障が予想されることから、上記要請に従わざるを得なかったからである。そうすると、A社の行為はやむを得ないといえ、違反行為者と考えるべきではない。

よって、A社の行為は一般指定2項に当たらず、19条に違反しない。

(1731字)