過去問ひとり答練 ~司試平成26年経済法第1問 ※2020/11/15改訂 | ついたてのブログ

ついたてのブログ

弁護士一年目です。ついたての陰から近況をつづります。

A社の行為は、私的独占(2条5項)に当たり、3条前段に反しないか。

1(1) 「排除」とは、他の事業者の事業活動を継続困難にし、または新規参入を困難にする、人為的反競争行為をいう。

(2)ア 甲の大口利用者向け販売業者のうちA社以外のメーカーの甲も取り扱ってきた取引先販売業者に対して支払う割戻金は、当該販売業者の甲の購入全体に占めるA社の甲の割合が高くなるにつれて高額になっており、累進性がある。よって、同割戻金の支払いは、競争品の取扱いを制限する効果を有する。

イ A社は、国内の甲の販売市場において70%という大きなシェアを有する。また、大口利用者向け販売業者においては、甲の品揃えの中にA社の甲を相当割合確保しておくことが重要となっている。よって、市場におけるA社の地位は重要である。

大口利用者向け販売業者の多くは複数のメーカーの甲を取り扱ってきたところ、A社は、かかる販売業者の過半を占める販売業者に対し上記割戻金を支払うこととしており、行為の対象となる販売業者の数が多い。

さらに、従来A社の甲のみを取り扱ってきた者との間で今後も継続してA社の甲のみを取り扱う約束を取り付ける行為は、文字通りの排他条件付取引である。そして、割戻金を支払うこととする。かかる行為は、競争者が新たに取引先を開拓することを困難にする。

A社は上記行為を組み合わせており、競争者が代替的な取引先を容易に確保することができなくなるおそれがある。よって、A社の行為は、他の事業者の事業活動を継続困難にし、または新規参入を困難にする行為に当たる。

ウ 上記販売業者の取引先選択の自由を拘束する点で、A社の行為が人為性を有することは明らかである。

エ よって、A社の行為は「排除」に当たる。

2(1) 「一定の取引分野」とは、市場をいう。この範囲の画定は、商品及び地理的範囲について、主として需要の代替性を考慮して行う。

(2) A社の行為が対象とする取引は、甲の大口利用者向け販売取引である。

甲の用途には、乙を用いることもできるが、乙は甲に比べて品質が大きく劣ることから、甲の代わりに乙が用いられることはほとんどない。よって、需要の代替性を欠く。

甲の流通経路は、大口利用者向け販売業者を通して大口利用者に供給する経路と、量販店を通して小口利用者に供給する経路の二つある。大口利用者向けと小口利用者向けとでは、甲の取引数量や取引価格などに大きな差が存在している。そうすると、大口利用者にとって、小口利用者向けの流通経路は代替性のある流通経路とはいえない。

地理的市場については特段の事情がない。

よって、市場は、日本における甲の大口利用者向け販売市場に画定される。

3(1) 「競争を実質的に制限する」とは、市場支配力を形成、維持、強化することをいう。

(2) A社は同市場において70%のシェアを占め、競争者とのシェア格差が大きい。もっとも、一昨年の終わり頃以降、甲の需要が急速に高まってきたことから、複数のメーカーが同市場への新規参入を計画している。また、既存の甲のメーカーも遊休状態であった製造設備を利用し、甲の製造を増大し始めている。よって、競争者の供給余力が大きく、競争者が有力な牽制力となるとも思える。しかし、上述のように、A社の行為により既存の甲のメーカーの事業活動継続は困難となり、同市場への新規参入も困難になる。よって、競争者は有力な牽制力足りえない。また、外国製の甲は日本へほとんど輸入されていないので、輸入圧力がない。A社は、同市場において高水準の価格を維持してきたのであり、同市場の市場支配力を維持してきたが、A社は、上記行為により、市場支配力を今後も維持するおそれがある。よって、

「競争を実質的に制限する」に当たる。

4 以上より、A社の行為は3条前段に反する。

(1560字)