受験生諸賢にお見せするレベルではないかもしれませんが、せっかくなので公開することにしました。なお、各答案の末尾に付したコメントは全くの個人の感想です。ウラをとったものではありません。
経済法第1問
甲の会の会長が行った本件要請は8条5号に違反する。
1 甲の会は一般的な経済状況などについて情報交換を行うことにより事業者としての共通の利益を増進することを主たる目的とする事業者の連合体であり、「事業者団体」(8条柱書き、2条2項)に当たる。
2 本件要請が甲の会の行為であるといえるためには、正式な意思決定機関の決定に基づく場合のみならず、当該決定が団体の決定であるとして構成員から遵守すべきものと認識されている場合でもよい。
本件では、本件要請は、甲の会の最高意思決定機関である総会ではなく幹部会の決定に基づくものである。そして、20社の担当営業部長は幹部会による決定に異を唱えたことはないのであるから、幹部会の決定が団体の決定であるとして構成員から遵守すべきものと認識されているといえる。よって、本件要請が甲の会の行為であるといえる。
3 8条5号該当性
(1) 本件要請は、甲を取り扱う全ての建材専門商社という「事業者」(同号)に対してなされている。
(2) 「不公正な取引方法に該当する行為」(同号)
本件要請に応じて、建材専門商社がX社からの甲の購入を中止した行為は、共同の取引拒絶(2条9項6号イ、一般指定1項1号)に当たり、19条に違反する。以下理由を述べる。
ア 建材専門商社は「自己と競争関係にある他の事業者」に当たる。
イ 上記甲の購入を中止した行為は、X社という「ある事業者から商品」「の供給を受けることを拒絶し」たといえる。
ウ 効果要件
(ア) 市場画定
市場とは競争が行われる場をいい、当該行為が対象とする取引及びこれによって影響を受ける取引の範囲を意味する。この範囲の画定は、商品及び地理的範囲の観点から、主として需要の代替性、必要に応じて供給の代替性を加味して行う。
本件では、上記購入中止行為は、甲の製造販売取引を対象とする。そして、甲に代替する内装建材は存在しないので、需要の代替性はない。また、甲は日本の建材メーカーのみが製造販売しており、現在輸入はなく、近い将来輸入される見込みもない。よって、供給の代替性もない。よって、商品市場は甲の製造販売市場に画定される。そして、甲の製造販売業者、甲を購入する建材専門商社は、全国にその拠点を有しており、甲は全国に流通しているので、地理的市場は日本に画定される。よって、市場は日本における甲の製造販売市場に画定される。
(イ) 「正当な理由がないのに」とは、公正競争阻害性のうちの自由競争減殺をいう。自由競争減殺とは、競争を回避又は排除することにより、競争の実質的制限に至らない程度の競争制限効果をもたらすことをいう。
本件では、甲は、その製造販売業者から建材専門商社に販売され、建材専門商社から住宅メーカーに販売されており、他に流通ルートがない。建材専門商社のほとんどがX社から甲の購入を中止することにより、X社は甲を販売する取引先を容易に見つけ出すことができなくなっており、競争排除による自由競争減殺が認められる。もっとも、20社の間では、比較的活発な価格競争が行われているので、20社が市場支配力を形成したとはいえず、競争の実質的制限に至らない程度の競争制限効果がもたらされたといえる。よって、「正当な理由がないのに」に当たる。
エ 上記購入中止行為の原因である本件要請の目的が正当で、手段が相当であれば、行為の違法性が阻却される。
本件では、本件要請の目的は、X社が甲の会の安全基準を遵守しないことにより、内装建材甲全体の信用や評判に悪影響が及ぶことを防止する点にある。たしかに、甲の会の安全基準は法令上の基準を超える厳しい安全基準であり、法令の要求を超える基準の遵守をX社に要請することに正当性はないとも思える。しかし、近年、一般消費者の健康への意識が著しく高まっており、別の内装建材丙については、それに含まれる化学物質の種類や量に関する法令上の基準は遵守されていたにもかかわらず、一般消費者に皮膚障害をもたらすおそれのある化学物質が含まれていたということが大きく報道され、丙の需要が大幅に減退したことがあった。また、甲についても一般消費者に皮膚障害をもたらすおそれのある化学物質が含まれているのではないかという疑問を公にする消費者団体が現れており、甲の信用や評判を守ることは企業経営上正当である。また、甲の会の安全基準は大学の研究者3人の提言どおりのものであり、内容も合理的である。よって、本件要請の目的は正当である。
しかし、X社のみ甲の会の安全基準を守っていないと公表するという、より競争制限的でない他の手段がある。よって、手段の相当性を欠く。よって、行為の違法性は阻却されない。
(3) 本件要請は、建材専門商社に共同の取引拒絶を「させるようにすること」(8条5号)に当たる。なぜならば、甲の製造販売業者21社のうちの20社を占める甲の会の本件要請を拒絶すると、建材専門商社は今後甲を仕入れられなくなるおそれがあるので、本件要請に応じざるを得ないからである。
(4頁目の10行目まで)
事業者団体規制は勉強不足のところなのにおととしに続いてまたきたかと嫌な感じがした。最初8条4号を検討していたが、X社は甲の会のメンバーではないと気付いたので5号に変えた。問題文の読み落としをよくやるので危ないところだった。3で、「共同して」の要件検討を落とした。条文の要件を読み落としてしまった。また、3で書いた正当化事由の検討は、建材専門商社の行為についてではなく本件要請について行うべきだった。
経済法第2問
A社が計画するH社の株式取得は10条1項前段に違反しない。
1 A社は「会社」に当たる。
2 上記株式取得は、H社という「他の会社の株式を取得し」に当たる。
3 効果要件
(1) 「一定の取引分野」とは市場をいい、当該行為が対象とする取引及びこれによって影響を受ける取引の範囲を意味する。この範囲の画定は、商品及び地理的範囲の観点から、主として需要の代替性、必要に応じて供給の代替性を加味して行う。
本件では、本件株式取得は甲の製造販売取引に影響を与える。そして、たしかに、近年、甲と同じ機能を有する新たな部品乙が流通し始め、一部の丙のメーカーには、甲に変えて乙を自社の丙に搭載する動きがある。よって、乙に需要の代替性があるとも思える。しかし、数年のうちに丙のメーカー間で乙が広く普及する見込みはないので、需要の代替性はない。よって、商品市場は、甲の製造販売市場に画定される。また、丙のメーカーは、平成26年末時点で、世界に15社存在し、丙のメーカーが、特に自国の甲のメーカーのみから甲を購入する傾向はない。よって、甲は世界的に取引されており、地理的市場は世界に画定される。よって、市場は世界における甲の製造販売市場に画定される。
また、甲は丙に搭載され、他に用途はない。よって、本件株式取得は丙の製造販売取引にも影響を与える。そして、商品市場については特段の事情がないので丙の製造販売市場に画定される。また、丙のメーカーは、甲を搭載した丙を製造して世界各国の販売代理店に販売しており、丙は世界的に取引されており、地理的市場は世界に画定される。よって、市場は世界における丙の製造販売市場にも画定される。
(2) 「競争を実質的に制限することとなる」とは、市場支配力を形成維持強化する蓋然性があることをいう。
本件では、まず、甲の製造販売市場について検討すると、本件株式取得後のHHIは2950となり2500を超え、増分も750であり250を超えるので、セーフハーバーに当たらない。そして、上記市場において、A社は40%となり第1位のシェアを占める。しかし、次順位のG社が30%のシェアを有しており、競争者とのシェア格差は小さい。よって、競争者は低価格競争による顧客奪取の誘因があり、競争者は有力な牽制力となる。また、甲のメーカーの平成22年、平成24年及び平成26年の各暦年における市場シェアの推移によると、G社は10%から30%へと3倍に増えており、競争が活発である。また、甲に関する技術が進歩するスピードは速く、毎年1回以上、前のモデルより高速化、大容量化した新しいモデルの甲が発売されている。よって、現在のシェアが小さくても、新技術の開発に成功すれば大きくシェアを伸ばすことが期待でき、競争者の顧客奪取の誘因は大きい。また、丙のメーカーから甲のメーカーに対して強い価格引下げ要求がされており、さらに、丙のメーカーは、国を問わず複数の甲のメーカーから甲を購入するのが通常であり、取引する甲のメーカーを固定せず、甲のメーカーの技術能力や取引条件に応じて取引する甲のメーカーを常時変更し、あるいは複数のメーカーからの甲の購入割合を常時変更している。よって、需要者からの競争圧力が大きい。また、甲の販売価格に占める輸送費用の割合は数パーセント程度にとどまり、甲に関税を課す国は現時点では存在せず、甲の販売価格が国によって大きく異なるという傾向はない。よって、輸入圧力も大きい。よって、A社が上記株式取得により市場支配力を形成する蓋然性はない。
次に、丙の製造販売市場について検討すると、同市場には世界に15社存在し、甲を搭載した丙の製造販売について活発な競争が行われていると認められ、A社が上記株式取得により市場支配力を形成する蓋然性はない。
よって、「競争を実質的に制限することとなる」に当たらない。
(3頁目の21行目まで)
株式取得のセーフハーバーにHHIを使っていいのかは不明。丙の製造販売市場についてシェアの記載がなく検討する必要があるのか迷ったが、短く書くことにした。丙の消費者が他国で丙を購入することがないという事情をどう使っていいのか分からず無視した。水平・単独の競争制限効果を検討すること以外に何をきいているのか出題意図が分からない。
公法系第1問
第1 設問1
1 (1)について
(1) A市が、Y対策課の職員採用について、BとCとを同一に扱ったことは、14条1項に違反する。
同項は、合理的な理由なく差別されない権利を保障する。
そして、合理的な差別といえるためには、目的の正当性及び手段の合理性が必要である。
本件では、BとCとを同一に扱った目的は、Y対策課の設置目的を実現することである。そして、Y対策課の設置目的は、Y対策事業の安全性及びこれに対する市民の信頼を確保することである。この目的は、正当な行政目的であり、目的の正当性が認められる。
しかし、Bは甲市シンポジウムにおいてY採掘には安全確保の徹底が必要であるとの考えを述べた上で、作業員や周辺住民への健康被害の観点から安全性が十分に確保されているとはいえず、現状においてはY採掘事業に反対せざるを得ない旨の意見を述べた。これは、Y採掘事業についての客観的な意見を述べたにすぎない。また、Y対策課の職員募集に際しては、現段階でもY採掘事業には反対であるが、少しでもその安全性を高めるために、自分の専門知識をいかし、市民の安全な生活や安心を確保するために働きたいと考えている。かかる考えを持つBを採用することは、Y対策事業の安全性及びこれに対する市民の信頼を確保するというY対策課の設置目的に資する。
これに対して、Cは、甲市シンポジウムの開催自体を中止させようと思い、Yの採掘への絶対的な全面反対及び甲市シンポジウムの即刻中止を拡声器で連呼しながらその会場に入場しようとし、制止しようとして甲市の職員を殴って傷害罪で罰金刑に処せられた。このようにCは自分の意見を実現するためには妥協を許さず実力行使も辞さない者である。かかるCを採用することがY対策課の設置目的に資さないことは明らかである。
よって、A市はBを職員に採用しCを職員に採用しないと扱うべきだったのであり、BとCとを同一に扱ったことは手段の合理性を欠き、14条1項に違反する。
(2) A市が、Y対策課の職員採用について、Dらを採用したのにBを採用しなかったことは、14条1項に違反する。
かかる取扱いの目的が正当であることは(1)と同様である。
また、Bの勤務実績はDらと比較してほぼ同程度ないし上回るものであったDらを採用するならばBも採用するのがY対策課の設置目的実現に資する。よって、A市の取扱いは手段の合理性を欠き、14条1項に違反する。
(3) 自分の意見・評価を甲市シンポジウムで述べたことを理由の一つとして、採用されなかったことは、思想良心の自由(19条)に違反する。
「思想及び良心」とは、世界観を含む内心領域一般をいう。Bが甲市シンポジウムで述べた、安全性等の意見は、Bの内心の意見を表したものであり、「思想及び良心」に当たる。
同条は、「思想及び良心」を理由として不利益な取扱いを受けない権利を保障する。Bが採用されなかった理由の一つが自分の意見を甲市シンポジウムで述べたことにあるので、Bは、「思想及び良心」を理由として不利益な取扱いを受けない権利を侵害されており、19条に違反する。
2 (2)について
(1) Y対策課の職員採用について、BとCとを同一に扱ったことは、手段の合理性があり、14条1項に違反しない。
(2) Y対策課の職員採用について、Dらを採用したのにBを採用しなかったことは、手段の合理性があり、14条1項に違反しない。
(3) 「思想及び良心」を理由として不利益な取扱いを受けない権利は絶対的保障ではない。Bを採用しなかったことは、合理的な制約であり、思想良心の自由(19条)に違反しない。
第2 設問2
1 Bを採用することがY対策課の設置目的に資する点は、Bの主張するとおりである。
他方、Cを採用することもY対策課の設置目的に資すると考える。以下理由を述べる。Y採掘事業は極めて高い経済効果が見込まれ、A市の税収や市民の雇用の増加も期待できるものであり、強く推進が望まれる事業である。しかし、同事業には、採掘に当たる作業員のみならず、周辺住民に重大な健康被害を与える危険性がある。Yの採掘の際に有害成分を無害化する技術の改善が進んだとはいえ、有害成分を完全に無害化する技術はいまだ開発されていない。このような状況でY採掘事業を進める以上、同事業に反対の立場の職員を含めてさまざまな意見を持つ職員を採用することが、Y対策事業の安全性及びこれに対する市民の信頼を確保することというY対策課の設置目的に資するといえる。たしかに、Cは傷害罪で罰金刑に処せられている。しかし、Cが行った行為は、Cの入場を制止しようとした職員ともみ合いになった際に職員を殴った行為であり、国会議員でも行いかねない行為であり、Cの前科を過大視すべきではない。また、Cの応募動機は、Y対策課の職員になれば、Y対策課の現状をより詳細に知ることができ、Y対策事業反対運動に役立てようというものである。かかる動機を持つCを採用することにより、Y採掘事業の是非についての市民の関心が高まり、ひいてはY採掘の危険性を低める新技術の開発に結びつくことも考えられる。
よって、A市はBもCも採用するという取扱いをすべきだったといえる。よって、A市がBとCとを同一に扱ったこと自体は、14条1項に違反しない。
2 上記のようにBも職員に採用されるべきだったので、Dらが採用されたのにBを採用しなかったことは手段の合理性を欠き、14条1項に違反する。
3 A市が反論するように、「思想及び良心」を理由として不利益な取扱いを受けない権利は絶対的保障ではない。しかし、上記のように、Bを採用しなかったことに合理性はなく、19条に違反する。
(5頁目の11行目まで)
BとCとを同一に取り扱うことがなぜ差別になるの分からないが、Bが差別だと主張しているので14条の問題とするしかなかった。Y対策事業の業務内容が詳しく書かれているのに全く触れられなかった。Bの3番目の主張は麹町事件と似ていると思ったので19条で構成した。A市の反論と私見がかみ合っていない。私見の1番目については第3の道を選んでみた。というか他に思いつかなかった。私見の3番目については時間切れだが、時間があったとしても内容のあることは書けなかった。
公法系第2問
第1 設問1
Xは、本件命令が発せられることを事前に阻止するために、本件命令の差止めの訴え(行訴法3条7項)を適法に提起できる。
1 本件葬祭場の営業が開始されれば、Y市長が本件命令を発することは確実である。よって、「一定の処分・・・がされようとしている場合」(同項)に当たる。
2 Y市では、消防法12条2項による移転命令を発した場合、直ちにウェブサイトで公表する運用をとっており、Xは、それによって、顧客の信用を失うおそれがある。顧客の信用はいったん失われると回復するのに長い時間がかかる。よって、本件命令がされることによりXに「重大な損害を生ずるおそれがある」(行訴法37条の4第1項)。
3 消防法には、特別の救済手段は規定されていないので、「他に適当な方法」(同項)はない。
4 Xは本件命令の名宛人であり、「法律上の利益を有する者」(37条の4第3項)に当たる。
第2 設問2
1 本件命令の根拠規定である消防法12条2項は、市町村長は、取扱所の位置が10条4項の技術上の基準に適合していないと認めるときは、本件命令を発することができる、と規定する。よって、「10条4項の技術上の基準に適合していないと認めるとき」という要件を充たさないときは、本件命令は違法となる。
2 本件では、10条4項の委任を受けた危険物政令19条1項・9条1項1号本文が、本件取扱所と本件葬祭所との間は30メートル以上を保たなければならないと規定するが、18メートルしかないので、「技術上の基準に適合していない」に当たるとも思える。しかし、危険物政令9条1項1号但書は市町村長が安全であると認めた場合は、市町村長が定めた距離を当該距離とできると規定しており、Y市長は本件基準を定めている。本件基準は、危険物政令9条1項1号但書の委任を受けたものであるから、法規命令としての法的性質を有し、法的拘束力を有する。本件では、本件基準①が定める倍数の上限は50であるところ、本件取扱所の倍数は55である。また、本件基準②が定める短縮限界距離は20メートルであるところ、本件取扱所から本件葬祭所までの距離は18メートルである。よって、本件基準①②の基準を充たさず、「技術上の基準に適合していない」に当たるとも思える。しかし、委任命令は委任した法規の趣旨に違反していれば違法となる。本件では、本件基準を委任した危険物政令9条1項1号但書の趣旨は、取扱所の設置後、取扱所の周辺に新たに保安物件が設置された場合に、消防法12条により、取扱所の移転等の措置を講じなければならなくなる事態を避ける点にあり、取扱所の設置者を保護する点にある。危険物政令9条1項1号但書は、防火上有効な塀を設ける等により、市町村長が安全であると認めた場合に市町村長が定めた距離を当該距離とできるとする。Xは本件基準③が定める防火塀を設置する用意があるのだから、本件取扱所から本件葬祭所まで18メートルしかなくても防火上安全であるといえる。よって、本件基準①②は委任した法規の趣旨に違反しており違法である。よって、Xは技術上の基準を充たしており、、「10条4項の技術上の基準に適合していないと認めるとき」という要件を充たさないので、本件命令は違法である。
第3 設問3
Xが憲法29条3項に基づき移転に要した費用につき損失補償請求できるためには、①特定人が②特別の犠牲を被ったといえなければならない。そして、特別の犠牲を被ったといえるためには、当該財産権の本質を害する程度の強度の制約でなければならない。
本件では、①Xは、本件命令の名宛人であるという特定人に当たる。
また、②消防法12条の趣旨は、危険な物を所有する者に、当該物の危険から損害が生じないように注意する責任を課す点にある。そうすると、取扱所の移転費用が生じたとしても、その費用は取扱所の危険性に基づく当然の負担であるから、当該財産権の本質を害する程度の強度の制約とはいえないことになる。
しかし、Xが本件取扱所の営業を始めた平成17年の時点では、本件葬祭所の建設が不可能だったが、平成26年に都市計画決定で建築規制が緩和されたために葬祭所の建築が可能となり、Xの移転義務が生じた。このように、本件取扱所を移転しなければならなくなることは営業開始当時Xにとって予見できないことである。経済活動において予見可能性は重要な要素である。よって、Xが被った本件取扱所の移転費用は、予見可能性を欠く損失であり、当該財産権の本質を害する程度の強度の制約といえ、特別の犠牲に当たる。
よって、Xは上記損失補償請求ができる。
(4頁目の6行目まで)
設問2は今年の司法試験で一番難しかった。この問題を経験した後では民事系刑事系の問題が易しく感じられた。本件基準を法規命令であると書いたが、問題文では「内部基準」と書かれているのでかなり危険なミスだろう。しかも、Xが本件基準①を充たしていないにもかかわらず防火上安全であることの説明を忘れた。設問2の前半を書き終えた時点で残り20分を切っており、設問3を書き切ることを優先したため、危険物政令23条について全く触れられなかった。
民事系第1問
第1 設問1
1 (1)について
(1) Aの主張の根拠
AはBとの間で丸太の売買契約を締結しており、丸太の所有権移転の時期は、代金の支払時と定められており、所有権留保特約がされている。そして、代金の支払時期とされた平成23年8月1日に、Bは支払を拒絶しており、代金の支払がされていないので、材木①の所有権はAに留保されたままであり、Aに帰属する。
(2) Aの主張が認められるか
上記の丸太の所有権留保特約は、Aの代金債権を担保するためになされているが、所有権を留保するという形式を重視して、材木①の所有権はAに帰属していると考える。よって、Aの主張が認められる。
(3) Cの反論
CはBとの間で丸太20本の売買契約を締結している。そして、4月25日、20本の材木がCの倉庫に搬入された。よって、Cは売買契約という取引行為に基づいて材木①の占有を取得した。よって、Cは材木①の所有権を即時取得した(192条)。
(4) Cの反論が認められるか
Cは建築業者であり専門知識を有する者である。そして、Cはそれまでの取引の経験から、Aが丸太を売却するときにはその所有権移転の時期を代金の支払時とするのが通常であり、最近もAB間でトラブルが生じていたことを知っていた。よって、CはBが材木①の所有権を有しているかについて慎重に調査する義務を負う。しかし、Cは、20本の丸太についてはAB間で代金の支払が既にされているものと即断し、特にA及びBに対する照会はしておらず、上記調査義務に違反している。よって、CはBが材木①の所有権を有すると信じたことについて過失がある。よって、Cは材木①の所有権を即時取得せず、Cの反論は認められない。(5) よって、AはCに対して材木①の引渡しを請求できる。
2 (2)について
(1) Aの請求の根拠及び内容
Aの請求の根拠は、付合に伴う償金の請求(248条)である。
ア 「利得」
Cは材木②を用いて乙建物の柱を取り替えるなどして、乙建物のリフォーム工事を完成させている。材木②の分離復旧を強いることは社会経済上不利益であるから、材木②は乙建物に付合したといえる(242条本文)。そして、乙建物はDの所有物であるから、材木②の所有権はDに帰属する。よって、Dには材木②の価額相当額の「利得」がある。
イ 材木②の所有権はAに留保されていたので、Aは材木②の所有権を失うという「損失」がある。
ウ 「利得」と「損失」の間に因果関係がある。
エ AD間には契約関係がないのでDの「利得」に「法律上の原因」はない。
オ よって、Aの主張は認められる。
(2) Dの反論
DはCとの間で請負契約を締結し、材木②を用いて乙建物のリフォーム工事が完成した。よって、Dは請負契約という取引行為に基づいて材木②の占有を取得したといえ、材木②の所有権を即時取得した。
(3) Dの反論が認められるか
Aは、8月5日、Dに対して事実2から5までの事情を伝えており、Dは同日、Cが材木②の所有権を有していないことを知った。しかし、Dが材木②の占有を取得したのはリフォーム工事が完成した7月25日であり、Dは同日の時点では、Dが材木②の所有者であると過失なく信じていた。よって、Dは善意無過失であり、材木②の所有権を即時取得する。192条は不当利得の特則であるから192条が適用される。よって、Dの反論が認められる。
(4) よって、Aの上記請求は認められない。
第2 設問2
1 (1)について
(1) Gの主張の根拠
Fが対抗要件を具備したことによりEは丸太③の所有権を喪失したという所有権喪失の抗弁が根拠である。
(2) Gの主張・立証すべき事実
Fは、平成24年1月17日、甲土地及び甲土地上の本件立木をAから買い受ける旨の契約を締結した。よって、Fは「第三者」(177条)に当たる。
同日、甲土地についてAからFへの所有権移転登記がされた。土地上に生育する立木が土地とともに売却された場合には、土地の所有権移転登記が立木の所有権移転についても対抗要件となるので、かかる事実の主張立証を要する。
2 (2)について
(1) Gの主張の根拠は留置権(295条1項)である。
(2) その主張が認められるか
ア Gは丸太④という「他人の物の占有者」に当たる。
イ 「その物に関して生じた債権」とは、被担保債権成立の時点において、被担保債権の債務者と物の引渡し請求者が同一人である場合をいう。
本件では、被担保債権であるGのFに対する丸太④の保管料債権の支払時期は2月9日である。そして、同日において被担保債権の債務者はFであるが、物の引渡し請求者はEであり、同一人ではない。よって、丸太④の保管料債権は「その物に関して生じた債権」に当たらない。
ウ よって、Gの主張は認められない。
第3 設問3
1 (1)について
(1) Lの請求の根拠は不法行為に基づく損害賠償請求権(709条)である。
(2) Cの長男Hは満15歳の中学3年生であり、義務教育を受ける者であり、親Cの監督の対象である。また、CはHと同居しており、Hの動静を観察できる。また、Hは、中学2年生の終わりごろから急に言動が粗暴になり、喧嘩で同級生に怪我をさせたり、同級生の自転車のブレーキワイヤーを切るといった悪質ないたずれをしたりしたこと等から、Cが学校から呼び出しを受けるという事態が何度も生じていた。よって、Cは、Hに対し、厳しく注意するという監督義務を負っていた。しかし、Cは、Hに対し、一般的な注意をするにとどまっており、監督義務違反が認められる。
そして、Hは、本件角材を道路に置くという行為を行い、Kが転倒してLが右腕を骨折し、Lに治療費等として30万円相当の損害が生じており、監督義務違反と損害との間に因果関係がある。
よって、Lの主張は認められる。
2 (2)について
Cは損害額について過失相殺(722条2項)すべきとの反論をすることが考えられこの反論は認められる。なぜならば、Lは3歳であり事理弁職能力すらないが、母親Kが、携帯電話しながら片手で自転車を運転しており、Kの過失が「過失」に当たるからである。
(5頁目の15行目まで)
設問1(2)で、リフォーム工事の完成時と鍵の返還時がずれているという事情が占有移転の時期に関する事情であることに気付けなかった。AD間に契約関係がないからDの「利得」に「法律上の原因」がない、という記述も説得力がない。設問2は「甲土地の東半分・西半分」「墨書がない・ある」「丸太③・④」という事実関係の把握に手間取った。設問3(1)は709条のどの要件についての事実であるかについて明確に示せず、事実を引用しただけに近い書き方になってしまった。設問3(2)については時間切れ。
民事系第2問
第1 設問1
1 甲社が関西地方への進出を断念したことの損害についてのBの甲社に対する損害賠償責任(423条1項)
(1) 「任務を怠った」
Bが乙社の発行済株式の90%を取得して乙社の洋菓子事業の陣頭指揮をとった行為は競業避止義務(356条1項1号・365条1項)に違反し、「任務を怠った」に当たる。
ア 自己又は第三者の「ために」(356条1項1号)とは、自己又は第三者の計算でという意味である。なぜならば、同号の趣旨は、取締役がその地位を利用して会社の利益を害することを防止する点にあるからである。
本件では、Bは乙社の発行済株式の90%を取得しており、自らの意思のみで特別決議(309条2項)を成立させることができる地位にある。よって、Bは自己の計算で上記行為を行ったといえ、自己の「ために」に当たる。
イ 「会社の事業の部類に属する取引」(356条1項1号)とは、会社が実際行う事業と市場において競合し、会社の利益を害するおそれのある取引をいう。会社が進出を予定している事業でもよい。
本件では、乙社は、Bの紹介により、Q商標を日本において独占的に使用する権利の設定を受けた。他方、甲社は、関西地方への進出を企図して、マーケティング調査会社に市場調査を委託し、委託料として500万円を支払っている。甲社は、洋菓子事業部門を有するから、関西地方において洋菓子の製造販売事業を行う乙社と市場において競合し、甲社の利益を害するおそれがある。よって、BがQ商標の設定を受けて乙社の洋菓子事業の陣頭指揮をとった行為は「会社の事業の部類に属する取引」に当たる。
ウ 取締役は、当該取引につき重要な事実を開示して取締役会の承認を受けなければならない(356条1項柱書き・365条1項)。
本件では、Bは、乙社株式の取得に際し、A及びCに対し、乙社株式の発行済株式の90%を取得し乙社の事業にも携わると述べ、A及びCは特段の異議を述べていない。よって、取締役会の承認があったとも思える。しかし、Bは、乙社がチョコレートで著名なQ商標を日本において独占的に使用する権利の設定を受ける事実は開示していない。この事実は関西地方に進出予定の甲社の事業に大きな影響を与えるので重要な事実に当たる。かかる事実の開示なくなされたACの承諾は取締役会の承認とはいえない。
(2) 任務懈怠についてBに少なくとも過失がある。
(3) 乙社は、関西地方のデパートへの販路拡大に成功し、平成21事業年度に200万円であった営業利益が翌事業年度には1000万円に達した。Bは乙社の発行済株式の90%を有するので、Bは800万円×0.9=720万円の利益を得た。よって、Bの行為により甲社は720万円の損害を被ったと推定される(423条2項)。
(4)よって、Bは甲社に対して720万円の損害賠償責任を負う。
2 E引抜きによる甲社の損害についてのBの甲社に対する損害賠償責任(423条1項)
(1) 「任務を怠った」
Bが、甲社におけるノウハウを活用するため、洋菓子工場の工場長を務めるEを甲社から引き抜き、乙社に転職させた行為は、忠実義務(355条)に違反し、「任務を怠った」に当たる。
(2) Bに少なくとも過失がある。
(3) Eの突然の退職により、甲社の洋菓子工場は操業停止を余儀なくされ、3日間受注ができず、1日当たり100万円相当の売上げを失った。よって、E引抜きにより、甲社は300万の損害を被った。
(4) よって、Bは甲社に対して300万円の損害賠償責任を負う。
第2 設問2
1 第1取引及び第2取引は代金額が1億500万円、1億円であり、「重要な財産の処分」(362条4項1号)に当たり、各々取締役会の決議を経て行われている。
また、第1取引及び第2取引に際し、甲社の洋菓子部門の従業員及び甲社の取引先について、いったん甲社との法律関係を解消したうえで、新たに丙社との間で法律関係を成立させることにしており、有機的一体をなす財産の譲渡がない。また、甲社が洋菓子事業を将来再開する可能性を考慮して、甲社の競業が禁止されない旨の特約があり、甲社は競業避止義務(21条1項)を負わない。よって、第1取引及び第2取引は、「事業の重要な一部の譲渡」(467条1項2号)に当たらず、株主総会決議は不要である。
よって、第1取引及び第2取引は有効であるのが原則である。
2 しかし、第1取引及び第2取引は、代金額が時価相当額より安価である上、株主であるS社が得意先を失うことになりかねず、上記原則を貫くのはS社に酷である。
3 そこで、以下のように考えるべきである。
467条1項2号の趣旨は、事業譲渡が会社に重大な影響を及ぼすことから、会社の所有者である株主の意思を尊重する点にある。そうすると、株主が重大な不利益を被り、相手方の取引の安全を図る要請を上回る場合には、個別財産の譲渡であっても、同号を適用して株主総会の承認決議を要すると考える。
4 本件では、上記のように、S社は得意先を失うという重大な不利益を被る。他方、甲社の従業員と取引先について、上記のような不自然な工作がなされており、丙社には、甲社が株主総会決議を免れるために工作しているのではないかと疑う機会が与えられていたといえる。よって、丙社の取引安全を図る要請は低下している。甲社の競業が禁止されない旨の特約があるが、甲社の洋菓子部門の売上げはBの退任により低迷しており、甲社が競業を再開することは不確実であり、かかる特約を重視すべきではない。よって、S社を保護する要請が、丙社の取引の安全を図る要請を上回り、株主総会の承認決議を要した。しかし、甲社において株主総会の承認決議はなされていない。そして、株主総会決議を欠く事業譲渡は、株主の意思を尊重して、無効であると考える。よって、第1取引及び第2取引は無効である。
第3 設問3
1 事実16で発行された甲社株式に、株式発行無効の訴え(828条1項2号)の無効事由があるか。
同訴えの無効事由につき同号に規定はないが、法律関係の安定を図るため、重大な違法がある場合に限定すべきである。
2 本件では、甲社は非公開会社であり、既存株主の持株比率維持の利益が重視される(828条1項2号但書が提訴期間を延長しているのは既存株主の持株比率維持の利益を重視したからである)。本件株式発行は、取締役会決議で上場条件を廃止したうえで行われている。この上場条件は、甲社株式が上場した場合の成功報酬とする趣旨で定められたものであり、取締役会決議で廃止することは、株主の持株比率維持の利益を害し許されない。よって、重大な違法があり、上記訴えの無効事由がある。
(5頁目の20行目まで)
設問1の論述は再現していると長くなってしまった。本番ではもう少し雑に書いた。雑さ加減を再現するのは難しい・・・設問2の論証の流れは、ファイナル付録の合格者講義を参考にした(この講義の方法論を実践したのは結局ここだけだった)。従業員と取引先の移転方法についての問題文の記述がいかにも不自然に感じられたので「不自然な工作がなされている」と評価したが、事業譲渡は包括承継ではないのだから問題文に記述されているやり方が普通なのかもしれない。あてはめで貸借対照表に全く触れられなかった。設問3は、上場条件が株主総会で定められていると思い込んで読んでしまった。上場条件を取締役会で定めたという問題文の記述をよく読んでいなかった。
民事系第3問
第1 設問1
1 平成3年判決が、別訴で請求している債権を本訴で相殺の抗弁の自働債権として主張することが重複起訴禁止(142条)に抵触するとした根拠は、相殺の抗弁は実際に審理判断されるかは不確実であるが、審理判断された場合には既判力が生じ(114条2項)、別訴における既判力ある判断と抵触するおそれが生じるので、既判力の抵触を避けるという142条の趣旨に反するおそれがある点にある。
これに対し、本件では、反訴請求債権につき本訴において相殺の自働債権として既判力ある判断が示された場合にはその部分については反訴請求としない趣旨の予備的反訴として扱われる。そうすると、本訴において相殺の自働債権として既判力ある判断が示された場合には、反訴請求は審判対象にならない。また、本訴において相殺の自働債権として既判力ある判断が示されない場合には、反訴請求が審判対象になる。よって、既判力の矛盾抵触が生じないことになる。
2 上記のように、相殺の自働債権として既判力ある判断が示されるか否かは不確実であり、既判力ある判断が示されない可能性がある。よって、反訴原告が2つの利益を享受することにはならない。
3 処分権主義(246条)の根拠は、原告の意思を尊重する点にある。訴え変更の手続を要せずに予備的反訴として扱われることになっても、反訴原告は、平成3年判決と抵触せずに相殺の抗弁を主張できるという利益を得るので、反訴原告の意思に反しない。よって、処分権主義に反しない。
4 訴え変更の手続を要せずに予備的反訴とされると反訴請求について本案判決を得られなくなる可能性がある。しかし、反訴請求について本案判決を得られない場合には、相殺の自動債権については既判力ある判断がなされている。そして、反訴請求債権と相殺の自働債権とは同一債権である。よって、反訴被告の利益を害することにはならない。
第2 設問2
1 第1審判決取消し・請求棄却という結論の控訴審判決が確定した場合
この場合、Xは、相殺の自働債権が存在しないという判断について生じている既判力(114条2項)を失うという不利益を受ける。
また、Yによる控訴及び附帯控訴がなされていないので、相殺の自働債権が存在しないという判断についてYの不服申立てがなく、相殺の自働債権については控訴審の審判対象になっていない(296条1項、304条)。
そうすると、第1審判決取消し・請求棄却判決をすることは、控訴審の審判対象になっていない相殺の自働債権について審判した点及び不服を申し立てていないYにとって利益に相殺の自働債権について生じている既判力を消滅させた点で296条1項、304条に違反する。
2 相殺の抗弁を認めて請求を棄却した第一審判決が控訴棄却によりそのまま確定した場合
この場合は、1の場合のような違反は生じない。よって、控訴審は2の場合の判決をすべきである。
第3 設問3
1 Yの言い分の不当利得返還請求権(民法703条)への当てはめ
(1) 「利得」
Yの言い分①②及び⑤の前半がXの「利得」を基礎づける。
(2) 「損失」
Yの言い分⑤の後半がYの「損失」を基礎づける。
(3) Yの言い分⑤が「因果関係」を基礎づける。
(4) Yの言い分③が「法律上の原因」を欠くことを基礎づける。
2 既判力の作用
(1) 本件の訴訟物は不当利得返還請求権であり、本訴の訴訟物である請負代金請求権とは別個の訴訟物である。
(2) Yの言い分④のとおり、YがXに対し不当利得返還請求権を有するためには、基準時において、YがXに対して請負代金請求権を有していることが前提となる。よって、本訴の訴訟物は本件の訴訟物の先決関係にあり、本訴の既判力が作用する。そして、基準時においてYがXに対して請負代金請求権を有していないという判断に既判力が生じている(114条2項)。そして、基準時後の新事情はないので、YがXに対し不当利得返還請求権を有するという主張は遮断され、Yの請求は認められない。
(分量不明。5頁目には入っていない)
設問2のタテ1では、前半では「Xにとって不利益変更だ」と書きながら、後半では何を思ったか「Yにとって利益変更だ」とウラの表現で書いてしまった。設問3のタテ1は書きながら混乱していたので記憶が定かではない。設問3のタテ2の(2)の「Yの言い分④のとおり」という記述はYの言い分④の意味を誤解した結果。文意不明瞭な文章を再現するのは至難の業だと感じる。