過失犯のあてはめについて | ついたてのブログ

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弁護士一年目です。ついたての陰から近況をつづります。

過失とは予見可能性・予見義務、結果回避可能性・結果回避義務を内容とする注意義務違反です(平成22年採点実感)。

そして、構成要件段階では一般人の能力を基準に判断され、責任段階では当該行為者の能力を基準に判断されます。

以上を前提として、新司平成22年の問題の乙の投薬行為、丙の乙への薬の手渡し行為について当てはめてみたいと思います。なお、信頼の原則に関する記述は省略します。

1 乙の投薬行為について
(1)構成要件的過失
ア 予見可能性
乙は看護師であり仕事内容に患者に投薬することが含まれる。そして誤投薬すれば患者が死亡することがあることは予見可能である。よって予見可能性がある。
イ 予見義務
予見可能性があるので予見義務がある。
ウ 結果回避可能性
投薬前に薬が処方されたものに間違いないかどうか確認すれば、薬のラベルには薬名が明記されていたのだから、薬が処方されたものでないことに気付き、誤投薬を防止でき、死亡結果を回避できる。よって結果回避可能性がある。
エ 結果回避義務違反
結果回避可能性があるので、投薬前に薬が処方されたものに間違いないかどうか確認するという結果回避義務がある。投薬前に薬が処方されたものに間違いないかどうか確認せずに投薬した行為は結果回避義務違反の行為である。
オ よって構成要件的過失がある。
(2)責任過失
ア 予見可能性
通常の看護師より乙の予見能力が低いと認められる事情がない。よって予見可能性がある。
イ 予見義務
予見可能性があるので予見義務がある。
ウ 結果回避可能性
乙は、VがD薬に対するアレルギー体質を有することを、Vの入院当初に確認してVの看護記録にも記入していたが、そのことを失念していた。そうだとすると、投薬前に薬が処方されたものに間違いないかどうか確認して、薬が処方されたものでないことに気付いたとしても、VにD薬を投与しても問題ないと考えてD薬を投与する可能性があり、誤投薬を防止できず、死亡結果を回避できず、結果回避可能性がないとも思える。しかし、薬が処方されたものでないことに気付けば、VにD薬を投与してよいかどうかを医師や薬剤師に確認することを乙に期待することができる。よって投薬前に薬が処方されたものに間違いないかどうか確認すればVの死亡結果を回避できる可能性がある。よって結果回避可能性がある。
エ 結果回避義務違反
結果回避可能性があるので、投薬前に薬が処方されたものに間違いないかどうか確認するという結果回避義務がある。投薬前に薬が処方されたものに間違いないかどうか確認せずに投薬した行為は結果回避義務違反の行為である。
オ よって責任過失がある。

2 丙の乙への薬の手渡し行為について
(1)構成要件的過失
ア 予見可能性
丙は薬剤師であり、薬剤師は薬について専門的知識を有する。医者から処方された薬と違う薬を看護師に手渡して看護師が患者に投与すれが患者が死亡するおそれがあることを薬剤師は予見できる。よって予見可能性がある。
イ 予見義務
予見可能性があるので予見義務がある。
ウ 結果回避可能性
看護師に手渡す薬が医者から処方された薬に間違いないかどうか確認すれば、薬のラベルには薬名が明記されていたのだから、看護師に手渡す薬が医者から処方された薬でないことに気付き、誤った薬を看護師に手渡すことを防止でき、死亡結果を回避できる。よって結果回避可能性がある。
エ 結果回避義務違反
結果回避可能性があるので、看護師に手渡す薬が医者から処方された薬に間違いないかどうか確認するという結果回避義務がある。看護師に手渡す薬が医者から処方された薬に間違いないかどうか確認せずに看護師に薬を手渡した行為は結果回避義務違反の行為である。
オ よって構成要件的過失がある。
(2)責任過失
ア 予見可能性
通常の薬剤師より丙の予見能力が低いと認められる事情がない。よって予見可能性がある。
イ 予見義務
予見可能性があるので予見義務がある。
ウ 結果回避可能性
通常の場合より結果回避可能性が低いと認められる事情がない。よって結果回避可能性がある。
エ 結果回避義務違反
結果回避可能性があるので、看護師に手渡す薬が医者から処方された薬に間違いないかどうか確認するという結果回避義務がある。看護師に手渡す薬が医者から処方された薬に間違いないかどうか確認せずに看護師に薬を手渡した行為は結果回避義務違反の行為である。
オ よって責任過失がある。