『橋に巣くう鬼女の話』 今昔物語 巻27第13話より
12月2日
ジイタンだよ
今日は『橋に巣くう鬼女の話』というお話しの第一回だよ。
むかしむかしね、あるところに大きな川が流れていてね、その川に一つの橋が架かっていたんだって。
ところがいつのころからかその橋を渡る者がいなくなり、みんなは少し遠回りになるんだけど、別の橋を渡るようになっていたそうだよ。
なぜそうなったのか、はっきりしたことを知る者はいないんだけどね、うわさでは鬼が出るとか幽霊が出るとか言われているらしいんだって。
でね、その地方を治める守の家来たちが、何かのお祝いで酒盛りをしていたとき、その橋の話しが出たんだよね。なぜあの橋は誰も渡らないんだろう、鬼が出るとか言うけれど見た者はいるんだろうか、などとね。
するとね、いささか軽薄だけれど明るくてみんなに好かれている若い男がね、酔った勢いで「よし、じゃぁおれさまが渡って見せようか、なーに鬼が出ようが幽霊が出ようが、殿様が可愛がっている鹿毛馬(毛の色がこげ茶色の馬のことだよ)を貸してくれたなら、ササッとひと渡りよ」って言うんだよね。眼はもうどんよりしているよ。そうとう酔っているね。
それを聞いたみんなはやんやとはやし立てたよ。「それはいいそれはいい大いにやるべし」とか「だいたいわざわざ遠回りをする必要なんかない。よしやってくれ」などと言ってね。「お前は勇気がある、うん、日ごろからただ者ではないと思っておったぞ」なんておだてたりする者もいるよ。
まだつづくよ