円安ドル高の一番の原因は米国の通貨政策 | 株えもんのブログ

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こんにちは



1990年以降の日銀の金融政策を書こうと思いましたが、情報が不十分なので、為替の話にします。


 前回の記事で、1960年代以降、アメリカは日本に対する貿易赤字で自国の産業界が打撃を受けていると主張、日本政府に輸出主導から内需経済主導に力を入れるよう強硬に主張。



 当時の田中角栄総理は過剰流動資金が渦巻く中、1972年(昭和47年)に日銀に公定歩合引き下げを要請し強行しました。


 このため物価、株価、不動産価格が騰勢を強め、さらに1973年に起こった石油ショックは物価上昇に歯止めを効かなくしてしまい、1974年の消費者物価は前年比で25%と狂乱物価と呼ばれる事態となりました。



 その後、日銀の金融引き締めの遅れが狂乱物価を招いたと、世論から糾弾されました。


 その結果、石油ショック以降の日銀の金融政策は、インフレを押さえ込むことに重点を置くスタンスとなり、民間銀行に供給する資金量を示す、マネタリーベースの伸び率を石油ショック以前と比べて半分にしてしまいました。



 為替レートを決める要因ですが、長期的にはその国の物価の趨勢が大きな要因となります。


 物価を決める大きな要因はモノとお金のバランスだといえます。金融を緩和してお金を多く出すとインフレに、お金を出さないとデフレになりやすくなります。



 お金をたくさん出した国の通貨は安くなり、少ないと高くなるということです。日本は1973年から変動相場制に移行しましたが、長期のトレンドで円高になっているのが理解できます。


 ここからが、今回の記事の本質ですが、変動相場制に移行してから39年間、円高ドル安傾向となっていますが、過去には数年間にわたり円安傾向の時期もありました。



今回は円とドルについての話です。ほかの通貨を加えるとややこしくなるので


 円安傾向になった時期ですが1980年代前半と、1995年~98年があります。この2回の円安の原因は「アメリカのドル高政策」によるものです。



 まず、80年代前半ですが、1978年(昭和53年)秋に176円台まで上昇した円は1982年(昭和57年)秋には1ドル270円台まで下落しています。


 この時期、アメリカのレーガン政権がインフレを抑えるために、金利を高くして米国に資金を呼び込む。高金利と通貨高で景気が悪くなるため、減税をセットにして行われる「レーガノミクス」と呼ばれる政策が採られた。



 当時、日本と米国では常に長期金利が5%前後開いていたので、日本の機関投資家はこぞって米国債に投資しました。


 例えば30年物の米国債だと金利差が5%あれば、償還まで保有すれば、ドルが3分の1以下に下落しない限り損はしない計算になります。



 しかし米国経済は、高金利とドル高でインフレは退治できたものの、ソ連との軍拡競争で国防費を積み上げたことや、高いドルを嫌い米国企業は海外に生産拠点をシフトしたため、貿易赤字が増える双子の赤字が深刻な状態となった。


その結果、1985年9月に有名な「プラザ合意」となりこれ以降は急速な円高へと進みます。




 次に1995年から98年の円安ですが、米国財務長官のルービンがクリントン大統領に働きかけて行われました。


 1995年4月に79円75銭まで上がった円は、日米欧の中央銀行による協調介入や、日本は金利を下げるなどの政策で円は下落に転じ、1998年8月11日に147円64銭まで下落を続けた。この3年間で円はほぼ半値になっています。



 1997年あたりから、円安が加速度的に進み始めたため、日銀は再三にわたり円買いドル売りの介入を実施したが効果はなかった。


しかし、この円安トレンドは思わぬ形で終焉してしまいました。


1998年秋にロシアが国債のデフォルトを宣言、市場は大混乱に陥り、新興国から安全度の高い先進国に資金が逃避する質への逃避が起こった。


 これを受け大手ヘッジファンドのLTCMが経営不安に陥りました。LTCMは欧米の金融機関から50億ドル近い出資を受け、それに25倍以上のレバレッジをかけていた。



 さらに1.25兆ドルに達する取引契約を世界中の金融機関と行っていたため、同社が破綻すれば世界恐慌になりかねない事態となった。


 LTCMはニューヨーク連銀が世界の主要金融機関に奉加帳をまわして資金を融通したことで、最悪の事態は回避されました。



 円相場ですが、この混乱で当時活発に行われていた円キャリートレードが質への逃避から、一斉に巻き戻しが行われたため、8月に147円台だったレートは10月19日に113円81銭まで上がり、2ヶ月で30円以上も急騰してしまいました。


似たようなケースは、2006年から08年にかけても起こりました。


この他にも1988年~90年にかけても円安傾向の時期がありまして、いろいろ調べてみたが原因は特定できていません。



アメリカの現在の金融政策は低金利・ドル安となっています。過去の政策を検証する限り、いずれはインフレ懸念が台頭し、ドル高政策への転換が予想されます。いつごろになるのかは予見できませんが将来への投資の一助にはなると思います。