不安に怯えるマネーが安全資産に集中 | 株えもんのブログ

株えもんのブログ

株式投資や経済の話です


株えもんのブログ


 国際金融市場で金利のひずみが大きくなってきた。安全資産とされる日米の国債に資金が流入する一方、欧州や新興国では金利が上昇。貸し手が金利を支払う「マイナス金利」や、短期と長期金利の逆転といった異常な事態が起きている。リスク回避が加速して金利のひずみが拡大すれば、実体経済への影響もけねんされる。



 欧州債務問題が長引くなか、投資家は日本国債を安全とみて購入を増やしている。外国人の国債保有は最近1年間で30%も増加。財務省の国庫短期証券(TB)入札では、需要の強さを示す応札倍率が19日に8倍を超えた。


 日本国債を上回る規模で投資マネーが流れ込んでいるのは米国債とドイツ国債。いつでも現金に換えられる短期国債の需要が強く、今月に入って1~6カ月物がマイナス金利で取引されている。それでも米独の短期国債が買われるのは価格下落のリスクが小さく、安全性が高いため。



 債務危機の震源地である欧州では、金のリース市場でもマイナス金利が続く。金の借り手が金利を支払う仕組みだが、今は欧州銀行が保有する金を貸し出し、さらに金利を払ってドルを受け取っている。銀行間でドルを調達しにくい状況が異常な事態を生んだ。


 欧州危機で国債の信認が揺らぎ、投資資金をより安全な資産に移す動きが広がった。影響を受けているのは新興国だ。



 通常なら償還期間が長いほど、国債の利回りは高い。だがタイでは2年物の利回りが5年物を超える水準まで上昇。ポルトガルなどに加え、インドでも一時は2年物国債の利回りが8%台後半に上昇し、10年物国債の利回りを上回った。


苦渋の利上げ



 長短金利の逆転が起きているのは、投資資金の引き揚げに備え、期間が短い国債を売却して現金を確保する動きが相次いでいるからだ。資金流出や自国通貨安にさらされるハンガリーの中央銀行は20日、景気低迷にもかかわらず、2カ月連続の利上げに踏み切った。


 優良企業の社債利回りが国債を下回る信用力の逆転も起きている。


 

イタリアの電力大手エネルの5年債の利回りは5%台前半。6%を超えるイタリア国債の利回りを大きく下回る。


スペインの携帯電話大手テレフォニカの1年物社債の利回りも約3.2%と、スペイン国債より0.1%程度低い。通常ならば各国の市場で最も信用力が高いのは国債だが、債務危機で国債に過剰な売り圧力がかかっている。


 欧州危機が金利体系をゆがめる事態を招いたのは、従来の危機とは違って金融市場に資金があふれているからだ。リーマン・ショック対応の金融緩和などで、世界のドル流通量は6兆ドル(約470兆円)を超え、最近5年間で2.5倍に膨らんだ。投資家が一斉にリスク回避に動けば、特定の国に巨額の資金が集まって、金利が極端に振れやすくなる。



 アジアや中・東欧の新興国は海外の資金を使って生産設備の増強などを進めてきた。日米などの特定国に投資マネーが偏れば、成長分野に十分な資金が回らず、世界経済が減速する恐れがある。


▼マイナス金利 債券取引では売買価格が上昇すると、満期までの投資収益を示す年平均利回りは低下する。市場の混乱などで特定の国債に人気が集中すると売買価格は急上昇する。この価格には上限がないので、一定の水準を超えると利回りは0%を下回る状態に陥る。計算上は投資家が金利分を払って購入するのと同じことで、いわば損を覚悟で投資することを意味する。投資による利益より現金化のしやすさを優先する場合などに起きる。リーマン・ショック時の米国でも短期国債でマイナス金利が発生した。



▼短期金利と長期金利 お金の貸し借りで、資金のレンタル料に当たるものが金利。金利のうち、期間1年以下の貸し借りに使うものを短期金利、それより長いものを長期金利と呼ぶことが多い。通常は、貸し借りの期間が短いほど確実に資金が返還される可能性が高く、金利は低めに抑えられる。日本の長期金利でも2年物の0.1%台に対して30年物は2%近くに達する。金利を期間ごとにグラフにすると曲線(イールドカーブ)になる。


国債の人気が低迷すると、政府は高い金利を付けてでも買ってもらおうとして金利は上昇する。財政不安で、近い将来の国債償還がスムーズに行われるかに警戒が高まると、より期間の短い債券を売る動きが強まり、「長短逆転」も起こる。ポルトガルでは2年物金利が10年物を上回っている。日本では1990年代の初頭に日銀がバブル退治と短期金利を高めに誘導したために、金利の長短逆転が起きた。






株えもんのブログ