新興・中堅のセンサー会社が製品の用途拡大を急いでいる。省エネ性能の高い自動車や家電製品、分散型エネルギー機器などの普及に伴って、温度を管理したり、気体濃度を感知したりするセンサーの重要性が増しているため。
各社はきめ細かくエネルギーを管理するキーデバイスであるセンサーの多様化と販路、生産能力の拡大で成長を図る。
まず上場企業の動向ですが、世界中で使用される温度センサーで約3割のシェアを持つ芝浦電子(6957)は今年に入ってから海外営業の人員を増やした。
欧米の自動車メーカーのハイブリッド車製造が拡大。1台に搭載する温度センサーの数が増えることが確実なため、需要の取り込みを急ぐ。
ただ同社はタイの生産拠点が先日の洪水被害から復旧しておらず、需要拡大で攻勢をかけようとした矢先、水をさされた格好となってしまいました。なお同社の大株主に竹田和平氏(31万株、発行済みの4%)が名を連ねています。
次に小型温度センサーを製造するSEMITEC(6626)は霜の付着を確認できるセンサーを開発、来年から国内家電メーカーが生産する冷蔵庫への搭載を始める。
冷気口にセンサーを設置して、霜が付いたことが確認されれば、除去するためのヒーターが作動する。これまでは一定間隔で繰り返し加熱していたが、センサーで制御することでヒーターを使う回数が減り、電力使用量が減る。
同社はOA機器、産業機械、家電など幅広く取引先を抱えていますが、同業の芝浦電子と比べて利益率が悪くなっています。顧客の要望に応えるためカスタム品を広く手掛け高コストになりがちなことや、海外進出が遅れて為替差損が出やすくなっていることなどが考えられる。
生産段階のトラブルを減らし、効率向上を図る産業用センサーを手掛けるオプテックス・FA(6661)は国内4カ所の営業拠点を2年後までに10カ所程度に増やす。
増強した営業部隊は産業用から太陽電池やリチウムイオン電池など成長分野でのセンサー売り込みに投入して、さらなる成長を目指す方針。
非上場企業で目立つのは、自動車などに搭載する温度センサーを生産する大泉製作所(埼玉県、久保田達夫社長)です。セ氏1000度までを測れるセンサーを開発、来年度にも商品化します。
家庭用燃料電池や大型蓄電池などの普及で、高温センサー需要の拡大が見込まれるため。従来のセンサーは400度程度までしか測れなかった。車の排気から大気汚染物質の微粒子を取り除く過程での利用も期待する。
前年度106億円だった売上高は3年後に140億円に増える見通し。温度センサーの素子を作る青森県内の工場では生産体制を増強中。センサーの表面にガラスのカバーを付ける装置を増設したほか、センサーの素子を切り出したり、選別したりする子会社の工程にも新型機を投入する。
温度管理以外のセンサーでも用途や販路、生産能力の拡大を図る動きが広がる。ガスの感知センサーを作るエフアイエス(兵庫県、小笠原憲之社長)は二酸化炭素(CO2)を感知するセンサーの販売を増やす。
主に中国メーカー向けで、室内のCO2濃度の上昇を感知すると運転を始めるファンやエアコンへの搭載を見込む。
芝浦電子の温度センサーの製造ライン(福島県本宮市の工場)