マリーヌ姫は、あまり論理的に考えるのは、得意ではありませんでした。
感情が先行してしまうのです。
いつもイライラしていたり、そして自分の思い通りにならないと怒りだして手がつけられなくなったりしました。
自分で感情をなんとか制御しようと思ってはいるけれどなかなか難しいのです。
子供の頃はかなりヤンチャでケンカをすることもありました。
大人になって、これでも少しは、落ち着いたのです。
それは、両親というより、ばあやの存在が大きかったのです。
そばについて、世間のことを教えてくれたのもばあやですし、しつけをしてくれたのもばあやです。
マリーヌ姫は、ばあやに頭が上がりませんでした。
そのばあやに彼のラピスさんと付き合ったら、どうなるか分析をしてみたらと言われたのです。
マリーヌ姫は考えました。
私とラピスさんがこのまま付き合うと、
ラピスさんは、もしかしたら、アナウンサーになる夢を諦めなくではいけないかも。
いいえ、私と付き合っているからこそ、難関を突破して、アナウンサーになれるかもしれないわ。
アナウンサーの妻?
これってどうかしら。
私の夫となる人はどういう職業がいい?
ウ~ン
そういえば、アメリカのドラマに弁護士を主人公にしたものがあったわ。
かなり稼ぎがいいし、セレブを相手にして、
かっこいいのよ。
ラピスさんだったら、
頭がいいから、
あのドラマに出てくるような弁護士になれるに違いない。
あのドラマは、ニューヨークが舞台になっていたわ。
ニューヨーク!
とってもいい響き!
ラピスさんに弁護士になってもらって、
セレブのような大邸宅で暮らすのよ。
そして、国民に、
私はこんないい暮らしをしています!
と自慢するの。
そうすれば、この宮殿からお嫁に行っても、
釣り合いはとれるわ。
そしてラピスさんのお母様の疑惑は、
単に疑惑でしかない。
推定無罪という言葉があるでしょ。
確か映画にもなっていたじゃない。
そしてあのラピスさんのルックスの良さと言えば。
国民も一緒になってメロメロになって、
雑誌にいっぱい載りそうよ。
今週のファッションは、こうだったとか。
注目の的になるに違いないわ。
マリーヌ姫は分析ではなくて、妄想の世界に入ったようです。
もう、マリーヌ姫の中ではラピスさんと結婚するということが前提にあるようです。
このことをばあやに伝えました。
するとばあやは、
「姫様、分析と言ったのに、
これでは、自分のいいようにしかとってないじゃないですか。
悪いパターンも考えなくては、なりませんよ。」
「悪いパターン?」
そうね。
悪いパターンというと、
私とラピスさんが結婚したとして、
何も悪いことなんて起こらないわ。
私とラピスさんさえ仲良くしていけば問題ないわよ。
あるとすれば、
ラビスさんにとって私と結婚することによって、
環境が変わって、注目される存在になることかなぁー!
でも、その代わり王室とつながることができるし。
ラピスさんにとっては、いいことしかないと思うわ。
ただ、四六時中監視されるから、息が詰まるかも。
姫様、それでは国民にとってはどうなのですか?
国民から?
だって、結婚は、私の問題よ。
国民の問題ではないわ。
国民だって、私が幸せならそれでいいと思っているはずよ。」
「本当にそうですか?
国民は、ラピスさんのお父様が自殺した疑惑があるのに、結婚について祝福できますか?
ばあやは、そんなお家と結婚するなんて、反対です。」
「ばあや、結婚は、家と結婚するわけではないわ。
ラピスさん自身が、犯罪を犯したわけではないわよ。」
「確かにそうです。
でも、ラピスさんは、彼女の両親に黙って、車を買ってトラブルになっています。
そんな方と一緒になってお金目当てで、
すべてを失ってもいいのですか?」
「イヤだぁー!
はあや、そんなことあるわけないじゃない?」
「姫様、世の中には、ヒモという職業があるのです。」
「ヒモ?
ヒモってあのロープの縛るひものこと?」
「いいえ!
ヒモとは、女を稼がせて、自分は遊んで働かない男のことを言います。」
「それをヒモと言うのね。
だって、ラピスさんは、アナウンサーにむけて勉強しているわ。
ヒモになんてなるわけないじゃない?」
「今は、まだ、学生ですから、確かにわからないです。
ただ、ばあやの見立てでは、その可能性はあると思います。」
「それは、ばあやがこの交際を反対だから色メガネて見ているだけよ。」
「いいえ、
前の彼女との交際でのトラブル!
これを考えたら、色メガネではありません。
姫様こそ、今は恋に夢中になって、
相手のことが見えなくなっているのです。
ばあやは、もっと誠実な人を選んでほしいです。
お相手の男性は姫様の言いなりなんてならなくていいのです。
それよりも姫様のことを本当に思ってくれる人を選んでほしいのです。」
「ラピスさんは、私のことを思ってくれているわよ。」
「私にはそうは思えません。
自分の過去やお父様のことで、姫様のを思う方なら、
自分はふさわしくないと、思って辞退するはずです。
それをしないと言うことは、
お金目当てと思ってもいいと思います。」
「ばあやったら、いくらなんでも、それはひどすぎるわ。
私、しばらく一人で考えてみるわ。」
マリーヌ姫は、ばあやの言葉を聞いて、もう一度考えてみることにしました。
ばあやの真剣さがマリーヌ姫に伝わったのです.
さてさて、この姫様の運命は一体どうなっていくのか。