倒産業 ~驚くべきヤクザ稼業の最新「シノギ」の手口とは~



「倒産業」という言葉をご存知だろうか。


聞き慣れない言葉だがこれはヤクザ稼業の最新の“シノギ”の手口の一種である。


“シノギ”とはヤクザ者が行う経済活動全般を指す隠語であり、主に「みかじめ料」と言われる飲食店等の用心棒代、競馬などのノミ行為や賭博と売春である。他にも、拳銃密売、管理売春から債権回収、不動産売買など表と裏で誰も思いつかないような収益が上がる「仕事」を考えだし、実践してきたその道のプロが、そのスキマ的金儲けのテクニックを持つ彼らの考え出した最新の手口がこの「倒産業」なのである。


一体どんなものなのか、一言でいってみれば、一見して普通の倒産のように見えるが実際はとりこみ詐欺の一種なのである。




一般的なやり方として、最初は少額の取引を行い、商品代金も約束の日にきちんと支払う。少しづつ取引金額を上げていき、注文回数を増やし業者からの信用を得、そして多額の取引を行ったところで支払いをしなくなる。卸業者が代金を支払うように請求しても、始めは何かと言い訳をし、だんだんこれまでの態度を手のひらを返したかのように変貌し、脅かしたり怒りだしたりしてくる。そして、最後には連絡がつかなくなり、痕跡を残さず行方を眩ませるのである。
「倒産業」の場合、始めから一気に多額の仕入れを行い、計画倒産を目的として取引を行う手口が多い。その場合、いきなり連絡が取れなくなるので、商品や代金を取り戻すことは非常に困難なのである。




通常なら取引開始後は現金取引で信用を高めていきそれから手形取引というのがセオリーだろうが、不況の今般いきなり手形でもいいから取引をしたいという業者が山のように存在するのだ。このような業者が格好のターゲットとなってしまう。




会社設立の場合、代表として表舞台に登場する人物は素人の方が多いようだ。一見した限り、これから会社を興し、事業をやろうとしている真面目に見える好人物に取引を依頼されたら、果たしてそれが計画倒産詐欺だと見分けがつくであろうか。




始めの何ヶ月間か数年は取引をし、ある時点で破産申立をする。負債額は雪だるま式に増え、数十億などに膨れ上がる場合もあるとのこと。会社資産は少額しかない場合がほとんどな為、負債を債権者に分配することは不可能といっても過言ではないのである。


このような被害に遭った場合は、裁判で訴えると訴訟を起こしたときの裁判費用と、損害額が同じくらいになるように考えられており、被害者が泣き寝入りするしかなくなるのが実情なのだ。




会社設立に掛かる費用、表の社長役への配分などを加味したとしてもいわゆる「利益」が半分はあがるらしい。十数億円の負債ならおよそ五億円だ。このように倒産業はヤクザ稼業にとっては安全で、実入りの大きい商売なのである。




それではこのような美味しい話は誰でもできるのか?それは否である。


なぜならば取引先企業にも“ヤバイ筋”が絡むことが多々あるからだ。こういったトラブル回避する能力、先述した表立った社長役を始めとした企業の社員となる人物を集められる強力なコネクション(自分の組員を使ってはすぐにばれてしまう)、計画倒産までの時期ビジネスを回せるだけの豊富な資金力と体力、諸々が必要となってくる。


一応法に抵触はしていないギリギリのラインの為、全国の大手組織を持つ組はほとんど手を染めているとのことである。あくまで民事的に債権者会議などを開き、懸命に努力したが倒産してしまったという状態に持っていくことにより何も訴えられる恐れはなくなってしまうのだ。




素人がその道のプロを相手にしたらもうお手上げである。ではこうった計画倒産被害を防ぐ為に事前に見抜ける方法は全くないのであろうか。


それにはまず取引先の経営者が信用できる人物かどうかを確かめるというのが大前提である。


方法としては、1)実際に相手方のオフィスに出向き資産状態を確かめる、2)インターネットから人物名や会社名を調べ情報を集める 3)専門会社に依頼し信用調査をするなどがある。




更に、新規の取引先が突然多額の取引を求めてきた場合は計画倒産の恐れがある。あまりにも条件の良い取引を求めてきた場合や逆に支払いを後払いに変更してきた場合などは


要求を鵜呑みにせずに専門会社に依頼して被害額を最小限に抑えることが必要だ。


個人として見分けるには限界があるので専門の知識を持った人物なり企業なりにアドバイスを求めるのが最善の策なのであろう。




不景気の中、資金を稼がねばならないヤクザ稼業も楽ではない。ヤクザもビジネスマンも“頭を使う”という点では同じなのである。


ヤクザの“出世”の為には従来の武闘派で身を立て名を揚げる方式から、こういった知能を使いより多くの資金を稼いだ者が台頭するというように事情はシフトしてきている。


今後も知能派ヤクザが様々な手口で活躍していくだろうことは間違いないようだ。


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