はーーーぁ (''◇'')ゞ

今回の中盤で や~っと、へんてこアクシデントをハナシに盛り込んだ超メイン趣旨が出せました🤪

(ちなみに、その超メイン趣旨とやら(www)の詳述、次回にも若干続きますです😓)

 

「第9回以降さんざ引っ張っておいて、そんなバカげた理由でハナシをヘンテコ横道に脱線させたんかぁ~い!😡」と、みなさまのお怒りを買ってしまいましたら、まことに申し訳ございません <(__)>


 

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〖あ…まずい〗

後方から近づいてくるオスカルが鏡に映り、アンドレは鏡からパッとを離した。

 

クッとを仰向けて目頭をつまみ、溜まった涙を抑え込んで自嘲する。

〖ふ・・・。おまえの姿をまたはっきり見られるなんて思ってもみなかったから、我を忘れちまった。

つくづくばかだな、おれは。

鏡面のおまえを撫でまわしてるだなんて、変態だと思われちまう〗

 

 

〖え……? おまえ、天を仰いでい…る?〗

仰向いたアンドレのシルエットを見て、オスカルの胸の中で小さな懸念がさざめいた。

〖なぜだ? 自分のものでない体を鏡で思い知らされて、打ちのめされているのか?

……だめだ、アンドレ! 打ちのめされている場合ではない。

今は、共に力を尽くして乗り越えねばならん時なのだぞ〗

 

ひとまずは懸念を押し隠し、平静を装って彼に近づく。

「ど真ん中に突っ立って何をしている。

座るから少しよけ

彼の脇まで来たオスカルは、右半身敢えて無造作に自分の体を押しやり、自分の椅子を鏡のさらに近くに寄せた。

 

 

一方、ぶっきらぼうに押し退()けられたアンドレは、、、

心地よい笑いがふつふつと湧き上がってきて、ククッとの奥で笑いを弾けさせた。

〖アフロディーテさえ歯噛みしそうな美貌のクセに、そんなことにはまるで無頓着。

でもって、信念にはとことんまっしぐら。

おれはそんなおまえが大好きだぞ、オスカル〗


「何がおかしい」

彼の可笑しそうな笑いに、懸念が溶け、強張っていたの力が抜けていく。

 

「あ、いや。おまえさぁ……ほんのここ数日 ちょっとばかり視力が落ちてた間に、妙に美人になったと思ってさ。

そんなおまえを見られるなんて、体が入れ替わったのも ちょっとした怪我の功名に思えてな」

本音半ウソを巧みに織り交ぜた模範解答である。

 

「なんだ、おまえまで」

「へえ、ほかの誰かにも言われたのか?」

 

何心もなく数え上げるオスカル。

「あー…、母上…ばあや……侍女たち、そんなところだ。

ふん、何ということはない。

深酒をやめたから、血色がよくなっただけのことだろう」

 

だが…そこでふっとが薄紅く染まった。

「……なのに…」

彼がしたのと同じように、鏡面の彼の顔でなぞる。

 (まったく以て、行動が写し鏡の如く似通っているふたりである)

 

「それなのに…なぜなのだろう……アンドレ…

美しい…と、おまえに言われると胸が高鳴ってならない……

 

オスカルは束の間考えてから、消え入りそうな小さな声でつぶやいた。

「もし…もし、わたしが これまでより美しく見えるとしたら……

それはきっと…おまえといるのがたまらなく幸せ…だから…だ」

 

「オ…オスカル……」

一旦は抑え込んだが、一筋だけツーっとを伝う。

 

...本来ならば、ここで、ヒシとばかりに抱き合って唇を貪り合っているところだ。

……がっ、どちらも目の前の自分の姿を見ると、どうにもそんな気になれない。

期せずして、ふたりは心の内で叫んだ。

〖早く元の体に戻りたいっっ!!〗

 

アンドレは ぎこちなくを背け部屋隅へと歩き出した。

「先に座っていろ、オスカル。

落ち着いて話せるよう、すぐにここを整えるから」

 

 

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オスカルが鏡像にの焦点が合う位置に腰を落ち着けると、アンドレが室内常備のワゴンをふたりの間に据え、邸から持参したレモン水をグラスに注いだ。

(下図参照🤭)

顔画像は愛蔵版『ベルサイユのばら』第2巻185ページからお借りしました

 

 

オスカルがレモン水で喉を潤し、話の口火を切る。

「よし、では今度こそ検討を始めよう。

まずは第一要件、入れ替わってしまった体を元に戻すことだ」

 

人差し指でトントンとをつつく。

「どう考えても、原因は派手に額をぶつけたことだろうな。

だが、だからといって……」

「もう一度ぶつければまた入れ替わるという保証はない」

「そう、その通りだ。

加えて、激しく頭をぶつけるというのは、脳に損傷を与える危険を伴う。

焦ってむやみに試してよいことではない」

「ああ。となると、やはり……」

「やむを得ん。第二要件、《もし元に戻れなかったら今後どうするか》をしっかり固めておいてから、慎重に条件を整えて実行するしかないだろう」

「まあ、そうなるな」

 

冷静な会話の裏で、ふたりともが心の内で舌打ちした。

〖くそっ! 早く元の体に戻りたいのにっ‼〗

 

 

オスカルが眉間にしわを寄せた。

「直近の課題は、午後、全隊員を招集して行う、パリ出動の告知。

次が、今夕から明朝にかけての邸での行動。

そして… 最も綿密な事前対策が必要となるのが、あすのパリ出動だ

 

オスカルの最後のひと言を捉えて、アンドレが ここぞとばかりにダメ押しをかけた。

「つまり、おまえの体  おれの体、 両方とも、パリ出動が大前提ってことでいいんだな?」

「えっ?」

「いまさら何を驚くことがある?

いいか? 理由は2つだ。

その一。隊員たちは、隊長》の指揮でなければ動く筈がない。

その二。お・ま・え・が、隊員たちだけを出動させて、自分は兵営か邸に居残りなんて できる筈がない。

……だろ?」

 

を噛むオスカル。

「それはそうだが……。し、しかし……」

「いくらおまえのマネがうまくても、おれには軍の指揮なんて無理…って、か?」

「違うっ‼ おまえなら、必要とあらばできることはわかっている!

わたしの習得した兵学はすべておまえにも学ぶよう強要してきたし、おまえはわたしの傍らで軍事のなんたるかをつぶさに見てきた!」

「ははっ、確かにおれって典型的な門前の小僧だよな」

「まぜっかえすな‼

事実、おまえは、機略・判断力 そして 胆力・決断力・実行力で以て、並みの将校なんぞを凌ぐ働きをしてきているっ!

サベルヌでも…、ぱっパレ・ロワイヤルでも……、モンテクレール城でも…、幾多の事件でも…」

「それってほとんど、おまえが窮地に陥った時の 火事場のばか力だったけどな」

「いちいち話の腰を折るなっ!

つっつまり、わたしが言いたいのは───

たとえ その力量があろうとも……、それでもっっ!

このような情勢下での出動を指揮するなど…そのような非情な役回りをおまえに背負わせたくはない、ということだ‼」

 

「オスカル…。言わせてもらうが───」

アンドレとて、ここ退()わけにはいかなかった。

「こんな情勢下で出動を指揮するなんて、そんなつらい役割をおまえに背負わせたくないのはおれだって同じだ。

だったらな、オスカル。体が入れ替わったのが もっけの幸い。

おれがその役目を引き受けるのは望むところだ。それに──」

彼は、鏡の中のオスカルを凝視した。

「つらいだけじゃなくて、もし身の危険に迫られるような事態になったら、おまえの体を護ることにかけては、おまえ自身よりおれのほうが ずっと必死度が高いと思うぞ」

 

「あ……」

圧倒的な愛情の奔流がオスカルを飲み込み、息もつけなくなる。

 

 

─── 長い…長い沈黙 ───

 

 

「わかっ…た。隊長の役目はおまえに任せる。

その代わり、目のきかないおまえの体は、わたしが必ず護り抜く」

「ああ、頼む」

 

 

「ついては、おまえの体を護るための策だが……」

オスカルが語調を改めて切り出した。

「妙案がある」

「うん?」

 

「まず、わたしはパリまでは、おまえの秘蔵っ子コンフィアンスを駆っていく。

視力に不安がある身には、コンフィアンスの利発さが非常に頼りになるからな。

次いで、テュイルリー宮広場に着いたら下馬してコンフィアンスを隊員に預け……」

「下馬する……なるほどな。いい選択だ」

「パリの裏道に詳しい隊員数名と共に、目立たぬ道筋を採ってパレ・ロワイヤルへと走る」

 

アンドレは驚きのあまり がばっと立ち上がり、ワゴンを蹴り飛ばしそうになった。

「はぁぁ~っ、パレ・ロワイヤルぅ!?」

 

彼の驚愕など どこ吹く風で、オスカルは平然と続ける。

「そうだ。パレ・ロワイヤルはテュイルリー宮広場の目と鼻の先、裏道で多少迂回したところで、徒歩で十数分かそこらだ。

パレ・ロワイヤルに着いたら、オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェの指示だと告げ、マダム・クリスティーヌに面会を乞う。

マダムの手を借りて活動家諸君と連携をとるためだ。

そうやってお前の身の安全を確保した上で、隊の状況も逐次確認し、ばあやとベルナールの到着を待つ。

これが大筋だ」

 

 

アンドレはヘタヘタと腰を下ろし一気にカラカラに干上がった喉にレモン水を流し込んだ。

「大筋って、おまえ……

無謀というか荒唐無稽というか……」

 

オスカルはふふっと不敵な笑みを洩らした。

「そもそも、わたしたちが今陥っている状況が荒唐無稽以外の何ものでもないだろう。

むろん、この策をうまく運ぶためには、隊員たちへの根回しを始め、今日のうちにいくつもの入念な事前準備をしておかねばならん。

これからそれを詳しく説明するから、心して聞け」

レモン水のグラスを取って、鏡面の彼の姿に向かって掲げる。

もしそれまでに元の体に戻れていたら、おまえ自身がこの策を実行するのだからな

ああ、それと……」

 

グラスをアンドレが持ってい(から)のグラスに軽くチンと当て、ニッと口角を上げる。

「マダム・クリスティーヌは、実に心のお強い見上げた女傑だ。

心配には及ばん

 

 

 

 

『さらば! もろもろの古きくびきよ -13-』に続きます