この回も、一語一語 文字にするたびに、なんか納得いかなくてひどく手こずりました (/ω\)

それでも...

あまり需要のない回だとは重々承知しておりますが、かなり短こうございますので、いちお、ご一読だけでもしていただけますと、ほんっとーにうれしいです。

でもって、「はあ? 呻吟したって割に、こんなトホホ内容しか書けんかったん? キミが書こうとするなんて百万年早い場面だったね🤭」と、どうか嗤ってやってくださいませ😓

 

なお、、、

アラン班長が どの中隊の第一班 班長なのかわからなかったので、『さらば! もろもろの古きくびきよ -8-』にて、勝手に第一中隊ということにさせていただきました💦

いまさらではございますが、🔔🌹原典に(※アニばらではなく🤭) 所属中隊の明記がありましたら、ご指摘いただけますと幸いです。

 

 

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7月12日 13:30過ぎ。

フランス衛兵隊 練兵場。

 

 

「納得できません!」

第一中隊 第一班 アラン・ド・ソワソン班長の口を衝いて真っ先に飛び出したのは疑念の叫びだった。

 

〖なんでだ! なんでだよ、隊長っ!!

おれは見た! 会議場の扉を封鎖するおれたちが 同胞に 罵られ石を投げつけられた時、隊長が見せた悲憤の涙を。

平民議員を会場に入れようとしなかった貴族野郎に猛烈な勢いで掴みかかって糾弾した隊長を。

その隊長が…、このおれたちに パリ市民を威嚇・牽制しろとの……いや、鎮圧しろとの出動命令を受け容れた!?〗

動揺のあまり、心の中の声では、敬体ことば遣いをスッ飛ばしているアラン班長である。

 

彼はギリギリ歯噛みした。

〖そりゃ、軍のてっぺんでふんぞり返ってる石頭連中が、事ここに及んで、フランス第一連隊である衛兵隊を動かそうとしたのはわからんでもない。

だけど…だけどよっ、隊長がそんな命令を受け容れてシレッとしてるたぁ、一体どういうことだっ!!〗

 

整列した隊員たちからも相次いで戸惑いと疑義の声が洩れた。

お…おれたちに 民衆に銃を向けろとおっしゃるのですか……?」

「あ…あなたが、あなた……が…」

 

 

オスカルは掌の中の手綱をきつく握り締めた。

〖今ここで言うわけにはいかない〗

ベルナールが書くであろう記事に託した、騒乱回避への切なる祈りをぐっと胸奥に押し込み、オスカルは、前夜アンドレに語ったのと同様の言辞を口にした。

「銃を向けるとはきまっていない。出動するだけだ」

だたの気休めに過ぎぬ詭弁…そう受け取られるだろうことは百も承知である。

 

「そんなの同じことです!」

「われわれにはわかっています! ごまかさないでください!」

やはり、抗弁の声が返ってくるばかりである。

 

……が、続くひと言が、オスカル自身が我知らず心に張りめぐらせていた氷の鎧にピシと裂け目を入れた。

 

「あ…あなたは貴族だから……」

 

 

─── 息詰まるような、一瞬の静寂 ───

 

厳しい視線が隊列を見据えた。

「わたしが貴族だから…?」

 

強張った声音が、居並ぶ隊員たちの耳を打つ。

「苦しまなかったとでもいうのか」

 

 

 

〖あ…っ!〗

そのことばがアランに突き刺さった。

 

〖あああっ、ちくしょう!

そんなことがわからなかったなんて、おれはどんだけド阿呆なんだ!!

あの隊長が、貴族だからって他人事(ひとごと)みてえにシレッとしてられるワケなんてねえ。

もっと言やぁ、貴族なのに苦しんでるんでもねえ。

隊長は、貴族だからこそ、苦しいんだ!〗

 

彼は迂闊だった自分をどやしつけたくなった。

 

〖隊長だって、おんなじこの国の人間を銃で黙らせるような出動、したくねえに決まってるじゃないか!

そんな出動、ヤツらとおんなじ境遇のおれたち下っ端隊員が拒否反応を示すのは、ある意味あたりまえだ。

そいつはまわりの連中みんなが共有できる感情だ。

だけど、隊長の生きてきた世界じゃ、共感どころか、そんな考えにゃ耳を貸すヤツすらロクにいねえ。

ヘタに口にしたら異端として排斥されるのがオチだ。

事実、会議場騒ぎでおれたちが逮捕された日、隊長も命令違反で処罰されかけた…って、釈放された後に噂で聞いた。

……ってことは、隊長はきっと軍部で危険人物として目をつけられてる。

ここでさらに出動命令を拒否したとなれば、今度こそ軍を追放されて、おれたち部下の盾となって守る道も閉ざされる。

だから…だから、隊長は……

けど…、だからといって、出動なんかしちまって、もし何か起こったら一体どうすりゃいいんだ〗

 

アランの思考が袋小路にぶち当たった まさにその時 ───

霹靂(へきれき)の如き一喝が馬上から(ほとばし)った。

 

「だまってわたしについてきてくれる兵士はいないのか!?」

 

驚愕のまなざしで馬上の隊長を見つめる、顔・顔・顔・・・

その彼らの上に、不退転の決意に満ちた声が響き渡った。

 

「このわたしが直接の指揮をとる!!」

 

オスカルは胸の中で念じた。

〖頼む! わたしの意を汲み取ってくれ!!

もし…もし、万一の事態が起こった場合……

わたしは…わたしは、心のありったけをぶつけ、すべてをともにしてきた君たちと共に進みたい!〗

 

加えて、思う ───


〖指揮官などというものは、所詮《役割》に過ぎない。

わたしも縷々と流れていく時の営みの中のひとつの《駒》に過ぎない。

わたしは《わたしのできること》を、力の限り遂行する。

だから……、だから…諸君!!

《わたしのできること》が(つい)えたら、君たちが、わたしを踏み越え、乗り越え、未来へと突き進んでくれ!〗

 

 

 

「では… それなら従いましょう

あなたの指揮なら…!」

 

そう答えたのは、落ち着いた、それでいて よく通る 第一中隊・第一班 班長の声だった。

 

〖納得しました、隊長。

それが、苦しみの中から隊長が出された答え──

ならば、あなたの部下たる我々がそれに従わずにいられるでしょうか〗

 

疑念をきれいさっぱり払拭できた今、心の中の声でも、敬体ことば遣いを きちんと取り戻したアラン班長であった .。oO

 

 

隊員たちのざわめきも、出動を告げられた直後の疑念と不安に打ち沈んだ声音から、いくらかの明るみと希望を帯びたものへと変化していることを、アンドレの耳はしっかりと聞き取っていた。

実際の霞んだ視界には映らなくとも、オスカルの…そして愛すべき仲間たちの… 輝きを放ち始めた表情が、彼にはありありと見える気がした。

 

アンドレは馬上のオスカルのまっすぐに伸びた背筋を見上げた。

〖おまえが、自分の心とことばで 彼らの思いを動かすことができてよかっ…た。

おまえ自身の目でこの彼らを 見ることができて……よかっ…た。

元の体に戻れて、ほんとうに…よかった〗

 

 

 

 

『さらば! もろもろの古きくびきよ -15-』に続きます