1789年。とある初夏の1日の、グランディエさんのモノローグ。
(※『✿開花への新たなる旅立ち⑦ ≪いざ、逢引き(?)へ!≫』と
対(ツイン)をなしております)
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案の定、屋敷に戻ったおれは、あちらに呼ばれ、こちらで手を貸し、
今日も今日とて、てんてこ舞いだったが、自分でも驚くほどの手際で
用事をさばき、予想より早く体を空けることができた。
〝おまえが待っている〟それがもたらすモチベーションのすごさに、
いまさらながら、他人事のように感心してしまう。
しかし...
何だったんだろう、今日という一日は…?
朝、お屋敷を出る時…。ほんの一瞬だけ、天使をこの腕につかまえた。
兵舎の廊下で…。天使が、〝一緒にばらを見に行こう〟と言ってきた。
司令官室で…。天使に、〝一緒にばらを見に行こう〟と、おれから誘い返した。
退勤する時…。天使がおれをつかまえに来て、おれの指に唇を押し当ててきた。
おれはこらえきれずに、この指でその唇に触れ返した。
オスカルという名の天使が、今日ひと時、
やさしく煌めく、いくつもの夢をおれにくれた。
その天使の心を誰かがさらっていくのをただ黙って見つめ続け、
その天使を護り続けるのが、神がおれにお示しになった道だ。
おれはその道を歩き続ける。いつまでも、どこまでも。
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「オスカル。待たせてすまない」
ノックして部屋の外からそう声をかけると、ドアに走り寄ってくる足音が
して、勢いよくドアが開いた。
「思ったより早かったな! もう出られるのか♪」
今にも部屋から飛び出してきそうなおまえに、シィッと指を立て、
カンテラをその手に持たせる。
「おれは先に行って、ブランケットを敷いて飲み物の用意をしておくから、
おまえは少し間をおいてから来い。
あっ、上に羽織るものをちゃんと持って来るんだぞ」
「羽織るもの? もう暑いくらいの季節になっているのに?」
「夜の庭は意外と冷えるから、要るかもしれん。
念のために持って行ったほうがいい」
「わかった。すぐ取ってくる♬」
「だーかーらぁ。おまえは少し間をおいてから来いと、さっき言ったろうが」
「どうしてだ!?」
「日が暮れて、用がある筈もない時刻に、連れ立って屋敷の中を歩いてたら、
どう見たって変だろう」
「そうだろうか?」
「そ・う・な・ん・だ!
ほら、ドアを閉めるから、カンテラを持ったその手を引っ込めろ」
嗚呼。 おそるべし、ド天然天使😓
≪『☆新たなる地獄への旅立ち❺【心のままに羽ばたいてくれ】』に続きます≫