エピソード0

地元のこの喫茶室が居心地が良かった。

高校生から喫茶室に入り浸りなど、不良か?と思われそうだが、母とモーニングセットを食べてからのファンなのだ。ここのマスター夫婦とともに。

ご夫婦には、小学生の一人娘がいるのだが、ご夫婦喫茶室を営んでいるので、住まいではなくこちらに帰ってくるのである。宿題をお店のテーブルで広げるので、私が家庭教師の真似事で見てあげている。

幼少の頃から、店の空間にいて客のは会話も勝手に入ってくるので、おませな娘だ。

高校生の私に「たっちゃん、彼女とかいるの?」「いないなら、バレンタインデーにチョコあげようか?」なんて生意気なことを言う。

お陰様で、高校時代は毎年手づくりチョコをもらっていた。

大学は地元を離れ、その土地で就職し、三十後半に体調を崩し、地元へ帰った。

この喫茶室は、まだ営業していた、

ご夫婦も健在だ。少し歳はとったが。娘はフリーランスのライターで実家に帰るのは年に数えるほどらしい。

奥さんから「たっちゃん、しばらく、でも変わらないわねー」「いつも、まいが、お世話になったわねー」

『こちらこそご無沙汰しております。』『体調崩しまして、地元へ戻って来ました。』『今はこっちで仕事を探しています。』

「そうだったのか-大変だったね-」

「うちらも大分、歳を取ってそろそろ店じまいかな-なんて考えているよ。」

「まい、も糸が切れた凧のようにあちこち飛び回ってここのも帰ってこないのよ。」

『えー、久しぶりに来て、何も変わってないなぁって思っていたんだけどね。』

「時は過ぎていくものなんだよ。」寂しそうに老いたマスターは言った。

Man「百年カレー美味しかったね!」

Woman 「うん、とても美味しかったよ。ホテルの風格も雰囲気あったよね。また、来ようね!」

M「了解!水羊羹も甚五郎煎餅もお土産に買えた-」

W「ふふふ、あなたのシナリオ通りね。ほんと食べ物ばかりで見学一個もしないで、よくぞ、こんなプランを?!」

M「きみのソフトクリームもね!」

W「当たり前でしょ?!何も見ていないんだからー」

M「ちゃんと考えているよ。いろは坂登って、華厳の滝とかー」

W「いろは坂?!ぐるぐるするのきらーい!」

M「そうなの?!じゃあ、どこ行こうかなぁ。」

W「金谷ホテルのベーカリーなんかどう?」

M「いいね!あれぇもう、パンが売り切れだー」

W「もう、リサーチ不足よ!信じられない 3」

M「ごめん、ごめん、他に見に行きたいところはない?」

W「もうー、湯葉まんじゅうも入らないよ-」

      End


Man「今度の週末は、日光金谷ホテルの百年ライスカレーを食べに行きます。」

Woman「なんで、カレー食べにそんな遠くまで行かないといけないの?信じられない、何考えているの?」

M「特別なプリンもあるんだよ。」

W「答えになってない。」

M「お土産に水羊羹と甚五郎煎餅もあるんだよ。」

W「さっきから食べ物ばかり。東照宮は?華厳の滝は?」

M「行く時間あるかなー?!」

W「信じられない 2」

M「でも、一緒に行きたいんだ、お願いします!」

W「もー、ソフトクリームもだよ❗」