魂はどこから来て、どこへ帰るのだろう。
考えながら森の中を歩いていると、さわやかな風が通り過ぎた。
「やあ、旅人さん」
風は私に話しかけると、命のサイクルについて話し出した。
「魂は、その一生分の世界が詰まった、水滴のようなもの。
仲間と一緒に雲から落ちた、透明でちっぽけな一滴は、地上のどこに降り立つのか、
自分でも分からない。
降り立った場所での様々な経験や出会いを通り過ぎてゆき、自分の色を身に着けた水滴は、もう透明でもちっぽけでもない。
そして、この世に少しの、しかし力強い彩を遺した水滴は、自由に伸びやかに空へと
帰って行く。
雲の中で再会した魂たちは、また透明な一滴となり、魂の循環をくり返してゆく。」
そして風は少し考えると、最近出会ったという、みつばちの話をしてくれた。
そのみつばちはふらふらで、残りの時間が僅かなことを知っていた。
みんなの仕事が増えるから、ひとり巣を出て最期の場所を探すのも、働きばちの仕事。
みつばちは、最後の花粉団子を並べ終わって、こっそり巣を後にした。
お日様が暖かい。
少し草陰に座ろう。
柔らかいクローバーの葉っぱの根本で少し目を閉じてみると、今までの事が楽しく思い出された。
生まれて初めて羽が生えた時の、誇らしい気持ち。
仲間との子育てや巣作り。
門番もしたっけ。
そしてついに蜜集め。
重労働だったけれど、楽しくて一日があっという間だった。
ふと我に返る。
風が優しく話しかけてくる。
みつばちさん、何か欲しいものはない?
そうね、少しお日様が少しまぶしすぎるみたい。
風は大きな木を揺らし、葉っぱをはらはら落とした。
その1枚が私の傍に落ちてきて、ちょうどよい陰を作ってくれた。
あー、いい気持ち。
風が優しくお花の香りを運んでくれる。
こんなに休んだことも、ひとりになったこともない。
私は大きく深呼吸した。
あれは何だろう。
人間の子供達が、細長い筒からキラキラする丸いものを次々に放っている。
それはゆらゆらと空に昇り、しばらくすると、ぱちんと消えた。
綺麗ねぇ。
光のたまごかしら。
あれはシャボン玉だよ。
風が教えてくれた。
もっと近くに寄れたらよいのに。
だめ。もう飛べそうにない。
その時、私の体がふわりと浮いて、キラキラのシャボン玉の中に入っていった。
風さんが助けてくれたのかしら。
そしてシャボン玉達は消える事なく、どんどん空へと上がって行く。
私も一緒に上がって行く。
こんなに飛べる。
疲れないし、体も軽い。
楽しくて、空もいつもより広くて、こんなに自由。
どこに行くの?シャボン玉さん。
お日様のところへ帰るのよ。一緒に行こう、みつばちさん。
でも、こんなに高く飛んできて、帰れるかしら。
不安になって下を見る。
私の動かなくなった体を、風が優しく花びらで覆っているのが見えた。
そっか。
ありがとう。またね、風さん。
さあ、行こう!
私はシャボン玉たちと笑いながら昇って行った。
