「黙って聞いてりゃ、散々だな」
そう言った声は、聞いたことがあった。
声がしたほうを見ると、やっぱり
……裕也さんだった。
「俺さ、知ってるやつの悪口言われてたら、黙って聞き流せないんだよね」
言いながら、私に微笑みかけてきた。
「ちょっと……邪魔しないでくださいよ」
優希君は、裕也さんの手を振り払った。
「邪魔? 笑わせんじゃねぇよ。……行くぞ」
最後の言葉は、私に向けられた言葉だった。
裕也さんが店から出て行くと、私もそれを追うようにして出て行った。
「知り合いって……どういうことですか?」
近くにあった公園のベンチに座って、落ち着いてから聞いてみた。
「翔さんは、中学と高校のときの先輩で、俺の兄貴的な存在だったんだ。俺が悩んでるときも、親身になって聞いてくれて、本当に良い人なんだ。だから、つい口を挟んでしまって……ごめん」
「いいえ。私も、悪口聞いてるの耐えられなかったです。裕也さんがいなかったら、私たぶん抜け出せなかったです。ありがとうございました」
「そうだったんだ。よかった。じゃあ、帰ろっか。送ってくからさ」
もしかして、優希君に気があるかもとか思ってたかな。
「ありがとうございます」
裕也さんに、タクシーで家まで送ってもらった。
「裕也と美香、一緒だったの?」
「ごめんごめん。一人で飲んでたんだけど、なんかヤバそうだったから声かけて一緒に帰ってきた」
確かに、一人で飲んでたって言うのは本当だったんだろうと思う。
だって、すぐに出てこれたから。
「ヤバそうだったって?」
早苗は私に聞いてきた。
「……うん」
隠す必要もないと思ったから、素直に事情を説明した。
「……美香、大変だったね」
それから少し話した後、それぞれの部屋に帰っていった。