「おじゃまします」
私は今、淳哉の家に来ています。
「適当に座ってて良いからね」
付き合い始めてから1年以上も経つのに、
私達はお互いの部屋に来た事はありませんでした。
男性の部屋にしては、綺麗に片付いてるなぁ……
「おまたせ」
淳哉がお茶を持って、私の向かい側に座った。
「意外と綺麗にしてるんだね」
「意外って……オレ、A型だから少しは几帳面なんだぜ?」
そう言った淳哉の顔が、少しだけ暗く見えた。
「淳哉……何かあったでしょ?」
「何もねぇよ……」
彼はそういって顔を伏せた。
「嘘つかないでよ! 私達付き合ってるんだよ? 淳哉が一人で苦しんでたら、心配だよ!!」
思わず叫んでしまった。大切な人が苦しんでるのに、知らん振りなんてできないよ……
それからしばらく、沈黙が続いた。
「北海道」
「え?」
「北海道に転勤になったんだ。だからもう、美香の傍にはいれない……オレの事は忘れて」
うそ……でしょう? 大規模な人事異動があるって聞いたけど……まさか、淳哉が……?
「私も一緒に行く」
「バカ、そんなことしたら早苗はどうなるんだよ」
私にとって、早苗も淳哉も同じくらい大切な人なんだ。
「でも、淳哉は?」
「大丈夫だよ。これで結構モテるし、あっちには、親戚がいるんだ」
淳哉がいなくなる。それは、凄く凄く悲しい事だけれど、私は淳哉よりも早苗と一緒にいることを選んだ。
だって早苗は、淳哉にとっても、私にとっても大事な人だから。
