古川直人
27歳か28歳
自称ロックンローラー
誰もが俺を認めない
誰もが俺を知らない
だから俺はロックンローラーだ
なぁそうだろ
間違いばっかりの俺が間違いなく間違ってねえだろう

あれは忘れもしない6月9日雨降り非常階段
背がぐんと伸びてニキビがドバッと数え切れない年の頃だった
中学の同級生仲良し4人組
全てに興味がない俺達は1つも才能がなかったが性欲だけは止まらない訳で「バンドしたらモテるっぺよ」健全で浅はかな情熱を胸に『ロッキンチェアーズ』を結成した
結成したものの当然誰もが音楽に興味も知識もない
結成した瞬間に解散の危機が訪れた
今思えばあの頃が1番ロックである
表現に知識も興味も理屈もいらねえに決まってらあ
とりあえず楽しく歌えばいいっぺよ
僕達はオリジナルソングを作って笑い転げていた

『14才』ロッキンチェアーズ 作詞作曲アホまみれ哀れ虫泣き太郎の弟

廊下の冷たさと股間の熱さが反比例
世界なんて潰れてよ
世界なんて潰れてよ
君がいない世界なんて餃子がない王将だ
世界なんて潰れてよ
世界なんて潰れてよ
僕と君だけを残してよ
お金もなんにもいらないから
地位も名誉もいらないから
学校なんか潰れてよ
学校なんか潰れてよ
誰か先生殺してよ
誰か先生殺してよ
お前が殺せと言われても
自分で殺すん自分だけ
自分で殺すん自分だけ
大人になったら偉くなる
ちゃう大人になったらエロくなる
美術の先生ヤラしてよ
美術の先生ヤラしてよ

放送室をジャックして給食の時間にフルコーラスをアカペラ(もちろん僕達は楽器が弾けない為)で歌い上げた
まず放送室で体育の釜谷にフルボッコ
「ちきしょ〜馬鹿谷(釜谷)の野郎め香織ちゃん(美術の先生)にモテよとうしてっぺ」
口の中に鉄の味を感じながら校長室で1時間待機
母親は僕の歌詞を見て泣きじゃくり
母ちゃん感動してんか?とボケる余裕はなかった
母親の涙よりしょっぺえ液体がこの世に存在しない事を知った
この時古川直人は2日酔いの朝に飲む水がこの世で1番うめえ事をまだ知る由もなかった(何言うとんねん。お兄ちゃん雄人でんねん言うとんの直人でんねん言うとんねん)

あれから14年
みんな大人になってしまった
今は連絡先も知らない
『ロッキンチェアーズ』は僕だけだ
みんなの分まで子供でいるから‼︎みんなの分まで子供でいるから‼︎
23歳の夏だった
解散の道程
これからどうしよう…
道頓堀のひっかけ橋を1人でとぼとぼ歩く
『夢を〜乗せて〜走る〜車道〜…』
サザンで1番好きな曲が流れる
なんだよこんなタイミングで今聴きたくねえわ…ってきゅきゅきゅきゅわただ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎きゅわたきぇえすけが歌ってるっぺ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎

目の前で大好きな桑田佳祐が弾き語りをやっている

涙の止め方と音楽の辞め方がわからなくなった

なんだ人生って

初めて神様を見た

初めて嗚咽が生まれた

なんだ人生って

今日の人生はどろどろしてて沼みてえに優しいな

ありがとう桑田さん

ありがとうみんな

おら1人になっちまったけど死ぬまでロッキンチェアーズに乗って走り続けるっぺ

あの日の奇跡を胸に

いつかまた出会える奇跡に

乾杯