家の縁にきんかんの木がある。


その葉っぱにずっとひっついていたイモムシ。


ある日突然いなくなったと思ったら、


今度は家の下、通気口あたりに


蛹がひっついていた。


事前に子供と図鑑を手に調べると


アゲハチョウになることがわかった。


数日経った朝、蛹が揺れていた。


子どもが保育園に行っている間にチョウになるかもしれない。


貴重な時間を逃さまいと、ビデオを録って様子見。しかし一向に出て来ない。


そうこうするうちに子どもが帰り、お風呂から出た時に蛹をみると


とうとう殻から出てきて、地面に落ちていた。


必死に顔あたりに引っかかった殻を取ろうとしている。


ふと妻が言った


「ダメかもしれんね。」


必死に剥がそうともがく蝶をみると、大丈夫だと思っていた。


しかし、蛹の殻から落ちているのはそもそも不自然だった。


出たまま壁などにしがみついて、翅を広げる。


そんな姿とは裏腹に、蝶はお腹を見せて延々ともがいていた。


手を出してはいけないと思いつつ、被っていた殻を外してあげた。それなのに、


変わらず地面でもがいていた。


いつまで経っても翅は広がらなかった。


翌朝、起きてすぐ見に行くと


少し離れたところで弱っていた。


羽化したのに、蝶になれなかった朝


羽化したら蝶になるものだと思っていた朝


ならない方が当たり前なんだと思った朝


、、、


「チョウになったよ!」


子どもがそう言った夕方


子どもが見た時には姿がなく、かわりに蝶が飛んでいた。


蝶になったんだと思うことが


弔いになると思った。


目線をほんの少し上げたあたりに


蝶ののぞむ夢が揺れている