◆『殺されない国、飢えを知らない国』から
イスラム過激派ISILに加わろうとする若者たち。
中東の過激派『イスラム国』と思われる組織が引き起こした
今回の日本人殺害事件。
最も懸念されるのは、過激派への嫌悪感のみを煽る風潮だ。
江戸時代のかたき討ちならいざ知らず
「テロ許すまじ!」という単純思考に終始することこそ危険なことだと、
桃太郎は思う。
政治的混乱による貧困や格差が、その背景には存在している。
わたしたちは、過激派が拡大するそもそもの原因を探る必要があるはずだ。
家族の飢えを満たすため、また、たった一台のスマホが欲しくて
この過激派組織に加担するあどけない少年たち・・。
胸が痛む。いったいなぜこのような組織が拡大の一途をたどるのか・・?
殺されることもなく、飢えることを知らない、私たち日本人は
この一連の事件をどのように捉えるべきなのだろう・・?
慶応通信の「文学」のレポ課題で、プロレタリア文学について
資料収集し、小論文を書こうとしていた時、この事件は起こった。
小林多喜二の「蟹工船」がブームになったのは
確か、2008年頃だった。
読んでいて決して楽しい気分になる本ではない。一貫して
重苦しく、心が暗くなる。
新聞で紹介されたことがきっかけでこの小説は売れはじめ
マンガとして無料ダウンロードされて読者を増やしていった。
低賃金で過酷な労働を強いられる「蟹工船」の貧しい労働者と、
定職に就けずアルバイトで日々の生活を営むフリーターの境遇が
重なって見えた・・。そんな風に分析されていた。
佐多稲子の処女作、昭和三年「プロレタリア芸術」で発表された
「キャラメル工場にて」は
監獄のようなキャラメル工場での児童労働をあつかった短編小説だ。
あっという間に読み終えてしまうほど短いページ数なのに
文字を追っているだけで重苦しい気持ちになり、胸が詰まった。
出口のない貧困・・。
幼い兄弟姉妹を飢餓から脱出させるために
少女たちは身売りし、少年は日常的な暴力に耐えながら
未来の無い過酷な労働環境に身を沈める・・。
日本にも、そんな時代があったことを
戦後の成長期に生まれ育った私達は、
小説や教科書の中でしか知りえない。
シリアで活動する過激派組織で最大の勢力。それがイスラム国=ISILだ。
シリアとイラクの広い土地を支配し、
この二つの国にまたがるイスラム国家の樹立を
昨年6月、一方的に宣言した。
シリア最大の油田を支配下に置き、
石油の密売で一日1億円の収入があると噂され
豊富な資金をバックに勢力を拡大させている。
驚くことに、3万人を超えるイスラム国メンバーの半数以上は
外国人だと言われている。
アメリカ外務省は、イスラム国の外国人が80か国以上、
15,000人に上るとみている。
昨年末のデータでは、
欧米3000人イギリス700人フランス500人ドイツ400人と噂されており
イギリスは欧州の過激派のネットワーク拠点ともなっている。
アジアからは、中国インドネシア、マレーシアシンガポールからも
シリア入りしており、
昨年、日本からも北海道大学の学生がシリア行きを
計画していたことが発覚し、警察の事情聴取を受けている。
あえて危険な場所に行こうとする動機は、大きく3つある。
①『聖なる戦い』というプロパガンダにまんまと載せられるケース。
②生活や社会への不満孤立感を抱く人が
自分の居場所を求めて参加するケース
③金目当てもしくは刺激を求めて、
ゲームに参加するかのような安易な気持ちで仲間に誘われて
加わる人もいるという。
『殺されない国、飢えを知らない国』、日本に生まれ暮らす私たちは
どのように今回の問題を捉えるべきか・・。
アメリカに与する国とみなされた日本。
ニュース記事の冒頭に「ISIL」 vs 「オバマ」という見出しが躍る。
テロの壊滅などという耳触りの良いフレーズは
もはや解決の糸口になどならないだろう。
わたしたちに最も必要なことは、この歴史や地政学的問題がどこから
引き起こされているのかを正しく、理解しようとする姿勢だと思う。
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