母からは『フランダースの犬』を読み聞かせて

もらった記憶があります。

その他 幾編かの童話を 読んでもらいました。

時代が時代で それほど絵本も売られてなく、

幼稚園もなく、母からの話は貴重なものでした。

団塊の世代であるまめ助は、童話が懐かしい。

福娘童話集から、童話を引用させてもらいました。

 

よろしかったら、お子様、お孫様に

読み聞かせください。

 

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No.20 お坊さんにだまされたキツネ 山梨県

 

 

 

お坊さんにだまされたキツネ
 

 

 

むかしむかし、ある村はずれに、

一匹のキツネがすんでいました。

 

とてもずるがしこいキツネで、

村の人たちをだましては、

魚やあぶらあげをとっていました。

 

中でも一番よくとられるのは、

お坊さんでした。

 

村の家へお経をあげに行くたびに、

もらってくるごちそうを

キツネにだましとられていました。

 

このキツネはまるで

人間そっくりに化けるので、

ついだまされてしまうのです。

 

ある日の事、

お坊さんは道ばたで、

昼寝をしているキツネを見つけました。

 

(よし、今日は、

こっちがキツネをだましてやろう)

 

お坊さんは、寝ているキツネの

肩をたたいて言いました。

 

「だんなさん、だんなさん」

 

キツネはびっくりして飛び起きると、

あわてて金持ちのだんなに化けました。

 

「だんなさん。

こんなところで寝ていると、

キツネにだまされますよ。

どうです?

二人で料理屋へ

ごちそうを食べに行きませんか?」

 

「ごちそう? そいつはいいですね」

 

キツネは大喜びで、

お坊さんと一緒に

町の大きな料理屋へ行きました。

 

「さあ、どんどん食べて、

じゃんじゃん飲んでくださいよ。

いつもお世話になっているお礼に、

今日はわたしがごちそうをしますから」

 

お坊さんは、

おいしい料理やお酒をどんどん運ばせて、

自分もせっせと食べたり飲んだりしました。

 

「いやあ、すまんのう」

 

だんなに化けたキツネも、

お坊さんに負けずと

料理を食べてお酒を飲みました。

 

やがて、すっかりお腹が

一杯になったお坊さんは、


「ちょっと失礼して、小便に行ってきます」


と、言って、部屋を出ました。


それから、女中さんを呼んで言いました。

 

「わしは、まだこれから行くところがあるので、

すまんが大急ぎで、おみやげを作っておくれ」

 

「はい」

 

女中さんが、おみやげの料理を持ってくると、

 

「そうそう、代金は食べた分と一緒に、

だんなさんからもらっておくれ」

 

と、言って、さっさと帰っていきました。

 

さて、部屋に残されたキツネは、


(ずいぶんと、長いおしっこだなあ)


と、思いながらも、

一人でお酒を飲んでいました。

 

しかしお坊さんは、

いつまでたってももどってきません。


(おかしいな。何をしているのかな?)


キツネはだんだん、心配になってきました。


そのうちにほかのお客さんは

みんな帰ってしまい、

残っているのはキツネだけになりました。

 

そこへ女中さんがきて、言いました。

 

「だんなさん、申し訳ありませんが、

そろそろお店も終わりますので」

 

「そうか。ところで

わしのつれのお坊さんはどうした?」

 

「はい。もう、とっくにお帰りになりました」


「なんだと! 帰っただって!」

 

「そうですよ。料理とおみやげのお金は、

だんなさんからいただくように言われました」

 

(しっ、しまった。坊さんにだまされた!)

 

キツネは、あわてました。

 

はやく逃げ出したいのですが、

お金をはらわないと

料理屋を出ることができません。


でもキツネは、一文無しです。


(どうしよう、どうしよう。困ったぞ)


おろおろしているうちに、

うっかり変身がとけてしまい、

キツネの姿にもどってしまいました。


「あっ、キ、キツネ!」


女中さんが大声で叫ぶと、

その声を聞いて、

お店の人たちがかけつけてきました。

 


「人間に化けてただ食いするなんて、

とんでもないキツネだ!」


「さあ、逃がすもんか!」


お店の人たちは、

棒やほうきでキツネをなぐりつけました。


「た、助けてくれえー」

 

キツネは店の中をぐるぐると逃げまわり、

やっとのことで天井裏から外に飛び出しました。

 

「それにしても、ひどいお坊さんだ。

キツネを連れてくるなんて」

 

次の日、料理屋の主人は

お坊さんのところへお金をとりに行きました。

 

ところがお坊さんは、すました顔で言いました。

 

「そいつはお気の毒な。

でもわしは、

お前さんの店なんかに行ったことがないよ。

きっとそのお坊さんも、

キツネが化けていたんだろうよ」


それを聞いた料理屋の主人は、


「あのキツネめ。今度見つけたら、

ただではおかないぞ!」


と、言って、くやしがりました

 

 

おしまい

 

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