母からは『フランダースの犬』を読み聞かせて

もらった記憶があります。

その他 幾編かの童話を 読んでもらいました。

時代が時代で それほど絵本も売られてなく、

幼稚園もなく、母からの話は貴重なものでした。

団塊の世代であるまめ助は、童話が懐かしい。

福娘童話集から、童話を引用させてもらいました。

 

よろしかったら、お子様、お孫様に

読み聞かせください。

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 

No.9 万蔵と馬 福島県

 

万蔵とウマ
 

 

むかしむかし、小坂峠のふもとの村に、

万蔵という若い男がいました。


 万蔵は心のやさしい正直者で、

毎日のようにウマの背に荷物を乗せて

峠をこえていました。

 

ある日の事、万蔵は人にだまされて、

大事なウマを取られてしまいました。


 ウマを取られては、荷物を運ぶ仕事が出来ません。


「ウマはないが、仕事をしないと食っていけないしな」

 

仕方なく万蔵は背負えるだけの荷物を背負って、

自分一人で荷物を運ぶ事にしました。

 

万蔵が夕暮れの峠の道をのぼっていくと、

旅姿の老人がしょんぼり石にすわっています。


「どうした? じいさん」


 万蔵がたずねると老人は、


「実はお金を使い果たしてしまい、

朝から何も食べておらんのじゃ」


と、言うのです。

 

「そりゃあ、お気の毒だな。

・・・よし、おいらにまかせておきな」

 

万蔵は老人を元気づけると、

知り合いの茶屋へ連れて行きました。

 

「ここで二、三日、ゆっくり体を休めていくといい。

お金は、おいらがなんとかするから心配するな。

たくさん食って、はやく元気になるんだぞ」

 

万蔵は老人を茶屋の主人に頼むと、

そのまま仕事に戻りました。

 

 

次の朝、

荷物を背負った万蔵が昨日の峠に来てみると、

またあの老人が石にすわっていました。

 

でも今日の老人は、

黒毛のたくましいウマを五頭もつれています。

 

老人は万蔵を見つけると、

にこやかに言いました。

 

「昨日は、どうもご親切に。

お礼に、このウマをさしあげよう。

町へ行って売りなされ」

 

「こんなに、立派なウマを。

・・・あ、あなたさまは、

どこの旦那さまで?」

 

万蔵がたずねると、

老人はニッコリ笑い、

 

「この峠の上の、稲荷大明神の使いの者じゃ」


と、言って、そのまま

けむりのようにスーッと消えてしまいました。

 

「なんとも、不思議なことじゃ」

 

万蔵は老人に言われた通り、

五頭のウマをひいて町へ行きました。

 

すると、それを見かけた殿さまの家来が、


「すばらしいウマだ。これは殿さまにふさわしい」


と、ウマを五頭とも買いあげてくれたのです。

 

こうして大金を手に入れた万蔵は、

その大金で

峠に稲荷大明神をまつるお堂をつくり、

峠越えで苦しむ人たちを助けたと言うことです。

 

 

おしまい

 

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇