【カイロ＝大内清】シリア内戦が重大局面に入りつつあるとの観測が強まる中、アサド政権側がなりふり構わぬ攻勢に出ている。２３日には中部ハマ県ハルファヤを空爆、在外人権団体によると少なくとも６０人が死亡し、５０人以上が負傷した。フランス通信（ＡＦＰ）は２４日、同団体の情報として、政権側が中部ホムスで毒性のあるガスを含む爆弾を使用したと報じた。ブラヒミ国連・アラブ連盟合同特別代表は同日、首都ダマスカスでアサド大統領と会談、外交面の動きも活発化している。
ブラヒミ氏は会談後、「域内外の指導者たちとの協議内容を伝えた」と説明。今月６日にクリントン米国務長官、ロシアのラブロフ外相との会談で再確認した、停戦と「挙国一致政府」樹立に向けた工程表を提案したとみられる。
アサド氏は「主権と独立を守るための取り組みを支持する」と述べたという。
一方、２３日の空爆では、食料不足が深刻化する中でパンを買い求めていた市民の列が標的となった。シリア内戦の１回の空爆による死傷者数としては過去最悪規模という。
反体制派は、後ろ盾であるトルコの国境付近を中心に支配地域を拡大、ハマやホムス、北部アレッポなどに加え、首都の攻防も本格化している。反体制派の拠点であるダマスカス南郊のパレスチナ難民キャンプでは連日、戦闘が続き、パレスチナ解放機構（ＰＬＯ）によれば、パレスチナ人７００人以上が死亡した。
焦りの色を濃くする政権側は、戦闘機での空爆に加え、スカッド型ミサイルを使用するなど大量殺戮（さつりく）をいとわない戦術を加速させている。毒性のガスが使用されたとの情報の真偽は不明だが、反体制派側は、ガスを吸った民兵６人が筋肉の弛緩（しかん）やけいれんなどを起こして死亡したと主張、人権団体は国際機関の調査を求めた。
シリアが保有する化学兵器をめぐっては米国が「越えてはならない一線」だと使用しないよう強く警告。ラブロフ露外相も２４日、「使えば政治的な自殺行為だ」と指摘した。
従来はアサド氏寄りだったロシアは、最近では政権存続にこだわらない姿勢に転換しており、秩序ある政権移行を模索している。
反体制派を支援する米国も、内戦で存在感を強める「ヌスラ戦線」など国際テロ組織アルカーイダ系武装組織がさらに力を伸ばす事態を危惧。政権崩壊後のシリアが極度に混乱することを避けたい点ではロシアと利害は一致しており、アサド氏が今後、ブラヒミ氏の調停にどう反応するかに注目が集まっている。
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