アスペクト刊、長井好弘著、噺家と歩く「江戸・東京」こだわり落語散歩ガイドを読んでみた。なかなか面白い本だ。

長井好弘氏は読売新聞の記者で、落語に造詣深く、他社の落語に詳しい記者と肩を並べる御仁である。
本は六つの柱で構成されており、落語の演題に合わせて東京の六カ所をその演題、噺家を選び一緒に散歩し、長井好弘氏の取材紀行文になっている。
目次は
一、五街道雲助「明烏」と浅草散歩
二、古今亭志ん輔「品川心中」と品川散歩
三、柳亭市馬「転宅」と人形町散歩
四、柳愛喬太郎「結石移動勝症」と池袋散歩
五、柳家三三「文七元結」と隅田川散歩
六、春風亭一之輔「茶の湯」と根岸散歩
この本が発刊されたのは2010年、本に登場する喬太郎は真打ちになって10年、三三は4年、一之輔は真打ちが本発刊の二年後なので、真打ちを目前にした二ツ目バリバリ輝きましている頃だろう。
落語散歩は2005年5月、東京・江東区古石場文化センターで始まった「江戸・東京落語の舞台を歩く」という講座が、長井氏の原点と書かれている。
毎月、三十数人の生徒さんを引き連れて、落語の舞台とおぼしき東京の町々をぶらり歩く。講師としてもっともらしい解説の一つもせねばならぬと、古い落語速記や古地図で予習復習をするうちに、落語散歩が面白くてたまらなくなった、とあとがきに書かれていた。
五街道雲助の「明烏」だと、廓ばなし、廓ばなしだと「紺屋高尾」「お直し」「幾代餅」「居残り佐平次」「お見立て」「品川心中」ですね。

古今亭志ん輔の「品川心中」、こちらは、噺家、古今亭志ん輔オフィシャルブログ、志ん輔日々是凡日、こちら、訪れてみてください。

柳亭市馬の「転宅」、人形町といえば「三光新道」しんみちだが、固有名詞がつくと「さんこうじんみち」と発音するようだ。人形町には普段お世話になっている店、京粕漬の専門店「魚久」、東京五本の指に入る居酒屋、笹新がある。他の四店は湯島のシンスケ、門仲の浅七、森下の山利喜、菊川の芝一である。
この五店、ネットで調べてみたが、門仲の浅七、菊川の芝一は出てこない、廃業しているのかもしれない。

柳家喬太郎の「結石移動症」。2003年の「読売GINZA落語会」で新作ネタおろしをしたという「結石移動症」を聴いてみたいと思ったが、そのタイトルを変えて口演されている「爆笑短縮版」をも聴いてみたい。喬太郎の住まいは池袋にあると聞いている。

柳家三三の「文七元結」。三三、師匠小三治によく似ているという。でも三三は「ウチの師匠には一つも咄を教わっていません」と。小三治・三三は落語に対する姿勢がよく似ている。直接接触はないが空気伝染はする、ということか、と。

春風亭一之輔の「茶の湯」、一之輔が今までに、講座で演じてくれた演目は、「おしの釣り」「明烏」「茶の湯」「初天神」「佃祭」「黄金餅」「品川心中」「五人廻し」そして「花見の仇討ち」といっていた。
