料理をし始めた。
私は今まで、料理というものをほとんどしてこなかった。今は大学生で時間の余裕があるが、高校生の頃は受験勉強が忙しくて料理をする暇がなかった。母親の料理は基本的には美味しかったのだが、仕事で疲れている日などは冷凍食品や明らかに手抜きとわかる料理が食卓に並ぶ。なすがへたを取られず、ほぼ生のまま出てきたこともあった。当然美味しくなかったが、作ってもらっておいて不味いとはとても言えず、大人になったら料理をしようと思った。今は無理だけれど、いつか必ず。大学生になり、時間に余裕ができるとクックパッドのレシピを見て料理をし始めた。そして、今まで知らなかった事を知る事になった。
やり始めると、毎日料理をやり続ける母親がすごいと感じるようになった。買い物に出かけ、少しでも安い食材を探し、食材を切り、焼いて、味付けをし、皿を出し、洗い物をし、キッチンを綺麗にする。こんな事をほぼ毎日やり続ける母親に狂気に近いものを感じた。しかも母親は料理をするだけでなく、その他の諸々の家事を担当し、仕事までしている。なぜ、毎日毎日こんな事が出来るのだろうか。私は勉強だけでひいひい言っていた。食卓に不味いものが出てきても、もう文句を言う気にはなれない。むしろ休んでくれ、そう思うようになった。
先日母親に感謝の意を伝えたところ、
「やっと分かってくれた」
と、一言言った。きっと、母親は待っていたのだ、と思った。その事に気づくまでに20年近くかかってしまった。家事を毎日するという大変さは本や人から聞いて分かっていたつもりだったが、私は本当の意味でそれを分かっていなかった。聞いたことと実際に経験する事は違う。
今まで家事は手伝ってはいたが、完全に手伝うという感覚で、母親の仕事だと思っていた。それが傲慢な事に気付いた。
母親のしていることがどれだけすごい事かそれを男性は分かっていなさすぎるように思えてならない。口では理解があるようなことを言っていても、本当に理解していなければ、その錆は出てしまう。その錆をどう取り除いていくか、その事を考えなければ永遠に熟年離婚は無くならないだろう。