予言
その頃の僕は、父方の祖父母と暮らしていた。
お母さんは、毎日遅くまで仕事をしていて、学校から帰ると僕は祖母と二人っきり。
友達と遊んでも、暗くなって夕焼けチャイムがみんなに帰るように鳴っていても、あまり家に帰りたくなかった。
なんだか祖母と二人だけで、こたつに入ってテレビを見るのは息苦しいようで、苦手だった。
テレビのことや、学校でのことを聞かれると、いらいらして、つっけんどんになってしまう。
もっと優しくしなくちゃと思えば思うほど、口は重くなった。話さずに二人でいる沈黙は重く、空気すらずっしり肩に乗っているようだった。
ある日。
2階にある自分の部屋のティッシュを使おうとしたら、見つからなかった。
落としたのかと、机の下を探し、部屋じゅう探しても見つからなかった。
もしかしてと、両親の部屋にも行ってみたけれど、やっぱり見つからなかった。
あちこち探して、見つけたのは居間だった。僕の留守中に勝手に部屋に入って持っていったんだ。
イラっとした。
それでも、祖母には何も言えない。僕は言い争いが嫌だった。祖母の性格はよくわかっていた。この家に住ませて貰って、テイッシュくらいで何を言うんだ、そう言われそうで。
だからお母さんが帰ってきてから、文句を言った。
「僕が使ってたテイッシュを婆ちゃんが持ってった。メーカーも色も同じなのが居間にあるんだよ」
母はくりっとした目で僕を見てちょっと考えた。
「たまたまじゃないの」
「じゃあ誰が持ってったの」
「そうね、わたしじゃないしね。今、婆ちゃんは風邪ひいてて、テイッシュを買いに行けないのかもよ」
確かに酷い風邪で、こっちに移すんじゃないかって酷いセキをしてるし、しょっちゅう鼻をかんでいる。
「でもさ、勝手に持ってったらドロボウだよ」
「気づかないと思ってるのかもね」
母も祖母には何も言えないようだった。なんて言い返されるか考えてるみたいだった。
「僕、部屋のテイッシュに名前を書いたんだ。お母さんのもお父さんのも。それが下にあったらドロボウしたんだよ」
「じゃあよく観察しておいてね。ハル隊員、任務遂行してください」
「ラジャー」
それから数日。まだ祖母の風邪は良くならない。医者にいかないから、当たり前かもしれないけど。
その日も遅くなって、母が帰ってきた。僕をみるなり笑って言った。
「予言します。明日テイッシュが消えるでしょう」
「なんで」
「下のテイッシュ、もうなくなるよ」
上のテイッシュばかり気にしていたけど、そうだ祖母は下にいる。
次の日。お母さんの予言どおりテイッシュが消えた。
「予言どおり、テイッシュが疾走しました。なくなったテイッシュは居間にて確保されています」
ぴしっと敬礼して、笑いながら母も言う。
「任務遂行お疲れ様です。引き続きテイッシュの観察お願いします」
不快になるはずの秘密も、笑い飛ばせる母だから、僕も笑えた。
くりくりした目で、友達のお母さんより若く見える母は僕の自慢だった。
お母さんは、毎日遅くまで仕事をしていて、学校から帰ると僕は祖母と二人っきり。
友達と遊んでも、暗くなって夕焼けチャイムがみんなに帰るように鳴っていても、あまり家に帰りたくなかった。
なんだか祖母と二人だけで、こたつに入ってテレビを見るのは息苦しいようで、苦手だった。
テレビのことや、学校でのことを聞かれると、いらいらして、つっけんどんになってしまう。
もっと優しくしなくちゃと思えば思うほど、口は重くなった。話さずに二人でいる沈黙は重く、空気すらずっしり肩に乗っているようだった。
ある日。
2階にある自分の部屋のティッシュを使おうとしたら、見つからなかった。
落としたのかと、机の下を探し、部屋じゅう探しても見つからなかった。
もしかしてと、両親の部屋にも行ってみたけれど、やっぱり見つからなかった。
あちこち探して、見つけたのは居間だった。僕の留守中に勝手に部屋に入って持っていったんだ。
イラっとした。
それでも、祖母には何も言えない。僕は言い争いが嫌だった。祖母の性格はよくわかっていた。この家に住ませて貰って、テイッシュくらいで何を言うんだ、そう言われそうで。
だからお母さんが帰ってきてから、文句を言った。
「僕が使ってたテイッシュを婆ちゃんが持ってった。メーカーも色も同じなのが居間にあるんだよ」
母はくりっとした目で僕を見てちょっと考えた。
「たまたまじゃないの」
「じゃあ誰が持ってったの」
「そうね、わたしじゃないしね。今、婆ちゃんは風邪ひいてて、テイッシュを買いに行けないのかもよ」
確かに酷い風邪で、こっちに移すんじゃないかって酷いセキをしてるし、しょっちゅう鼻をかんでいる。
「でもさ、勝手に持ってったらドロボウだよ」
「気づかないと思ってるのかもね」
母も祖母には何も言えないようだった。なんて言い返されるか考えてるみたいだった。
「僕、部屋のテイッシュに名前を書いたんだ。お母さんのもお父さんのも。それが下にあったらドロボウしたんだよ」
「じゃあよく観察しておいてね。ハル隊員、任務遂行してください」
「ラジャー」
それから数日。まだ祖母の風邪は良くならない。医者にいかないから、当たり前かもしれないけど。
その日も遅くなって、母が帰ってきた。僕をみるなり笑って言った。
「予言します。明日テイッシュが消えるでしょう」
「なんで」
「下のテイッシュ、もうなくなるよ」
上のテイッシュばかり気にしていたけど、そうだ祖母は下にいる。
次の日。お母さんの予言どおりテイッシュが消えた。
「予言どおり、テイッシュが疾走しました。なくなったテイッシュは居間にて確保されています」
ぴしっと敬礼して、笑いながら母も言う。
「任務遂行お疲れ様です。引き続きテイッシュの観察お願いします」
不快になるはずの秘密も、笑い飛ばせる母だから、僕も笑えた。
くりくりした目で、友達のお母さんより若く見える母は僕の自慢だった。
