Focus 14 | ふんわりシフォン

Focus 14

二日目も無事に終わろうかという時刻になって、一人の人物がこちらを見ているのに気づいた。

遠目にもすらりとした均整のとれた体を上質なスーツにつつんでいる。清潔感のある黒髪に、目鼻立ちも整った男性だった。

どんなにスーツが似合っても、回りに海しかないこんな場所でのスーツ姿は目立つ。

いぶかしむものの、害のあることではないので、こちらもごく普通に撮影をこなしていく。



「いいよ玲奈ちゃん。今日はあがりにしよう」



礼治さんの声で場の緊張がゆるむ。何事もなく終るのがいい。



「お疲れさまでしたぁ」



上着を着た玲奈ちゃんが挨拶したのを見て、礼治さんが俺に向かって、手を払う仕草をする。

しっしっと犬でも追いやるのかと振り返ったら、犬なんていなかった。

もう一度礼治さんを見たら、顔をしかめて玲奈ちゃんを見遣った。口をぱくぱくさせて、どうやら『ついていけ』ということらしい。
昨日、玲奈ちゃんがナンパされていたことで、彼女の身の安全を守ることも視野に入れなくてはいけなくなったようだ。



砂を踏んで追いかけると、少し行ったあたりで人に捕まっていた。

玲奈ちゃんが身じろぎして見えた人影は、背の高い男性でスーツを着ていた。あれは、さっきから撮影を見ていた奴だ。

走って二人の元まで辿りつくと、玲奈ちゃんを庇うように背中にまわす。



「彼女に何か用ですか」



勢い口調がきつくなる。それなのに相手は余裕の笑みを見せて、腕を組んだ。



「それが初対面の相手に対するあなたの対応ですか」

「相手にもよります。あなたが彼女の撮影を見ていたのを知っています。彼女に用があるなら、俺を通してからにしてください」



後ろから玲奈ちゃんが俺のシャツの裾を引いた。



「結輝さん」

「…何も言わなくていいから」


安心させてあげようと名前がこぼれ落ちそうになるのをこらえる。見ず知らずの相手に無用心に名前を知らせることはない。



「これはこれは。素晴らしいナイトですね。そうでしょう玲奈」

「……はい。橘マネージャー……」



固まってしまった俺をよそに、スーツの男性は余裕の笑みで名前を名乗る。



「玲奈のマネージャーをしております橘隼人です。お見知り置きください」