Focus 12 Reiji side
煙草の煙が風に流されていく。海風が肌寒くなってきていた。
煙草を一本だけ吸って、吸い殻を携帯灰皿に捩込んだ。玲奈ちゃんに風が当たらないように、半歩前を行くとどうしても煙草の煙りを浴びせることになってしまう。名残惜しいけれど宿泊施設までは禁煙だ。
追いかけて来られないのを確認して、肩から手を離した。
「玲奈ちゃん隙、ありすぎでしょ」
俯きながら歩いていた玲奈ちゃんが、はっとしてこちらを見た。
「あの…よくあるんです。声とか掛けられるの。ほんっと子供から、おじーちゃんまで」
ばつが悪そうに指がせわしく動く。髪をすいてみたり、指に巻きつけたり、その落ち着きのなさは二人きりでいることかもしれなくて、また黙り込む。
「玲奈ちゃんだけで帰したのは悪かったけど、すごいモテっぷりだったね」
ほんの数分目を離した隙にナンパされるなんて、有り得ない。
「ああいうの良くあって、友達と待ち合わせで駅に行ったりすると、なかなか待ち合わせ場所につけなかったりするんです。あと切符の買い方聞かれたりとか」
そういう子なんだろう。見るからに善良そうで、困っていたら助けてくれそうな雰囲気を出してる。
「気をつけなくちゃダメだ。これからは今までみたいにいかなくなる。写真集が出ることで、みんなが玲奈ちゃんを知ることになる。みんなが玲奈ちゃんの振る舞いを見るようになる」
「…気をつけます。マネージャーにも言われるんです。でも…自覚がなさすぎでした」
ホテルと言うには安っぽくて民宿よりは規模の大きい宿泊施設の手間で、玲奈ちゃんが立ち止まる。
「あたし…どうしようかって困ってて、その時礼治さんが来てくれて、助けてくれて…ほんとすっごく嬉しかったんです」
顔をあげた玲奈ちゃんは、頬を上気させて言い募る。その顔や仕草に自分の中のある部分が揺さぶられていた。
余裕をなくして落ち着きたくて短く息をつく。
「いつでも助けてあげられる訳じゃないからね」
「はい。気をつけます」
お説教なんて柄じゃない。こんなのは女の子の気をひきたくてオッサンのすることだ。
軽く落ち込む。
助けたことは間違ってなかった。放っておいたら、スタイリストさんやら本田ちゃんが助けただろう。それは結輝だったかもしれない。
ちくりと胸に痛みが走る。いい歳したオッサンが悩むたぐいのことじゃない。ましてや若くて容姿が優れている結輝と比べることもない。
「あたしもっと注意しなくちゃいけないけど、礼治さんが来てくれて嬉しかった」
言い切ると玲奈ちゃんは、さらに顔を赤くして建物へ走って行ってしまった。
嬉しかった。その一言で自分のしたことは無駄じゃなかった。結輝だったらもっと上手く格好良かったかもしれないけれど、比べることはできない。
何となく気持ちの整理をつけたくて、煙草に火をつける。ぶらぶら歩き出しながら頭をかすめる映像や声をどうしたらいいのか持て余していた。
煙草を一本だけ吸って、吸い殻を携帯灰皿に捩込んだ。玲奈ちゃんに風が当たらないように、半歩前を行くとどうしても煙草の煙りを浴びせることになってしまう。名残惜しいけれど宿泊施設までは禁煙だ。
追いかけて来られないのを確認して、肩から手を離した。
「玲奈ちゃん隙、ありすぎでしょ」
俯きながら歩いていた玲奈ちゃんが、はっとしてこちらを見た。
「あの…よくあるんです。声とか掛けられるの。ほんっと子供から、おじーちゃんまで」
ばつが悪そうに指がせわしく動く。髪をすいてみたり、指に巻きつけたり、その落ち着きのなさは二人きりでいることかもしれなくて、また黙り込む。
「玲奈ちゃんだけで帰したのは悪かったけど、すごいモテっぷりだったね」
ほんの数分目を離した隙にナンパされるなんて、有り得ない。
「ああいうの良くあって、友達と待ち合わせで駅に行ったりすると、なかなか待ち合わせ場所につけなかったりするんです。あと切符の買い方聞かれたりとか」
そういう子なんだろう。見るからに善良そうで、困っていたら助けてくれそうな雰囲気を出してる。
「気をつけなくちゃダメだ。これからは今までみたいにいかなくなる。写真集が出ることで、みんなが玲奈ちゃんを知ることになる。みんなが玲奈ちゃんの振る舞いを見るようになる」
「…気をつけます。マネージャーにも言われるんです。でも…自覚がなさすぎでした」
ホテルと言うには安っぽくて民宿よりは規模の大きい宿泊施設の手間で、玲奈ちゃんが立ち止まる。
「あたし…どうしようかって困ってて、その時礼治さんが来てくれて、助けてくれて…ほんとすっごく嬉しかったんです」
顔をあげた玲奈ちゃんは、頬を上気させて言い募る。その顔や仕草に自分の中のある部分が揺さぶられていた。
余裕をなくして落ち着きたくて短く息をつく。
「いつでも助けてあげられる訳じゃないからね」
「はい。気をつけます」
お説教なんて柄じゃない。こんなのは女の子の気をひきたくてオッサンのすることだ。
軽く落ち込む。
助けたことは間違ってなかった。放っておいたら、スタイリストさんやら本田ちゃんが助けただろう。それは結輝だったかもしれない。
ちくりと胸に痛みが走る。いい歳したオッサンが悩むたぐいのことじゃない。ましてや若くて容姿が優れている結輝と比べることもない。
「あたしもっと注意しなくちゃいけないけど、礼治さんが来てくれて嬉しかった」
言い切ると玲奈ちゃんは、さらに顔を赤くして建物へ走って行ってしまった。
嬉しかった。その一言で自分のしたことは無駄じゃなかった。結輝だったらもっと上手く格好良かったかもしれないけれど、比べることはできない。
何となく気持ちの整理をつけたくて、煙草に火をつける。ぶらぶら歩き出しながら頭をかすめる映像や声をどうしたらいいのか持て余していた。