料理男子。 | ふんわりシフォン

料理男子。

たまに。

というか、無性にカレーが食べたくなったりする。

がしがし米をといで、炊飯器のスイッチを入れる。

玉ねぎ、にんじん、ジャガイモを刻んで、玉ねぎから炒めていく。隠し味に使うニンニクもこの時におろして入れる。

肉はバラ肉でもいいし、切り落としでもいい。



「あれ~もう海斗がキッチンにいる」

ぱたぱたと軽いスリッパの音がして、妹の未也が帰ってきた。

「遅い。寄り道したろ。なんで部活してる俺より遅い訳?」

「だってさードーナツいこーって遥香が言うんだもん」

荷物を下ろした未也が、キッチンに入ってくる。

「んー今日はカレー?」

鍋で飴色玉ねぎを作っている俺の手元を覗く。

「そう。食べられないなら、軽く盛るから」

ニカッと笑った未也は、

「口直しに食べる!新作ドーナツがさー酷かったんだ。アーモンドドーナツ、史上最悪。マズイって思ったの初めて!」

「てか食えるの?」

「もち。この味のままなんて我慢できない」

冷蔵庫から、パックジュースをグラスに注いで部屋に上がっていく。

「未也、風呂な」

「はーい」

という返事はパタンと閉じられたドアの向こうからだった。

追いかけて行って、本当に風呂掃除する気あるのとまでは聞かない。これは我が家の暗黙の了解だからだ。
母親の帰宅が遅い我が家での手伝いルール。どちらかが料理したら、もう一人は風呂掃除。




玉ねぎをがしがし炒めて飴色になったら他の野菜も軽く炒める。そのあと水を入れて煮込む。夏ならトマトを崩して入れてもいい。煮込み時間が勿体なくて、いつも簡単なサラダを作り、包丁を研ぐ。

ボウルに沈めていた砥石は、仕上げ用の砥石で、粒子がきめ細かい。母方の祖母について行った荒物屋で、料理するならと買って貰ったものだ。

料理上手な祖母は、包丁が切れなくなることを嫌い、自分で研ぐため、一通りレクチャーも受けている。

ふきんを敷いて砥石を置き、研ぎはじめた所に母さんが帰って来た。



「サンキュー海斗。今日はカレー?」

ばさばさと肩を下ろして荷物を大量に落とすと、キッチンを覗きに来た。

「んん~海斗、もしかして油、サラダ油?」

ショートカットの下の眉毛が寄せられる。

「…そうだけど」

「だっダメよ!ダメ料理男子はオリーブオイルじゃなくちゃ!!」

ばたんとガス台下の収納庫からエキストラバージンオイルが出てくる。

しかも1000ミリの大瓶で。

「は?」

あまりのことに、ぽかーんと口が開く。

「MOCOよ!速水もこみち!彼はオリーブオイルキラーなの!」

「で、なんで俺まで?」

「今から仕込めば、第二のMOCOも狙えるわ!」

言いながら、すたすたリビングに移動した母はリモコンを掲げて録画再生を始めた。

「ほらっ、この回はMOCOが5日ぶりにオリーブオイルを使った神回よ!仕込み、調理、仕上げの三段活用なんだから」

ふーんと鼻息も荒く母が解説をする。

「別に俺、サラダ油でいいけど」


つーんと母が答える。

「料理も個性なの!向井理みたいなフレンチでもいいわよ。いい油を使うことは大切なんだからね」

「じゃ太白ごま油にして。オリーブオイルは臭いがきついから、和食には合わない」

「贅沢言うなー」



画面ではMOCOが奥様方に大評判だというその手で、材料を仕込んでいた。

鍋ではカレーを煮込んでいて、冷蔵庫にはサラダもある。もう米も炊きあがっていて、あとはカレールーを入れて煮込むだけだ。

そんな ささやかで、うるさい我が家の週末。





おわり



MOCO'S キッチン 一回、健康診断の時に見ました。この前、ネットニュースになっていたのでびっくりw(゚o゚)w
それと前々から温めていたネタで。包丁ネタで。