FULL MOON クリスマスまでに | ふんわりシフォン

FULL MOON クリスマスまでに

朔也が大股で歩く。身長は180に近い長身で、細く見えるけれど締まった体をしているので、人混みでも人目をひく。


潰されそうな人混みはキライ。


なぜなら、あたしの体は黒猫で、人混みに紛れたなら殺人的なヒールやごついソールのブーツをかわしながら走らなければいけなくなるから。



壁際にあったごみ箱から、勢いをつけて塀へと跳び上がる。

目線が高くなって、初めて朔也と視線があった。目が合うなり、嬉しそうににっこり笑うので、あたしの怒りは体に燻る。

「見つけた。勝手に離れるなよ」


手を伸ばして、ひょいと足元をさらう。くるりと反転して抱き抱えると毛並みに指を這わせる。

「はーふかふか。リアルファー」


ねだりもしないのに、喉の下を撫であげようとまでする。


「あんまり触らないでよ」

「あはは。それ無理だろ。気持ちいい」

まったく。猫になってしまっても、人間的な感情はある。

抱きしめられることは嬉しいけれど、あたしは猫で、抱きしめ返すことができない。

この もやもやした もどかしさが、朔也にわかるんだろうか。手をつないだり、見つめあって笑ったり、普通の恋人どうしなら 出来るのに、人間と猫では無理。



「今日は見せたいものが あるんだ」