君にアイスを買ってあげるよ 鍋の季節 12 | ふんわりシフォン

君にアイスを買ってあげるよ 鍋の季節 12

「あたし森田さんが好きなんです。ずっと好きでした。屈託ない笑顔が好きで、誰にでも優しくて」

自分でなくても、告白の場面に居合わせたら、気恥ずかしさが先にたつ。
ましてや、傍観者でしかないじゃないか。

居場所がなく席を立とうとしたら、森田さんに引き止められた。

「きちんと責任とれ、バカ」

「森田さんに向けられた気持ちじゃないですか」

「でも橋田が言わなかったら、沢田は言うことはなかった。俺だって聞くことはなかった」

髪をくしゃりとまぜっ返す。

「あたしのこと嫌いですか…少しは好きでいてくれますか」

「沢田、俺はね、君に恋愛感情は持てないんだよ…妹みたいな…家族みたいなものだから」

沢田さんは、いやいやと身をよじる。

「それなら誰も好きになんてならないで」

「それは無理だ。わかるだろう」


「森田さんはいるの…好きな人」


「気になるだけだ」

歯切れが悪くなる。

「ただ側にいたいと思うだけだ」


「森田さんでも叶わないこと、あるんですね」

「そんなことばかりだろ、生きてくなんて。叶ってばかりなら有り難みがないからな」

やっと森田さんにも沢田さんにも笑みが浮く。

「でも応援しませんよ、あたし」

「自分でどうにかするしかないだろ」

「苦労しそう」

苦笑いとかすかな笑み。二人には気持ちを通わせた後の穏やかさがある。

羨ましく思いながらも、森田さんの思い人は想像できなかった。

森田さんを困らせる事ができる人物。森田さんが振り回されるような人物なんて思いつかない。

わがままなのかマイペースなのか。いつか会ってみたい。