FULL MOON 42 | ふんわりシフォン

FULL MOON 42

バスタブにシャワーを置いて、シャンプーを取り泡立てていく。

毛の濡れた体は、いつもよりも随分小さく見えた。

歩いてばかりで、ひとまわり小さくなった気がしてた。


「大丈夫だから、爪たてんな」


ジーンズに食い込んだ爪が、肌にまで届いてる。


「本能だもの、嫌がることしたバツだから」

あわあわと体を泡が覆っていく。ちいさな羊みたいに体が膨らんだ。顔の黒いサフォーク種の羊。

人間用だからシャンプーが合わないかもしれない。

バスタブからシャワーを取りあげて、ひと声かける。
「流すからな」

「…いや」

「このままじゃダメだろ」

耳を押さえて流すと、ぎゅっと目を閉じた。


何かしてやりたかったんだ。明け星のために。ちっとも喜んでないけど。

自己満足なんだよな…。

俺のできる何かを、してやりたかった。



泡が排水溝に消えていくと、明け星はシャワーから逃れて隅に行くと、体をぶるりと振るわせた。

水の滴る体からいくばくかの雫が飛び散っていく。

「あんまり跳ね散らかすなよ」


「好きでやってるわけじゃないもの」

ひょいとドアノブに手をかけると、軽く体を押し当てて出てしまった。



ぐっしょりと濡れてしまったジーンズのまま、俺も黒猫を追いかけた。