FULL MOON 30 | ふんわりシフォン

FULL MOON 30

いつしか言葉が少なくなっていた。

黒猫は、文句も言わずに俺について来る。
いつもなら、文句が出ておかしくないのに、愚痴ひとつこぼさない。



カチカチと携帯を漁って知る事実に腹をたて、泣くのを堪えた。

同情や憐れみだと思われたくなかった

理解したいし、知りたかった




時折、まぶたの裏の光点がすっと消える。殺処分された瞬間だ。

ぎりぎりと歯がみして、堪える。

地上の者は俺の眷属になる、離れているのに恐怖に震える牛や豚が見える時がある。啜り泣く声や、逃げようとする悲鳴。



体を蝕む疲労だけでなく、精神もかなり追い詰められようとしていた。

楠の木にもたれて休んでいると、木が話しかけてきた。

『モウスグヨ』

『もうすぐ?』

歩いて結界を張っていることについてかと思った。確かにもう少しで囲いこみができそうだった。

囲いこみが出来たら、少なくとも野生生物には感染が及ぶことがなくなる。

『ワタシタチ チカラニ ナル』

まだ若木な楠の木は、繰り返し チカラニナル と伝えてくれる。

『俺の味方は、お前たちだね』

野宿でぎしぎし言う体も、楠の木が癒そうと芳香が強くなる。

『チョウロウ タノンダ ミンナ テツダウ』

仕舞ってある服から香る、芳香…楠の木は防虫剤が出来る。




あっと息を呑んだ。

『封じこんで、無力化できる?』

『ミンナ テツダウ』













『俺はひとりなんかじゃなかった』

不意に携帯が鳴った。着信を伝える明かりがまたたく。

「お前、何処にいんのよ」

バイト先の先輩だった。初めて飲食店のバイトをする俺に、一から指導してくれた先輩だ。

「何があったか知らねぇけど、シフト休むなら言えよ。替わりに俺が入ってやっからさ」

「…はいもう一日、休んだら復帰します」

心配してくれる声。そういえば、家にも連絡してなかった。着信やメールも来ていたのに…

自分のことで、いっぱいで…



あと少しで

歩いた道が繋がる