FULL MOON 14 | ふんわりシフォン

FULL MOON 14

ジョーカーは風を操る技術に長けていた。ほかのものについてもレクチャーできるという。

「君とは系統が違うようだか、さわりなら構わないだろう」

さわり?嘘だ、そんなの。専門用語の羅列で理解できない。

あれに似てる。『トリセツ』専門的すぎて説明を読んでも理解できない。難解なPCのトリセツに携帯から用語を調べたのを思いだす。
目を白黒させていたら、ジョーカーも理解したらしい。

「理論より、実地のほうがいいらしいな」

「……実地でお願いします」





ジョーカーは都内の外れに広大な敷地と屋敷を持っていた。それから執事!初めて見た。ご主人様って言う人も、言われる人も。

ジョーカーは株のトレーダーをしているらしく、思いつくまま数十分の株取引をすませば、あとは自由に過ごしているらしい。

土地や屋敷は先祖から譲りうけた物らしく、なかなかの家柄らしい。





「これがなかなか都合がいいのでね」

言いおいて、庭に迷いこんだ獣を風の刃が刻んでいく。

もちろん、この世の物とは思えない、あんな獣たちだ。

霧散した影に一瞥を与えて、軽く手を払った。刀の露払いのような動作だった。




「礼を持ってあたるのだ」

何気なく、こぼれた言葉のようだったが、軽く言えることではないと解っていた。

隙のない衣装。それは堅苦しく、動きが制限されるだろう。

きちんと仕立てられたスーツは体に添い、わずかな筋肉の動きにつれて、ひだを寄せる。

「礼装は黒だ。弔いにあたる」

闇に紛れる物。闇に対峙する者。黒い服の意味はそれだけではなかった。

命を軽々しく扱う者には、辟易していた。ジョーカーの一言が胸に落ち、自分を支える力をくれた。

カッコつける訳じゃなく、俺にできる礼儀を通す。黒い服を着よう。弔うために。

狩らなければ、誰か犠牲になるとか、自分は真っ先に狙われるだろうとか、理解と認識が結び付かなかったり、行動が追いつかなかったり…気持ちが沿わなかったり…

今までも悩みながら、これからも悩むだろう。




でも、進むしかないのはわかった。誰でもいいわけじゃないのも。




ほんのすこし。

ジョーカーは目を閉じる。風を呼ぶ集中の最中、その行為に隠されている気持ちを信じたい。







心配り、視線の配りかた、腕の上げ下げにすら意思表示がある。

「従えるものに服従させるだけの威厳を持つのだ」






大きく息を吐き、自分をからっぽの状態に持っていく。
すっと腕が礼の形をつくる。水の流れるさまに、似ている。顔の前で重ねた手は、ねじるように、腹の前でするりと重ねられ、両脇へと流れいく。

半歩下がり足を開く。

礼儀を尽くそう。俺の知るかぎりの知恵と力で。




俺に出来ること、出来ないこと全てを知って対応するしかない。

俺が選ばれたのなら、それは意味がある。それを知りたい気持ちはある。知らなくては進めない。

だって俺のことだから。