月が満ちるまで ともしび 9
たくさんのお皿を前にして。
おにぎりでお腹はいっぱいになっていたけれど、そのまま片付けてもらうのも悪くて。
せっかく出してくれたのだから、少しづつ味見をしていく。
しゃきしゃきした、ほうれん草には鰹節がのっていた。
きんぴらは甘辛くて味がしっかりしていた。
里芋の煮付けは、ほくほくして家では食べたことがなかった。
地味な料理ばかりかもしれないけれど、どれもきちんと、ほうれん草ならほうれん草、ごぼうならごぼうの味がした。
味付けに紛れてしまわない野菜の強さ、本当の野菜の味がした。
「ごちそうさま。みんな美味しかったよ」
新しくお茶を煎れてくれながら、みかんとお菓子もすすめてきた。
「風花も精一杯手伝いをしたからね、よかったらつまんで。あたしは、みかんをもらうよ」
そうだ。
ふうか。そんな名前だった。法事の会場でおばあちゃんから離れるのが怖いようで、ずうっと後ろについて歩いていた。
おとなしくて、話さない人形のような子だった。
ぱっちりした目も、あまり表情をださない顔も人形らしかった。
ただ、ここは自分の家だからこの前よりくつろいだ様子でみかんの皮をむいていた。
お腹いっぱいなんだよね…みかん一個も苦しい。
「すごく甘いよ。お店のおじさんが、店で一番甘いのを教えてくれたんだよ」
風花の手の平にのっているのは、こぶりなみかんだった。
「これくらいのほうが甘いみかんなんだって。ちょっと食べる」
ほんの三つくらいの房を僕にくれた。
「ありがとう。一個食べるのはきついなって思ってたんだ」
なんのきなしに口にいれてびっくりした。本当に甘かった。今までで、一番甘いみかんだった。
「すごい!本当に甘いね」
「ね、本当でしょ」
そう言うとにっこり笑った。
…あ、笑った。
それだけで、なんだか嬉しくなった。
風花の笑顔が、僕まで笑顔にしてくれる。
僕は風花に恋をした。
一目惚れでなく…
こういうのは何て言うんだろう。
この日から、僕にとってこの家とおばあちゃんと風花は特別になった。
何があっても変わらない。
そう思える存在。それを僕は手に入れたんだ。
おにぎりでお腹はいっぱいになっていたけれど、そのまま片付けてもらうのも悪くて。
せっかく出してくれたのだから、少しづつ味見をしていく。
しゃきしゃきした、ほうれん草には鰹節がのっていた。
きんぴらは甘辛くて味がしっかりしていた。
里芋の煮付けは、ほくほくして家では食べたことがなかった。
地味な料理ばかりかもしれないけれど、どれもきちんと、ほうれん草ならほうれん草、ごぼうならごぼうの味がした。
味付けに紛れてしまわない野菜の強さ、本当の野菜の味がした。
「ごちそうさま。みんな美味しかったよ」
新しくお茶を煎れてくれながら、みかんとお菓子もすすめてきた。
「風花も精一杯手伝いをしたからね、よかったらつまんで。あたしは、みかんをもらうよ」
そうだ。
ふうか。そんな名前だった。法事の会場でおばあちゃんから離れるのが怖いようで、ずうっと後ろについて歩いていた。
おとなしくて、話さない人形のような子だった。
ぱっちりした目も、あまり表情をださない顔も人形らしかった。
ただ、ここは自分の家だからこの前よりくつろいだ様子でみかんの皮をむいていた。
お腹いっぱいなんだよね…みかん一個も苦しい。
「すごく甘いよ。お店のおじさんが、店で一番甘いのを教えてくれたんだよ」
風花の手の平にのっているのは、こぶりなみかんだった。
「これくらいのほうが甘いみかんなんだって。ちょっと食べる」
ほんの三つくらいの房を僕にくれた。
「ありがとう。一個食べるのはきついなって思ってたんだ」
なんのきなしに口にいれてびっくりした。本当に甘かった。今までで、一番甘いみかんだった。
「すごい!本当に甘いね」
「ね、本当でしょ」
そう言うとにっこり笑った。
…あ、笑った。
それだけで、なんだか嬉しくなった。
風花の笑顔が、僕まで笑顔にしてくれる。
僕は風花に恋をした。
一目惚れでなく…
こういうのは何て言うんだろう。
この日から、僕にとってこの家とおばあちゃんと風花は特別になった。
何があっても変わらない。
そう思える存在。それを僕は手に入れたんだ。