月が満ちるまで 存在 3
また戸口が開いて、彼女が覗いた。
「呼びつけるようで申し訳ないけど、部屋に上がってくださいね」
にっこりと笑顔で言われる。
「そんなことないです、いきなりお邪魔してすみません」
庇は黒々とした影を落とす。一瞬暗くなり、ちいさな驚きと目が慣れるまでの僅かな間がある。
ひやりとした空気を感じる。
いやな感じではなく、古い家のもつ気候にあう佇まいからのものだった。
庇の長い家は涼しい。涼しい空気をたくさん抱えている。
「君が生徒さんかい?よろしくね」
目の前に現れたのは、長身な男性だった。長めの髪がくしゃっとしている。
眼鏡の奥の目が笑っている、優しげな人だった。
おじいちゃんを考えていたので、拍子抜けするけれど若い人のほうが現状に合う指導をしてくれそうだ。
「はじめまして。橘風花と言います。わたし絵が好きで、美術関係の仕事に付きたいんです」
へぇっという感じに眉があがる。
「あのさ人間は二種類だ。造る人間と、消費する人間だ。君はどっちなんだい」
「造るほうがいいです」
眼鏡の奥の目が楽しくて仕方ないというように笑う。
「なんっかさ久々に見たかな、いーね学生サン」
大きな手の平が差し出される。温かい手の平はギュッと力強く握られる。
「俺にまかせな。デッサンなんて枚数さ」
「呼びつけるようで申し訳ないけど、部屋に上がってくださいね」
にっこりと笑顔で言われる。
「そんなことないです、いきなりお邪魔してすみません」
庇は黒々とした影を落とす。一瞬暗くなり、ちいさな驚きと目が慣れるまでの僅かな間がある。
ひやりとした空気を感じる。
いやな感じではなく、古い家のもつ気候にあう佇まいからのものだった。
庇の長い家は涼しい。涼しい空気をたくさん抱えている。
「君が生徒さんかい?よろしくね」
目の前に現れたのは、長身な男性だった。長めの髪がくしゃっとしている。
眼鏡の奥の目が笑っている、優しげな人だった。
おじいちゃんを考えていたので、拍子抜けするけれど若い人のほうが現状に合う指導をしてくれそうだ。
「はじめまして。橘風花と言います。わたし絵が好きで、美術関係の仕事に付きたいんです」
へぇっという感じに眉があがる。
「あのさ人間は二種類だ。造る人間と、消費する人間だ。君はどっちなんだい」
「造るほうがいいです」
眼鏡の奥の目が楽しくて仕方ないというように笑う。
「なんっかさ久々に見たかな、いーね学生サン」
大きな手の平が差し出される。温かい手の平はギュッと力強く握られる。
「俺にまかせな。デッサンなんて枚数さ」