月が満ちるまで ハイ・タッチ 2 | ふんわりシフォン

月が満ちるまで ハイ・タッチ 2

教室のざわめきから離れて歩いていく。

すれ違う人達は楽しそうに歩いていく。

部活を決めた。

ほかにやりたい部活なんてなかったから、俺にはバスケしかなかった。



走るのもバスケのためだ。
試合で気力を奪われないように体力を上げておく。

気持ちだけでも、技術だけでも、体力だけでもいけなくて。



シュートの決まる一瞬のために走っている。



簡単に着替えてから体育館へ向かう。急ぐのは嫌な予感があったからだ。

鉄扉を引き開けると、コートに先輩がいた。

腕を組んで怒っている。

「遅えぞ、先輩を待たすなよ」

「ちわっス。これから用意します」

来てた。

無駄に時間を使わずに来たのに先輩のほうが早いのは、制服のままだからだ。

俺は着替えたから時間がかかる。

ちらりとTシャツを見られる。


「やっと分かったようだな」

黒い無地のTシャツだ。いまどき探すのも大変だ。仕方なくユニクロで買った。
今まで着ていたNIKEやCONVERSを着ることは部活の規則から外れるそうだ。

バカらしいと思う。

バスケをするのは俺でTシャツじゃない。もちろん、それを着たらプロ並に上手くなるなら着てみたい。

見た目から入るのはアリだ。憧れは目標になって力に変わっていく。

憧れの選手のモデルシューズだって持ってる。
お年玉を貯めて、自分で買った。俺の宝物だ。

ただ、きちんとした理由もなく、頭ごなしに言われ従うのは納得できなかった。
たかだか数ヶ月生まれるのが早いだけなのに。

心にもやもやが溜まっていく。