月が満ちるまで 感謝の気持ち 8 | ふんわりシフォン

月が満ちるまで 感謝の気持ち 8

「いやだ、そんなこと言わないで」

ふと漏れた冥土という言葉に、背中の冷える思いがする。

「うんと長生きしてもらうんだから。働くようになったら旅行に行こう。一緒に美味しいものを食べようよ」

湯呑みを大切な物のように両手で包みこんで、おばあちゃんは優しい優しい顔をした。

目尻に寄るしわも、口元によるしわも

年月を重ねた古木のような風格があって

きれいだと思った。



「お金は自分に使いなさい。それから、まだしっかり学びなさい。勉強だけのことではなく、いま友達と過ごす時間を大切にね」

視線を上げた先には、額がある。

小学校の一年で初めて貰った賞状。校内の写生会で貰った一枚。

額の列は部屋の入り口正面から始まって部屋をくるりと半周していた。

「やりたい事をやんなさい。風花の両親ともに、とても自由だったから。風花もそれでいいんだから。

進学しなさいよ。婆は難しいことは分からない。

ただ風花の絵は凄く好きでね……」

そう言って笑った。