言葉を口にすると同時に、立方体に亀裂が走り砕け散った。代わりにそこにあったのは一振りの剣だった。迷い無くその柄を握り、構える。不思議と手に馴染んだ。だがーーーーー
「大層な前振りかと思えば…クハハハハッ!何だその剣はぁ?」
「…………」
剣ーーフルンティングと呼ばれたその剣は、なんと折れていたのだ。まるで何者かがへし折ったかのように根元から。
「アーティファクトと聞いた時は驚いたが…とんだ失敗作のようだなぁ?」
男が挑発的に嘲笑う。
「確かに失敗作なのかもしれない。けれど、この剣は僕の気持ちに呼応するかのように現れた。……どうにかしてみせるさ」
フルンティングを構える。
「おいおい、まさかその剣で戦うつもりかぁ?やめた方がいいぜ。そんな剣、いや、失敗作じゃあ相手になんねぇよ」
「…なら、来てみなよ」
男を睨みつける。
正直な話、戦える確証なんてありはしない。でも不思議と不安は感じなかった。
「ハッ、来いという割には随分と余裕がなさそうに見えるけど…なっ!」
男が一気に間合いを詰める。
速い……!
「くっ…!」
剣の鍔でなんとか剣撃を受け止める。手が痺れたが、剣は手放さない。
「そうやって受け止めるのも、いつまで保つかなっ!?」
スピードを殺さず、連続で斬りつけてくる。
「ぐっ……く、うおぉぉぉぉっ!」
全身全霊で押し返し、どうにか距離をとる。だが、そこであることに気付いた。
「……血が、止まっている…?」
先ほど刺されたハズの傷口の出血が止まっていたのだ。見ると何やら傷口の様子がおかしい。治ったわけではなく、糸のようなものが傷を縫い合わせていたのだ。
「何だ…これは?」
「なにボーッとしてんだぁ!?」
しまった…!
気付いた時には遅かった。どうにかして防御しようとしたが間に合わず、左腕をバッサリと斬られていた。
「ぐあぁぁぁぁっ!!」
「ハッハァッ!惚けているからだよノロマがぁ!」
痛みに顔をしかめながらも剣を構える。
が、次の瞬間に驚くべき光景を目にした。
「なっ……!?」
斬られた傷を縫合するかのように血が糸のように動き、さらに地面の血溜まりからフルンティングのに血が集まり、折れた剣先を補ったのだ。
「…なるほどな。目醒めちまったてことかよ。……くそったれが」
「何を…言っているんだ?」
「興ざめってことだよ。…もう興味が失せたっつーことだ」
男が懐から一枚のカードを出した。瞬間、辺りに霧が充満しだした。
「くっ…なんだ、これは!?」
「大人しく殺られていればよいものを…次はねぇぜ?」
男の声が聞こえたかと思うと、急に霧が晴れ、そこに男はもういなかった。
「助かった…のか?」
力が抜け、膝から崩れ落ちる。
ヤバいな…安心したら、力が……。
ゆっくりと仰向けになり、目を閉じる。
何かが始まった。そんな気がした。