~妖怪の山~
「あー…やべぇな。完っ全に迷ってるわ、これ」
鬱蒼とした森を独り彷徨う青年がいた。腰に刀を下げ、決して森を歩くような格好には見えない、独特の出で立ち青年、月館 渚は面倒くさそうにボヤいた。
「歩けど歩けど、木々ばかり……どうなってんだこの森は?」
何かイヤな気配もするし、とっとと抜けたいんだがなぁ…。
などと思っていると、
急に辺りの空気が淀み始めた。
「……うわ、マジかよ…」
肌に絡みつくような気持ちの悪い空気だ。
「おや、こんなところにヒトの子が。これは珍しい。久々に良き贄に巡りおうたわい」
不意に前方の草むらから声が聞こえてきた。
「やっぱ妖怪かよ…」
暗がりで良くは見えないが、それでも声の主がヒトではないことが容易に分かった。
「ほぅ…ヒトの子のくせに生意気な口を聞きおるのぅ」
「黙れよモブ風情が。頭が高ぇぞ」
腰の刀に手を掛け、一気に走り出す!
剣戟は一回。勝敗は瞬く間に決まった。
「ぐぬぬぬ…我がヒトの子に後れを取るなど、誠に屈辱n」
「うるせぇぞ」
妖怪を縛る縄を思い切り引っ張る。
「ぬぉぉぉぁっ!?締めるでない!締めるでない!!」
「なら、幾つか質問させてくれ。いいな?」
「むぅ………」
「よっこいしょ」
「ぐぁぁぁぉっ!?分かった!分かったから締めるな!!」
「なら宜しい」
しゃがみ込み、妖怪と目線を合わせる。
「まず一つ目な。俺の他に人間を見なかったか?」
「人間はお主しか見とらんぞ」
「そっか…じゃ、二つ目だ。この近くに神社はあるか?」
「そもそもの神社の数が少ないんじゃがの…ここから近いのは守矢神社だのぅ」
「守矢神社?それはどこにあるんだ?」
「縄を解いたら、案内してやらんこともないが?」
ぐっ…こいつ…腹立つな…!
ニヤニヤとこっちを見る妖怪。
「……わかったよ!縄を解くから案内してくれ」
縛っていた縄を解く。
刹那、
「フハハハハ!!騙されおったな、ヒトの子よ!!」
あっという間に飛び去って行ってしまった。
「………まぁ、なんとなく分かっていたけどさ」
あのまま絞めあげときゃ良かったかな?
後悔すでに遅し。である。
「ふむ…しかし困ったな」
守矢神社に行けばなんとかできるだろうが、如何せん肝心の道案内役がいないのだ。
「はぁ……どうやって行けばいいんだよ…」
「あやや。お困りのようですね?」
「あ?誰d「パシャっ」うおぁっ!?」
急に視界が光で覆われ、思わず仰け反ってしまう。
「あはっ、中々いいアングルで撮れましたねー」
「つぅ~……何だってんだ一体…」
徐々に回復してきた目で、涙目ながらも声の主を探す。が、どこにも見当たらない。
「上ですよー上ー」
「上?」
言われたとおりに見上げると、翼を生やした女の子がこちらを見下ろしていた。
「…誰だお前?」
「名前を尋ねる時はまず自分から、じゃないですかねー?」
「……月館 渚だ」
「渚さんですねー把握しました♪」
懐からメモ帳を取り出しそこに何やら書き込みだす少女。
「で?お前は?」
「私は射命丸 文。しがない新聞記者です♪」
そう翼の少女は告げた。
