『嬢』で週一休みで働いていた頃

ドクター○松さんのパーティーに

誘われた。

その頃仲の良かったH美に(前述、女子

のめんどくささに出演(笑))話すと

「行きたい、行きたい!!だって

芸能人もゲストで来るんでしょ!?

お願い!連れてってよ!」ってことで

H美と新幹線に乗り東京の○松さん

宅にお邪魔した。

ゲストは『不倫は文化』という

靴下を履かない方だった。

H美は大興奮しながら写真を

撮りまくっていた。

立食でいろんな方と話をした。

それからもう一度だけパーティーに

行った。


それからというものずっとH美が

「ねえ、香港に旅行に行こうよ!」と

かなりしつこく言ってきた。

私はその頃かなり仕事が忙しく

『嬢』として稼げるうちに

稼いでおこうと思っていた。

何度断ってもしつこく誘ってくる

H美に

「1人で行ってきてよ。H美ちゃんは

なんだかんだ言っても旦那さんから

毎月お金入れてもらえるけど私は

シングルマザーで子供3人もいて

無理だよ」と言うと

「だって杏ちゃんと一緒の写真が

ないと旦那に怪しまれるじゃん」

H美は結婚して子供が二人いた。

「私だって香港は興味ないしそのため

に大金使いたくないよ」と言っても

「お願い」「お願い」

ばかりでちょうど公休日が重なる日取り

で休みを取って行くことにした。

本当に渋々と。


行きの飛行機の中でH美が

「実は……あのパーティーの時に

知り合った香港の人とつきあってる」

と、言った。

は~!? いつの間に!?

じゃ、一人で来た方が良かったじゃん!

わざわざ私を写真とるだけのダシに

して、行きたくもない旅行にお金使って

店も休んでバカみたいじゃん!!

利用されただけじゃん!!

もう、行きから腹が立ってきた。

「あのさ、そんなことなら私、店に

出てた方が良かったよ」

「ごめんね~。黙ってて」

黙ってることが問題じゃない!

こうやって香港に行くお金を用意

できる友達がいなかっただけでしょ!

本当に利用だね!

「でも、香港着いたら私、邪魔でしょ

!?」

「ううん、別に全然! 3人でいれば

いいじゃん」

いい大人がわざわざ海外から来て

3人なんか邪魔以外の何でもない。

空港につくとその男が迎えに来て

いた。

日本語学校の先生で当たり前だが

日本語ペラペラで助かった。

とりあえずそこは気を取り直して

「よろしく」とお互い挨拶をした。

後ろに怪しげな男が立っていた。

「僕たちはここで失礼するから

彼に観光を案内してもらうといいよ。

夕方、彼に言ってある居酒屋でまた

改めて食事しよう」

「この人金持ちなんだって」

と、H美が私に耳打ちをした。

そんなことどうでもいい!!

そんなこと全然聞いてないし

初めて会う人と言葉も

通じないのにどうしろと!?

私は諦めてヤツの車に乗った。

大きなベンツだった。

ヤツは何を話すわけでもなく

ひたすら車を走らせてカジノ場に

私を連れて行った。

観光なんて別に期待してはいなかった

が、まさかカジノなんて……

ヤツは大金を出してはいつも

カードをめくる役をしては

笑っていた。

日本語もカタコトの英語さえ

通じない……

私はトイレに行こうとしたときに

日本語を話しているグループを

見つけた。

そして

「すみません。ここはどこですか?」

と聞いてみた。

明らかにおかしなヤツだろう。

「えっ!? ここは中国だよ。マカオ

だよ」と教えてくれた。

えっ!? 中国!? マカオ!?

こんなところまで来てしまったんだ。

トイレに入ると便座は壊れていて

汚くてしかも監視されていて

上から監視員に覗かれる。

ヤツのところに戻るとヤツは私に

身振り手振りでお前もプレイしろ

と言う。

私は体を使って稼いだ金をこんな事に

しかもこんな気分で使うことなんて

まっぴら御免だ。

早く夕方になってH美たちと

落ち合って私はもう帰ると言おうと

思っていた。

H美の彼氏から渡された携帯が

あったのでそれから電話をしてみた。

ツー、ツー、と全く通じない。

と、いうか使えない。

自分の携帯からもかけてみるが

全く携帯自体反応しない。

夕方って何時なの!?

私はヤツに腕時計を指さし

飲んだり食べたりするジェスチャー

をしたが全く知らん顔を

している。

さすがに怖くなりさっきの

日本人のグループに事情を話して

助けを求めようとしたが

もう帰ってしまって居なかった。

どうしようと思っていたらヤツが

立ち上がり車に乗ったので

少し安心した。

そして着いたのが小汚ない居酒屋。

本当にここなんだろうか!?

そう思いながらまわりを見回して

いるとみんながニヤニヤと

笑っている。

異様な雰囲気の中、いきなり

みぞおちに一発食らった。

頭も後ろから殴られた。

その場にしゃがみこむと

押し倒され、ろうとのようなものを

口に差し込まれそこから原液の酒を

流しこまれ意識が薄くなっていった。

なぜかその時どうしていいのかわからず

英語がペラペラの同級生のKに

電話をした。

外国でこうなったらどうしたら

いいのか少しでも知恵が欲しかった。

するとKは

「友達と行ったんでしょ!?知らんわ

。私も今、友達といるから」

プツン…

切られてしまった。

こんな時に……

ダメだ! このままじゃ殺される!

私は体中の力を振り絞って

起き上がり入り口の硝子戸めがけて

突っ込んだ。

不幸中の幸い硝子戸の桟がなかった

ので頭から足の先までガラスの

破片だらけだったが

まず走った!

逃げなきゃ! 逃げなきゃ!

タクシーが人を降ろすところに

出くわした!!

チャンスだ!

すぐにタクシーの運転手は私を

乗せてくれ

「ヘルプミー! ヘルプミー!」と

震えながら叫ぶ私を警察に連れて行っ

てくれるのかと思ったら

すごく立派なホテルで私を降ろした。

お金はとりあえずホテルの中に入れと

手招きした。

バッグも何もかも置いてきてしまった

からだ。

ホテルに入り

「助けてくださいー!助けてくださ

いー!」と叫んだ。

でも誰も言葉が通じないと

焦っていると

「どうしましたか?」と男性ホテル

マンが言った。

日本語が通じた!!

その人はたまたま奥さんが日本人で

日本語が話せるホテルマンだという。

その安堵感から私は大声で

泣き出してしまった。

体中ガラスだらけの状態。

ただ事ではないとわかってくれた。

始まりから全部事情を話すと

ホテルマンは警察を呼んでくれた。

すると警察が来る前にヤツが私の

バッグを持って跡をつけてきていた。

ホテルマンに「あいつです」と

言うとフロントの中に私を入れて

かくまってくれた。

すぐに警察がきてホテルマンが

中国語で警察に説明すると

ヤツはすぐに手錠を掛けられた。

ほっとする間もなくヤツは自分の

カバンから札束を取りだし警察に

渡すと一瞬で手錠は外された!

さすがワイロの国、中国!!

なんて感心してる場合じゃない!

泣きながらホテルマンに

「どうしたらいいんでしょう?」

「日本とは違ってやはりここはこういう

国ですからね。でもお客様である

以上僕らがお守りします。部屋の

周りは警備員を置きます。そして

今の時間では規則で国境を超えること

ができません。明日の朝、船場まで

チケットを買ってお送りします」と

言ってくれた。

そしてスイートルームしか空いていない

ということでそこに案内された。

もう高くても何でも安全ならどこでも

よかった。

何で行きたくもない所に来てまで

こんな事に巻き込まれなきゃ

いけないの……!?

そしてホテルの部屋からH美と一緒に

泊まる部屋に何度も電話をした。

何度も何度も……

リダイヤル。リダイヤル。

やっと朝方電話が通じた。

事情を話す。

「ウソでしょ!? ウソでしょ!?」

何で嘘つかなきゃいけない!?

「だったら私たちと一緒に居れば

良かったじゃん。金持ちって言って

着いてった杏ちゃんが悪いんでしょ!」

早く日本に帰りたい……

もう誰とも何も話したくなくなった。

眠らずに朝がきて昨日のホテルマン

がホテルの車で香港行きの船場まで

乗せてくれチケットを買ってくれた。

ホテルと貴方へと多めのチップを

渡した。

「ありがとうございました。本当に

助かりました」と無事船に乗ること

ができた。

香港に着きタクシーでH美と一緒の

ホテルに着いた。

私は泣いて話をしたがH美は

「いつまで泣いてんの? 飲茶行く

けど行かないの?」

もう何を話してもダメだ。

行かないと言うと

「あっそ、飲茶、飲茶」

と言いながら部屋を出た。

自分が旅行に誘ってこんなことに

なってごめんということも言わず

男にボケたただのメス豚だ。


結局この旅行で失ったものは

多額の旅行代と

薄っぺらな友情だけだった。

Kにしろ、ネズミ講で家に来て土下座

までして何十万もの石鹸や『がんも治

る』と健康食品を売り付けて金の匂い

がすればほいほい着いていき所詮そい

つが困ったところで助けるどころか

「知らんわ」のひとこと。

でも『がんも治る』はイカンだろ?

もう、あんたとはこっちも関わり

たくないよ。

マルチ人生長いね。

ある社長さんも、あんたから電話が

あると必ず何か売り付けられるから

迷惑だって。

H美も3件のサロンのオーナーだった

のに、今はパート勤めだね。

人の悪口ばっかり言って(女子のめんど

くささに出演(笑))男も逃げるんだよ。



無駄に店を休み、無駄な旅行代を

使い、恐い思いをして、入るはずの

日給がパーになっただけだ。


こうやって友人とは呼べないが

お金で友達も失った。

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