つづき。。。


自分と私の問題をすべて二女に丸投げし

2時間以上スピーカーで聞いていて

私が何度も

「長女に変わって」と言って

あれだけ罵詈雑言を吐かれて

おちょくられても

電話に変わらなかった長女に対し

もう私が守り許す最後の余地はなくなった。

二女に吐かれた言葉が頭の中を

巡り巡って

今まで辛くても『嬢』でいた意味を

振り返った。

母子家庭だからと何ひとつ不自由させない

こと……

娘たちが好きな晴れ着で成人式を迎えられる

こと……

金銭的に困った時には助けてあげられること

……
家を買っていつでも帰れる実家をつくって

あげること……

私が死んでも資産を残してあげられること

……


何だったんだろう……!?

大げさかも知れないが腹をくくって稼ぐため

22年間現役で『嬢』で居続けたわけ……

わからない……

もう気がへんになりそうだ……

消えてしまいたい……

車を走らせた東のホテルで

考えないでおこうと思ってここまで

来たのに……

頭から離れない……

この世から居なくなってしまいたい……

Mちゃんに電話した。

Mちゃんは真剣に話を聞きながら

泣いてくれた……。

私なんかのために……。

私も泣いていた……。



そうだ。

まだやらなければいけないことがある。

Mちゃんとの電話を切り

私は自分名義の長女が持っている携帯を

止めた。

すぐにラインがきた。

『携帯止められたら困るんですけど、仕事

も行けないし』

次の日私名義の長女の住む部屋に乗り込んだ



「ここ、私名義の部屋だからね。今すぐ

出てって!」

突然の訪問と私の言葉に長女は驚き

たくさんの金が入った封筒を渡して

「すぐにここを出ていけと言うのは

これで勘弁してください。」

今月もお金がなく返済できないと言って

おきながらこんなに現金持ってるんじゃん

と、私はそれを見てさらに自分の糸が

切れた……。

「ふざけんな!頼りになる二女さんに

何とかしてもらえよ!もう、今までの

借金もチャラでいいからお前とはもう

親でも子でもないっ!」

あれだけ憎い長女なのだからいくら二女や

三女が頼んでも元旦那は助けることなど

絶対にないとわかっていても私は言った。

「じゃ、何で生んだの?堕ろせばよかった

じゃん!」

勝ち誇ったように言った。

長女の切り札はいつもこれだった。

今まではそう言われると困り果てて

機嫌を取るしかなかったが

今回は違う。

私が開き直った。

「うん、ごめんね。生んじゃって。

堕ろせばよかったね。本当に申し訳ない。

生んだこと謝るわ。」

仮面のように冷たく私が言うと

初めて長女が泣いた。

「さあ、もう借金もチャラでいいし、出てっ

て。犬も連れてって。早くしないと私名義

の部屋なんだから不法侵入で警察呼ぶよ。」

冷たく言い放つ。

「ごめんなさい。どこも行くとこないんで

す。本当に許して。お母さん。」

「いやいや、お母さんでも何でもないか

ら。あれだけしっかりした二女さんに

お願いすれば何とかなるんじゃないの?

それにこの部屋を解約する権利は私に

あるしね~。今すぐにでも。」

と、私は笑って見せた。

そして110番した。

「今、帰ったら知らない人が家にいて

怖いんです。すぐ来てください。住所は

……」

横から長女が

「違いますー!娘なんですー!」

と、叫んだ。

すぐに電話を切った。

若い警官が二人来てすぐに親子であることは

ばれてしまったが

「ここは私名義の部屋。私がいつ解約しよう

と私の勝手。」と言い張った。

若い警官は二人して

「可愛そうに。こんなに若くて可愛い娘

さんを急に追い出しても危ないでしょ!?」

若くて可愛い? それが何の関係が?

男子ならいいのか?

『若くて』『可愛い』方の味方か。

警官は『若くて』『可愛い』『娘さん』の

肩を抱いていた。

所詮警官も男か。


そして私のカバンから膠原病の薬が見えた。

「それ何の薬ですか?見せてください。」

「嫌です。医者から処方されて飲んでる

薬です。もし見せて覚醒剤とかじゃなかっ

たらどう責任取ってもらえるんですか?」

長女が

「精神科からもらってる薬です。」

と、口を挟んだ。

二女が言い続けた罵詈雑言を結局謝ることも

なく。

もう、いい……。

それから警官にもずっとキチガイよわばり

され、警官と長女が別室で何か相談して

いる。

電話もいろいろかけているようだった。

別室から長女が出てきて開口一番

「今日、出てくので50万ください。」

は? 借金チャラにしてまだ金を請求する

のか?

「お巡りさん、100万もの借金チャラに

して、これって私が払わなきゃいけないん

ですか?」

と、あまりに不思議で聞いてみた。

「そりゃ、こんなに『若くて』『可愛い』

『娘さん』を急に追い出すんだから

何かと物入りでしょ?」

はあっ! 呆れるわ! マジか!?

「わかった。じゃ50万すぐに用意するから

すぐに出てって!コンビニ行っておろして

来るから。」

「すぐには無理です。夜まで時間をくださ

い」

「じゃ金額減らすよ?」と言うと

「……。1時間だけ、お願いします……。」

「お母さん、ここはお母さんも妥協して

あげないと。」警官の言葉に

「妥協? 借金チャラにして、50万払う

のに? ふざけんなっ! お前ら子供も

居ないんだろ? だからこんなおかしな

条件こっちが聞いてやるって言っても妥協

だとか訳わかんないこと言えるんだろが!」

コンビニに走りまた警官とやりとりしている

うちに1時間くらい過ぎた。

誰かが迎えに来たようだった。

服や靴などケースに入れ運び出した。

全部出し終えて

「お世話になりました……。」

私は50万を部屋中に撒き散らした。

長女はそれを隅から隅までベッド裏や

犬のゲージの裏まで手を突っ込んで

拾い上げる。

警官は

「そんな、撒き散らしたら危ないですよ。

これで怪我でもしたら傷害罪で逮捕します」

アホか!? どうやってお札で怪我するんだ

!?

どうしても、私をキチガイにしたいんだね。

出て行こうとする長女に

「一筆書いて。」と言うと

ためらいもなく自分のノートとペンを

取りだしスラスラと書いた。

ここで

「お母さん、やっぱりこんなん書けない。

ごめんなさい。」

と、いう言葉があれば私も

翌月の解約日まで住ませるつもりでいた。

スラスラと書いて部屋のキーを渡して

出て行った。

写真のように……。

娘たちとの決別はこれで終了したが

私名義の部屋の退去費用、荷物の処分費用、

そして、携帯の端末代金は毎月私のカード

払いから引き落とされている。

片身にあげたカルティエのネックレスも

売っただろう。

何とも後味の悪い。





最近は自分が子供を産んだことすら

思い出さないようになった。