オバマ大統領と共和党のベイナー下院議長が早期に合意に至らなければ、年明けから始まる減税の失効と歳出削減により、米経済はリセッション(景気後退)に陥る恐れがある。
約6000億ドルに上る急激な財政引き締めを回避すべくホワイトハウスと上下両院は意見の相違を乗り越え、解決策を見いだすとみられていた。
過去数週間、オバマ大統領とベイナー議長は妥協点を探るために協議を重ね、先週の初めには合意が近いとの期待が高まった。しかしベイナー議長は協議を中断。背景には増税に強硬に反対する草の根保守運動「茶会党」(ティーパーティー)系議員からの圧力があったとみられている。
同議長は20日、年収100万ドル超の世帯への増税を認める代替案(プランB)の下院での可決を目指したが、共和党内で十分な支持を得られず採決を断念した。
オバマ大統領と議会の協議は今後どこへ向うのか。考えられるシナリオは以下の通り。
<オバマ大統領の「小型版財政の崖」>
包括的な合意が困難であれば 限定的な合意を目指すというもの。
ホワイトハウスが21日に発表した声明の中でオバマ大統領は、財政の崖の部分的な解決に向け早急に妥協点を見いだすよう米議会関係者に促し、失業保険の給付延長と98%の国民に対する増税阻止を求めた。また、早期合意により今後の歳出削減への基盤が形成されるとの見方を示した。
大統領は、増税の対象について具体的には言及しなかった。先の大統領選では年収25万ドルを超える世帯を対象とした増税を訴えていたが、ベイナー議長との最近の協議でこの基準を年収40万ドルに引き上げた。一方、ベイナー議長は年収100万ドルを超える世帯への増税を提案したが、党内の反対により下院での採決を断念した。
大統領は21日の声明で、法定債務上限の引き上げに言及しなかった。連邦債務は2カ月後にも現行上限の16兆4000億ドルに達するとみられている。
議会が2月半ばまでに債務上限の引き上げを承認しなければ、財務省は借り入れが不可能になり、米国はデフォルト(債務不履行)のリスクに直面することになる。
大統領は、来年どの程度の規模の歳出削減を求めるかについても詳細に触れなかった。また、これまで要求していたインフラ支出の拡大や社会保障費削減方法の模索にも言及していない。
問題点:多くの共和党議員は、大規模な長期的歳出削減なしではいかなる増税にも強く反発する見通し。ただ、下院民主党が数十人の共和党議員と手を組むことで限定的な崖回避案を可決できる可能性もある。
<オバマ大統領とベイナー議長が水面下で協議再開>
オバマ大統領が12月31日までに成し遂げられることに対する期待を引き下げたことで、歳出削減に向けた主要な対策について、年末までに水面下で交渉を行う動機はほとんど残っていない可能性がある。
しかしベイナー議長がオバマ大統領に同意すれば、両者は主要な長期的合意に一歩近づく可能性もある。
新たな1兆ドルの課税と1兆ドルの長期歳出削減で譲歩することは、議会共和・民主党双方にとって生易しいことではない。
ベイナー議長は増税について共和党議員を説得する必要がある一方、オバマ大統領は民主党議員に対し、社会保障年金のほか、メディケア(高齢者向け公的医療保険)や低所得者向け公的医療保険(メディケイド)などの一部の社会保障プログラムの削減を支持するよう訴える必要がある。
下院共和党による譲歩の方がより困難と見られている。
<株式市場からのメッセージ>
年末に株式指数が大幅低下すれば、議論をやめて迅速で有意義な合意の成立へとワシントンの政治家を動かす大きなメッセージとなるだろう。
同じようなことは2008年9月に実際に起きている。バーナンキ連邦準備理事会(FRB)議長やポールソン財務長官(当時)が、大規模な金融救済策が実現しない場合は経済が大混乱に陥ると警告したにもかかわらず、議会は否決した。ダウ工業株平均は700ドル超急落し、議会は直ちに方向転換、わずか数日後に7000億ドルの不良資産救済プログラム(TARP)を承認した。
「財政の崖」はこれほど劇的な状況とはならない可能性があるものの、増税や歳出の削減で景気が大きな打撃をこうむる恐れもある。
<一時的に崖から飛び降りる>
1月1日にほぼすべての米国民の所得税が引き上げられる。その後、1月第1週中に、議会は所得税の是正と1090億ドルの自動歳出削減の発動阻止に向け、迅速に合意する。
今年12月に合意できなかったことが、なぜ来年1月なら合意できるのか。
これは、一旦税金が引き上げられれば、低中所得者向けを撤回する一方で、富裕層向けの部分を維持するなど、一部だけを維持することが容易になるからだ。
こうしたシナリオの下では、税率は自動的に引き上げられるため、どの議員も特定の納税者区分に対する増税に対し投票せずに済む。唯一採決されるのは、大部分の米国民の税率を2012年水準に戻すことのみとなる。
<冬を通して対決継続>
仮に議会が国の債務上限を引き上げない場合、財務省は来年2月半ばまでに借り入れ能力を使い果たすとみられる。
共和党側は、歳出と税の伸び抑制や、社会保障やメディケアとメディケイドの追加削減を望んでおり、こうした財政問題の解決策実現へのてことして、債務上限の引き上げ承認を控えてきた。
この戦略は、2011年半ばの前回の債務上限問題で使われた。その際、上限は16兆4000億ドルに引き上げられた。共和党側は、新たな借り入れ権限の見返りに歳出削減を民主党から引き出したが、政治的な代償も払った。議会対立による不透明感で世界の金融市場が動揺し、格付け会社1社は米国政府の信用格付けを引き下げ、共和党の支持率は低下した。
<財政の坂>
このシナリオの下では株価は急落せず、ワシントンでは、「財政の崖」はそもそもそれほど悪いものではなかったとの考えが広まる。
議会とホワイトハウスとの間では2013年を通して、さらに2014年に入ってからも、税制改革、長期歳出削減策をめぐり、いがみ合いが続く可能性がある。
*写真を差し替えて再送します。
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