フェンダー「カスタムショップ'62」「アメビン'62」「昔のジャパン」の違い
同じ「1962年モデル」のストラトキャスターやテレキャスターでも、価格帯によって中身は全くの別物です。
今回は、究極の最高峰である「カスタムショップ(CS)」、USAレギュラーラインの最高峰「アメリカンヴィンテージ(アメビン)」、そして「昔の安いフェンダージャパン(廉価グレード)」の3つを比較し、材質・塗装・電装系にどのような差があるのかを徹底解説します!
1. ヘッド・ネック(木材と仕上げの違い)
弾き心地に直結するネック周り。触った瞬間の馴染み方やロゴの扱いに明確な差が出ますが、まずは1962年モデルを語る上で欠かせない「指板の歴史とスラブ貼り」について見ていきましょう。
💡 【深掘り解説】ヴィンテージファン憧れの「スラブ貼り」とは?
① なぜローズウッド指板が生まれたのか?
1954年のストラトキャスター発売当初は、明るく歯切れの良いトーンを持つメイプル指板(黄色い指板)が主流でした。しかし、弾き込むうちに塗装が剥がれて黒ずみや手垢汚れが目立ってしまうという悩みがありました。そこで1959年、汚れが目立ちにくく見た目にも高級感のあるローズウッド指板(ダークな木材)が採用されることになります。
② 「スラブ貼り」と「ラウンド貼り」の構造の違い
ローズウッド指板が導入された1959年中頃〜1962年中頃までのごくわずかな期間だけ作られていた貼り方を「スラブボード(スラブ貼り)」と呼びます。
- スラブ貼り(1959〜1962年): メイプルネックとローズウッドの接地面が真っ平ら(平行)に貼られています。指板の表面はカーブしているため、そのぶんローズウッドが極厚になります。
- ラウンド貼り(1962年後半〜現行): ネックのカーブに合わせて薄いローズウッドを均一に曲面で貼る、現在の主流スタイルです。
③ なぜスラブネックは特別なのか?(サウンドの秘密)
スラブ貼りはローズウッドの木材の割合が多いため、「太く、甘く、コシと粘りのあるヴィンテージトーン」が色濃く出ます。今回比較する「1962年モデル」は、まさにこの貴重なスラブ貼りの黄金期を再現しているため、ギタリストの間で絶大な人気を誇っています。
🎸 昔の安いフェンダージャパン
ロゴシールの「上から」厚めのクリア塗装(ポリウレタン)が吹かれています。ロゴが剥がれる心配がなく、傷や湿気にも強い頑丈さがありますが、手汗をかくと少し滑りが悪く感じることも。ネックは誰にでも握りやすい無難な太さです。
🎸 アメリカンヴィンテージ'62 (USA)
当時の仕様を忠実に再現し、薄いニトロセルロース・ラッカー塗装の「一番上」にロゴシールが貼られています(剥がれやすいのが本物の証)。スラブ貼りのローズウッドとラッカー塗装が相まって、長年弾き込むことで自然なエイジド感と甘いトーンが楽しめます。
🎸 カスタムショップ'62 (CS)
最高等級の厳選された木材(反りにくい柾目ネックや色濃く目の詰まった極上ローズウッド等)を使用。スラブ貼りの深い鳴りに加え、職人の手で指板の角を丁寧に落とした「ロールド・エッジ処理」により、新品でありながら長年愛用したヴィンテージのような極上の握り心地を実現しています。
2. ボディ(木材のグレードと生鳴り)
生音の響き、アンプを通す前の楽器そのもののポテンシャルに決定的な差が出ます。
🎸 昔の安いフェンダージャパン
コストを抑えるため「バスウッド」という木材がよく使われています。軽くて素直な音がしますが、厚いポリ塗装に覆われているため、ボディの鳴りが少し抑え込まれたような「カチッとした」生音になります。
🎸 アメリカンヴィンテージ'62 (USA)
王道の「アルダー」材を使用。中音域にコシがあり、極薄のラッカー塗装のおかげでボディ全体がよく振動します。生音でもお腹にビンビン響き、フェンダーらしい骨太なサウンドが楽しめます。
🎸 カスタムショップ'62 (CS)
数ある木材の中から、さらに「軽量でよく鳴る極上のアルダー」だけを厳選。極薄のラッカー塗装(あえて傷をつけるレリック加工モデルも人気)により、木材の振動ロスが一切ありません。コードを鳴らした瞬間の「ボディ全体が共鳴するような爆鳴り」は、他のグレードでは味わえない領域です。
3. ピックアップ(心臓部のサウンド・表現力)
アンプから出る音の「色気」と「ピッキングのニュアンス」に圧倒的な違いがあります。
🎸 昔の安いフェンダージャパン
コスト重視の「セラミック・マグネット」等が使われています。パワーがあり歪ませやすい反面、音が少し平面的で、優しく弾いても強く弾いても同じようなトーンになりがちです。
🎸 アメリカンヴィンテージ'62 (USA)
USA製の「アメリカンヴィンテージ'62・シングルコイル」を搭載。ガラスのように透き通った高音と色気のあるミッドレンジが特徴で、プレイヤーの細かな強弱にしっかりついてくる上質なサウンドです。
🎸 カスタムショップ'62 (CS)
熟練の職人が手作業でコイルを巻いた「ハンドワウンド・ピックアップ」などを搭載。倍音(音の豊かさ)が圧倒的で、弱く弾けば甘く囁き、強く弾けば荒々しく吠えるような、プレイヤーの感情をそのままアンプに伝える「恐ろしいほどの表現力」を持っています。
まとめ:それぞれの魅力と選び方
フェンダージャパンは「気兼ねなくガンガン使える頑丈な相棒」、アメリカンヴィンテージは「王道のヴィンテージ・サウンドを味わえる本格派」です。
そしてカスタムショップは、「一生モノとして極上の音とプレイアビリティを求める人」のための究極のギター。価格も跳ね上がりますが、スラブ指板ならではの芳醇な響きと手に吸い付くようなグリップ感を一度体感してしまうと、もう他のギターには戻れなくなる魔力を持っています。ぜひ楽器屋さんで見かけたら、恐れずに試奏してみてください!
| 比較ポイント | 昔のジャパン(廉価) | アメリカンヴィンテージ'62 | カスタムショップ'62 |
|---|---|---|---|
| ヘッド・ネック | 厚いポリ塗装 ロゴは塗装の下 |
極薄ラッカー塗装(スラブ貼り) ロゴは塗装の上 |
最高級木材+極薄ラッカー(スラブ貼り) 極上の握り心地(エッジ処理) |
| ボディ | バスウッド 厚いポリ塗装 |
アルダー 極薄ラッカー |
厳選された最上級・軽量アルダー 極薄ラッカー(爆鳴り) |
| ピックアップ | セラミック等 平面的でパワー重視 |
USA製アルニコ ヴィンテージの空気感 |
CS製ハンドワウンド等 圧倒的な倍音と表現力 |