君のいない迷路 135 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

しっかりしろ俺!

自分に喝を入れて席に戻った

 

「萌ちゃん、悪いんだけど

 急用が出来たから

 帰らないといけないんだ」

 

「そうなんですか?」

 

それは大変だという顔で

帰り支度を始める

 

良い子なんだよな ・・・

騙してる後ろめたさは有るけど

ややこしい話になれば

傷付けてしまいかねない

 

「ああ、友人からヘルプの電話で

 財布を落としたらしくて

 東京駅で立ち往生してるんだ」

 

「それは大変ですね ・・・

 すぐに行ってあげてください」

 

「ああ、ありがとう」

 

「お兄様、今日は楽しかったです

 ありがとうございました

 あの、代金をお支払いします」

 

「今日の夕食は入学祝だと思って

 だから、代金は必要ないよ」

 

「ありがとうございます

 でも、先日のお礼で私が

 ご馳走しようと思っていたのですが ・・・」

 

「じゃあ、その気持ちだけ頂くから

 そうだ ・・・ 今日みたいに

 会社の前で待つのは止めてね

 人の目が有るから」

 

「ごめんなさい

 お兄様に会う方法が思い浮かばなくて

 連絡先を教えて頂けますか?」

 

そう来たか ・・・

此処で断れるか?

 

そう思った時電話が鳴った

 

「はい」

 

「おばさんから

 電話を掛けてくれと言われたので

 電話してる

 内容は聞いてない」

 

グッドタイミングだよ

何が何だか分からない池田は

ちょっと不機嫌な声だけど

 

「池田、財布見つかった?

 駅前の交番に行った?」

 

「財布落としたことになってるの?

 でもさ、今携帯あれば

 何とでもなるけどなぁ ・・・

 財布の中に切符が入ってたことにするか ・・・」

 

何とか話を合わせようとするけど

そこまで構ってられない ・・・

(確かに今の携帯はほぼ財布と同じ)

 

「携帯の充電が切れそうなの?

 充電器持ってる?」

 

池田の返事は聞かない

 

『お客様、タクシーが参りました』

店のスタッフが呼びに来てくれた

 

「今から行くから

 八重洲口前の交番に居て」

 

捲し立てて電話を切った

 

「そそっかしいんだから

 出張で来てるんだけど

 どっかで財布を落としたらしい

 中に切符が入ってて帰れないようだ」

 

スラスラと嘘が出てくる

自分でもちょっと怖いな

 

「それはお困りですね

 お兄様、すぐに行ってあげてください」

 

「交番の前なら困らないだろうから

 萌ちゃんをタクシーに乗せて

 それから向かうよ」

 

「私は大丈夫です

 お兄様こそ急いでください」

 

席を立って出口の方に向かって歩き出す

 

「本来なら送るんだけれど ・・・

 申し訳ない」

 

タクシー代くらいは持ってるかな?

お金を渡すのは躊躇われた

 

さっきの池田ではないけど

携帯で事足りるご時世

そこは慌ててたので

気が回らなかった体でいく

 

店を出てすぐにタクシーに乗る様に告げると

少し躊躇ったけど

そのまま乗車してくれた

 

「連絡先は母から聞くよ

 タクシー代は持ってる?」

 

「はい、持ってます

 お兄様、ご馳走様でした

 とても楽しい時間でした

 おばさまに連絡先を伝えます

 次の機会を楽しみにしています

 ありがとうございました

 お気をつけて」

 

罪悪感は有るけど

此処を切りぬければ

なんとかなる 

 

「俺も楽しい時間を過ごせたよ

 ありがとう

 運転手さんお願いします」

 

それだけ伝えて

ドアから離れた

 

彼女は笑顔で手を振ると

小さく一礼した後

タクシーは動き出した

 

 

は~ ・・・ 

なんとか切り抜けた ・・・

 

 

そのまま駅まで行くと

また携帯が鳴った

 

「財布を落とした池田で~す

 申し訳ないが

 八重洲口の交番には行けません!」

 

ああ ・・・ 此奴が一番厄介かも

 

 

 

 

<続きます>