取り敢えず打ち破ろうか 194 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

一年で最も寒いと言われる季節

山の中にある大野本家の屋敷の周りには

うっすらと雪が積もっていた

(ここ数年は暖冬の影響で雪が少ないらしい)

 

張り詰めたようなひんやりとした空気の朝

布団から起きだすのが憚られるほど寒い 

 

「サク、起きてる?」

 

隣の布団から翔兄の声

 

「ふあ~ ・・・ 今起きた ・・・

 しかし寒いなぁ ・・・」

 

欠伸交じりで答えると

同じように欠伸をして

 

「確かに寒い ・・・

 布団から抜け出せないな ・・・

 確か ・・・ エアコンのリモコンが ・・・」

 

亀のように布団から腕だけ出して

手でリモコンを探した

 

その気持ちわからないでもない(笑)

 

「あった ・・・ 」

 

直ぐに探し当てたからか

嬉しそうな声で叫んだ

 

「今、何時かな?」

 

声に出しながら携帯を見ると午前9時前

 

「翔兄、もうすぐ9時だよ ・・・」

 

「え? ・・・ そんな寝てた」

 

 

昨日、本家に着いたのが0時過ぎ

そこからお風呂に入って

就寝したのが2時前だったとしても

流石に寝すぎだ ・・・

 

翔兄まで慌てた声を出す

 

「寝すぎだな ・・・

 起きて着替えないと」

 

二人同時に布団から抜け出し着替えを済ませた時

 

「おはようございます

 起きていらっしゃいますか?」

 

廊下から家令さんの声が聴こえた

絶妙なタイミング

多分、俺たちが起きたのが分かったんだと思う

 

「おはようございます

 起きてます」

 

翔兄が慌てて答える

 

「左様でございますか

 朝食の用意が出来ております

 どうぞ、客間にお越しください

 急ぐ必要はございませんよ」

 

襖を開けることなく

優しい声で答えてくれた

 

「直ぐに参ります」

 

返事をした後

そのまま部屋を出た

 

大野本家の屋敷はかなり広い

(俺の実家よりも広いと思う)

純和風の屋敷

廊下から雪化粧をした庭の中で

寒椿の花が咲いているのが見えた

 

「画伯はここで育ったんだ」

 

「庭の木に登って

 家令さんをヒヤヒヤさせてたらしいよ

 結構なやんちゃ坊主だったって」

 

「意外だ ・・・ 大人しい人かと思ってた」

 

「んな訳ない(笑)

 俺よりもやんちゃだったと思う」

 

「怖いものがないからかもしれないね

 俺も翔兄も臆病なところがあるからさ」

 

「それは認める」

 

長い廊下を歩いて

長と御前、見極める者しか入れない離れ

その手前にある客間の襖を開けると

御前がお茶を飲みながら待っていてくれた

 

「おはようございます」

 

「おはよう ぐっすり眠れたかね」

 

「はい、ぐっすり眠れました」

 

御前が勧める席に座ると

直ぐに朝食の膳が運ばれてきた

(超高級旅館の朝食を彷彿とさせる)

 

「頂きます」

 

「山奥の田舎料理

 お口に合うか分からぬが

 どうぞ召し上がれ」

 

湯気の立つお味噌汁と

炊き立てのご飯

それだけでもご馳走なのに

山の幸に海の幸が膳に並ぶ

 

「食べながら聞いておくれ

 本家を出るのは今日の夕方

 明日の未明 ・・・

 予定では午前3時くらいに里に入る

 本家の人間は姿を見られないようにするのが常

 明るくなる前に邸に入りたいのでな」

 

「長のいる屋敷ですか?」

 

「いや、里には本家の邸が有る

 長の座する離れと蒼穹殿のの近くにあり

 暁殿にも入れるよう廊下で繋がっている

 本家の為の控室もあるから

 誰かに会う事はない」

 

そこまで秘密を守ることで

蒼穹国帝の末裔を守り通してきたんだ ・・・

 

「俺たちが滞在してても

 里の方々には知られないって事ですね」

 

俺が一番危惧していたこと

父はまだ耀の当主だから 

 

「心配はいらないよ

 二人は本家に連なる物として

 里入りするのだから

 それから、君のお父上が

 陽の一族の名代として出席される」

 

「やっぱり、サクの親父さんに

 白羽の矢が立ったか ・・・

 蒼穹の一族はこれで

 陽の一族と対等になるんだから

 その場に立ち会いたくはないよな」

 

「そう考えるのが妥当だな

 頭を下げたくはない

 そして未だ自分たちが上だと言いたいのだろう」

 

「下げるのは耀の一族の分家あがりの当主」

 

「本家が考えそうなことだな」

 

翔兄が吐き捨てるように言った 

 

「俺はそう思わないかな」

 

「なんで?」

 

「父は橘の流れを汲む一族の代表として

 蒼穹国に謝罪に行くつもりなんだと思う

 それが当主として最後のお勤めなんだ」

 

俺の傍にいる翔様が

『私もそう思う』と呟いた

 

「お父上は一角のお方だ

 そのようにお考えなのかも知れないな

 私はね、こう思うんですよ

 千年前の悲劇を

 今こそ塗り替える時だと思います

 皇子と翔様の想いを成就させるべきだと」

 

「御前、俺もその考えに賛成です

 サクもサクの中の翔様も

 それを願っていいと思う」

 

御前の許しの言葉に

翔様が泣いているような気がした

俺まで胸が熱くなってくる

 

「ありがとうございます

 翔様も喜んでおいでです」

 

「良かったな ・・・

 もしかしたら

 里の美術館採用されるかもしれないぞ」

 

「そう上手くは行かないよ(笑)」

 

面接の知らせが来ただけで

俺は満足なんだ

職員になれなくても

別の方法で携わりたい

そんな風に思ったら

気が楽になった

 

「分かりませんよ」

 

御前まで笑みを浮かべて頷いた

 

 

マジで?

それはないよな ・・・

 

本家と里は繋がりがないはず

あまり期待しないことにする

 

 

 

 

 

 

 

<続きます>

 

 

 

 

 名を取り戻すことが重要であって