取り敢えず打ち破ろうか 136(サクちゃん編) | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

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大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

俺達の時代と違い

元日はのんびりと過ごすのが常

掃除すらしてはいけないことになっている

商店も全て閉まっていて

唯一、開いていたのは湯屋

湯殿はじめと言われ

鎌倉時代以降、武家の儀式

それが庶民にも広がったようだ

以前は二日だったが元旦から入れるようになった

(俺達もそれに倣い湯屋に行った)

 

商人は元旦からお得意様への挨拶回りをするらしいが

上毛屋は大旦那がその役目をしているので

(ほとんどが挨拶を受けるほうだけど)

上ちゃんは若智屋に戻って

初詣から戻ったら、のんびりゴロゴロしていた

(さとち君がいるから寝てられなかったけど)

 

事始めの二日はそこら中のお店が

初売りと称して店を開ける

上毛屋も若智屋もかなり忙しかったようで

俺達もお手伝いをさせてもらった

(上毛屋は無理だった)

 

二日目の夜は七福神の絵を枕の下に置き

(もちろん若ちゃん作)

「良い初夢を」と言って寝た

ただ ・・・ 悲しいかな

夢を見たのか見なかったのか ・・・

全く覚えていない

 

それを若ちゃんに話したら

「よほど疲れていたんだな」

と笑っていた

 

あの絵 ・・・ 持ち帰っても良いかな ・・・

 

 

3日目は蒼灯さんの工房で

器の最終チェックをして

若智屋に戻ったのは昼過ぎ

若ちゃんがお八つを用意して待っていてくれた

 

「お帰りなさい

 餅ばかりでは飽きるでしょうから

 お饅頭を作りましたよ」

 

「わ~い わかちゃんのおやつ

 おいちいよね~」

 

さとち君が嬉しそうに叫んで

若ちゃんの膝の上に座る

 

・・・ さとち君の様子が ・・・

ちょっと気になるんだよな ・・・

 

「さとし殿、皿の絵付けは無事に終わりましたか?」

 

隣に座る上ちゃんに聞かれ

大福を頬張りながら何度も頷いて

 

「5まいそろうと

 おはなになるの

 しるしはつけたの

 ふたりのはいつするの?」

 

「近いうちに行ってきます

 私たち二人で拵えたものです

 さとし殿宛に贈りますから

 楽しみにしててくださいね」

 

若ちゃんの絵と二人の器は

タイムカプセルに乗って

俺達の時代にやってくる

それまでは秘密らしい

 

「お二人は出来ましたか?」

 

「ええ、私は湯呑を二つ

 絵が描けないので字にしました」

 

「それは良い

 出来上がりが楽しみだな」

 

完成したものは戻らないと見れない ・・・

 

「サク殿と雑貨屋殿が拵えた器

 きっと名品だと言われますよ

 もちろん、さとし殿のもだよ」

 

二人が戻った先の事を話すたびに

少しだけ寂しくなる ・・・

さとち君はそれが寂しいんだ

ずっと笑顔でいるけど

寂しそうな表情が見え隠れする

それに気が付いているから

若ちゃんはずっと

さとち君を抱きしめてる

誰よりも感受性が高い子だから 

心配させないように

我慢してるんだろうな 

 

その隣にいる上ちゃんも

かなり情緒不安定かも 

 

 

「さとし殿、食べ終わったら

 上毛屋に行きませんか?

 じいじ二人が待ってますよ」

 

翁は昨日の夜から上毛屋にいる

初釜の打ち合わせで人が来るからだ

 

『若い者に任せたら

 泣きついてきよった

 ほんとに何時になったら

 隠居出来るのか』と

嬉しそうに(笑)零しながら

上毛屋に向かった

 

「わかちゃん、いっちぇもいい?」

 

「いいよ 夕餉にはお戻りくださいね」

 

「うん、じぇったいね」

 

ニコニコ笑って

上ちゃんに膝の上に移動した

 

お八つも食べ終わり

二人は上毛屋に

若ちゃんは店表に戻って行った

(今日までは店に出るらしい)

 

 

部屋に残された俺と雑貨屋

 

「雑貨屋さん ・・・

 明日帰るのかと思うと

 寂しいですね」

 

「ああ、これだけ長くいると

 ここが俺の住む場所かと思ってしまう」

 

雑貨屋さんはこの時代にも

豆屋さんが居る

(本人は蒼灯さんだと思い込んでるけど)

ある意味、彼のいる場所が住む世界

この時代に残されても

上手くやっていくんじゃないかと思えてきた

 

「この時代に来て

 現代人の思い上がりに反省した」

 

「ああ、確かに

 俺も前に来た時、反省した

 現代人が一番優れてると思ってたから

 確かに不便ではあるけど

 頭を使い工夫しながら

 自分たちに便利な方法を見つける

 俺たちにそれが出来るかと問われたら」

 

「出来ないよね(笑)

 全ての事が便利にはなったけれど

 考えることをやめた部分も多い」

 

指で押すだけで

大概の物が出来る時代だ

それが悪いとは思っていない

その恩恵を受けてる身だ

 

「それに楽しそうですよね

 井戸端会議を目にしたりすると

 助け合って生きてる」

 

「それが一番大きいか ・・・

 今は人とのつながりが希薄だから ・・・」

 

「そうだね ・・・

 俺ね、豆屋さんに出会って

 人生が変わったんだ」

 

「人生が変わった?」

 

意外だ ・・・ 何事にも執着がない人だと思ってたけど ・・・

 

「ああ、俺は風に身を任せてる様な ・・・

 風来坊的な(笑)

 それこそ、あまり人への執着もなくて

 知り合いは多いけれど

 友人と呼べるかも怪しくて ・・・」

 

「悩み事を相談できる人がいなかった」

 

「うん、その通り ・・・

 もしかしてサクちゃんも?」

 

「うん、俺もあの人に出会わなければ

 無機質な人間だったと思う」

 

「長さんだね

 あの人も芯の強い人だね

 画伯に似てる」

 

画伯と一緒に来たんだった

 

「豆屋さんに出会ってから

 俺を心配してくれる人が

 わんさか出て来て ・・・

 それが煩わしくなくて

 むしろ心地よくて ・・・

 こんなこと話すのは初めてだけど ・・・

 ずっと、どこか孤独で ・・・

 居場所を探して ・・・ やっと ・・・ 」

 

彼はずっと蒼灯さんを探して

迷子になるんだ ・・・

俺と同じで傍にいる人を見つけられた

 

「居場所が見つかったんだ」

 

そう聞くと

彼は照れくさそうに笑って頷いた

 

「帰るのは寂しいけど

 又会えると思ってる ・・・

 ちびちゃんも心の中では分かってるんだ

 でも、寂しいんだよね

 明日は俺たちが抱っこして

 あの橋を渡ろう」

 

「そうだね

 又会えると信じて」

 

 

掴みどころがない人だとばかり思ってたけど

誰よりも周りが見えてるのかも

 

笑顔で帰ろう!

再会を約束して

 

 

 

 

 

 

<続きます>

 

昨日の私からのお願いに

沢山の方がメッセージ、コメントで

教えてくださいました

本当に感謝の言葉につきます

 

探していたお話は見つかりました

2018年のお誕生日企画で

「不器用な女神の奮闘」と

もう一つの部屋の

「妖精さとち豪華列車に乗る」

で書いたお話でした

皆様のお陰で

見つけ出すことが出来ました

ありがとうございます

 

 

yayosato