Be with you 171 | 瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

瑠璃色の地球(ほし)の青宝玉

大野君に魅せられ、重症サトシックのおばさんです。
年甲斐もなく智愛叫んでます。
お名前をお借りして腐小説を書いています。
ご理解いただける方のみお入り下さい。

男性の方のご入室はご遠慮下さい。

ドキドキというよりワクワクのほうが大きい

それはきっと、絵の前に立つのが祖母だからだ

もし自分の番だったら ・・・

そんな余裕はないと思う

 

仕事道具と着替えをスーツケースに詰め込み

出かける前に貴方にラインをする

 

『今から祖母の家に向かいます

 明日、祖母が絵と対面するので』

 

送信して直ぐに電話が鳴った

 

「翔さん、いよいよですね」

 

貴方の嬉しそうな声が

俺の耳を満たしていく

 

「祖母も漸く色々なことに

 整理がついたんだと思う」

 

二人の父に、悟くんに会って

心の中に溜まってた澱や蟠りが

すべて浄化されたのだと思う

今の祖母は祖父(画伯)に甘える

少女なのだ

 

二人の祖父が目を細めて

嬉しそうに笑ってるような気がする

 

「お祖母ちゃんが

 背負ったものは大きかったから

 祖父ちゃんたちも喜んでると思います」

 

「俺もそう思う」

 

迷いの中に居た頃の祖母は

無意識に眼差しと言葉に棘を混ぜて

智くんを傷つけていた

情けないことに

その事に全く気がついていなかった俺

 

二人の父に会ってからの祖母は

憑き物が落ちたように

迷いから解放され

棘のない柔らかい笑顔、眼差しに戻った

 

今になってあの頃の貴方の笑顔が

どこか寂しそうだったことに気がついた

O国への留学を相談しなかったのも

それが影響してたような気がする

 

もしかして ・・・ 貴方は ・・・

貴方の絵に会ってる?

一人で考え一人で決めた ・・・

 

「智くん ・・・」

 

「なんですか?」

 

「自分が絵の前に立つわけじゃないから

 あまりドキドキしてないんだ

 どっちかというとワクワクが勝ってる」

 

「翔さんの気持ちわかります

 師匠の絵を見た時はそうでした 

 僕には僕の、翔さんには翔さんの ・・・

 画伯祖父ちゃんからの言伝が

 あるんだと思います

 明日はお祖母ちゃんの番です ・・・」

 

やっぱりそうだ ・・・

貴方は既に絵に会ってる

 

『絵の前に立つのは一度ではない』

人生の岐路の数だけ絵の前に立つ

自分と向き合うのだから ・・・

その時はやっぱり一人

俺もそうだと思う ・・・

 

だから ・・・ 気が付かないでいる ・・・

 

「祖母の次は母 ・・・そして俺

 今のところ、眼の前のことで精一杯で

 絵の前に立つ資格はないかな ・・・」

 

何者でもない自分 ・・・

この先、重要な転換期があるのだろう

それまでは ・・・ 絵の前に立つ日を想像して

 

「画伯祖父ちゃんは資格とか ・・・

 そんなの望んでないです

 絵を見て、そこから見えたものがあれば ・・・

 それで良いんだと思います

 翔さんの絵でもあるから

 ゆっくり話してきてください」

 

「そうか ・・・ 構える必要はないんだな」

 

「はい、僕は毎日

 肇さんの絵と話します(笑)」

 

「ますます楽しみになってきた

 あれ?仕事は?」

 

いつもなら、まだ仕事をしてるはず

 

「皆が手伝ってくれたから

 今日の作業は終わりました

 翔さん、やっぱり暫く

 商店街には来ないほうが良いです」

 

「何かあった?」

 

「帰る時、亀ちゃんのフアンの人が

 お店の前に居て

 写真を撮っていかれました

 多分、映画公開後はもっと増えるはずです

 なので、それを伝えようと思って」

 

「凄い反響だね ・・・」

 

テレビの力を舐めてた ・・・

 

「亀ちゃんのフアンって聞いて

 すごく嬉しくなりました

 でも、亀ちゃんのことは話さないと

 商店街の人達で取り決めたみたいです」

 

「業務に支障が出るからかな?」

 

「古着屋さんからの提案なので

 そうだと思います ・・・

 亀ちゃんが話す日が来たら

 解禁なんだと思いますが」

 

「上田にも釘を刺しておく」

 

「そうしてください

 来たら揉みくちゃにされますよ」

 

俺の判断は間違っていなかった

貴方をエキストラに出してたら

それは、それは ・・・ 大変なことに ・・・

考えるとゾッとする ・・・

 

師匠、それにも気がついてたのかな

だから海外に ・・・考えすぎかな?

いや、考えがあってこそだ ・・・

 

映画公開後

すぐに向こうに行くのも

師匠の判断

 

やっぱり俺たちの兄貴

肇さんなんだな ・・・

 

「出かける前に長電話をしてすみません

 気をつけて行ってきてください」

 

「ありがとう

 また電話するね」

 

「はい、じゃあ」

 

「行ってくるね」

 

「いってらっしゃい」

 

その言葉が胸の中にジ~ンと染み渡っていく

 

 

この先も二人で

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」

「ただいま」

「おかえりなさい」

を交わしたい ・・・ それが俺の願い

 

 

 

 

 

<続きます>